第24話

[黒川礼奈視点]


 優しい表情で羽美を見送る柏田君の手のひらに、自分の手のひらを重ねた。





 ――もう、それ以上、羽美を見ないで。




 とか。


 羽美に助けてもらったのに最低っ。




 

 でも、気持ちは止められなくて――。

 




 もう片方の手を柏田君の肩へ添えて、背伸びをした――。




「んっ……!」



 

 はぁ。





 ――無理矢理キスとかクズすぎるのに。


 ぎゅーっと抱きついたまま。






 好き。






 好き。






 好き。






 あたしは柏田君が好き……。






 彼に、伝わりますように。




 


 そう思いながら――ただ、触れ続けた。

 





 ◇






 ――次の日だった。


 島田君と羽美が手を繋いで登校して来たのは。


 もしかしたら、昨日の柏田君とのキスを見られていたのかもしれない……。




 あたしは、羽美から……。




 学校中が島田君と羽美のことで騒然となる中、柏田君は興味が無さそうだった。


 でも、それは柏田君が自分の気持ちに鈍感だっただけで。

 

 だから、あたしはそれを利用した。


 ずっと、ずっと、ずっと。






 羽美が――島田君との結婚式の前日、事故に遭って亡くなるまでずっと。


 

 



 利用した。





 ◇





 ねぇ、羽美?


 あたしは時々、思うの。


 アレは事故じゃなくて――。




 本当は――。





 ◇



 次話から最終章に入ります。

 最後までお付き合いいただけますと幸いです。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る