第5話
プルプルする手でQRコードを読み取る。
ラインを交換しながら、俺は――この黒川さんの連絡先を知りたくて知りたくて、沢山の野郎共が違う意味で震えているんだろうな……と思う。
うん。
これは細心の注意を払わなければ。
俺ごとぎがあの黒川さんの連絡先を知っていることがバレたら村八分か死。
何という二択。
つらみ。
「えへへ。柏田君とライン交換しちゃった」
俺の混沌化する内心をよそに、隣では両手でスマホを握りしめながら、嬉しそうに笑う黒川さん。
でも、俺なんかの連絡先で、こんなにも喜んで貰えるのなら、まー村八分くらいなら受け入れていいのかもしれない。
元々、友人も少ない……というか、幼馴染の五郎ちゃんと、くっ、癪だが……コアラ女しかいないからな。
ぐすん。
いいんだー。
友達は数じゃない。
それに俺には
という訳で――。
「あのね……」
「ん?」
「えっと……柏田君、まだ時間はある?」
まー、すぐにでも家族の顔が見たいという気持ちしかないが、時間が有るか無いかと尋ねられたら有るんだよなー。
俺氏の夏休みのタイムスケジュールは、基本、バイトか勉強か家族しかないからな。
えっ、でも、なに。
ちょっと待てよ。
意外と俺って……毎日が充実してんじゃね?
しかない、とか言ってごめんなさい。
と、よく分からない自己完結をしていると、
「ごめん……き、急だったよね……」
はっ、やっべ。
黒川さんを軽く放置してしまっていた。
「はぁ……」
さらさらの金髪を耳へと掛けながら、目線を斜め下へ向けて、黒川さんが深いため息を吐く。
うわー。
すげー、しょぼんとしてても美人って絵になるだなー、とぼんやり思っていると、
「ふ、深い意味はないからね?もし……もしね、柏田君に時間があるなら、お茶でもどうかなーって思っただけだから……」
おいおい。
ウソ……だろ……。
あの黒川さんが俺ごときに気を遣って、もし良かったら家へ上がってお茶でも飲んで行きなよベイビーちゃん達、という花◯君ムーブをかましてくれているのか?
なんか、もっそー嬉しいんだが。
「時間、無限にあるから」
「えっ?」
そして――この時の俺は、安直に、ただ友達が三人に増えた、くらいにしか思っていなかった。
だから、黒川さんとあんなことになるなんて――思いもしなかった。
◇◇◇
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