第2話 002 第一話01


 

 鉅鹿きょろく郡に三人の兄弟が居た。長角ちょうかく張宝ちょうほう張梁ちょうりょうと言う。



 この張角は元は官吏試験にこそ落ちるも、所謂一つの秀才であった。


 張角は山に入り、薬草を取り暮らしてた所、偶然一人の老人と出会う。

 老人はあかざの杖を突き張角を洞穴に喚び寄せ三巻の書を手に取り、


「これは太平要術書たいへいようじゅつしょと言うものだ。これをお前に授けよう」


 と言う。


「これをもって世と人々を救え。でも悪い事に使うとめっちゃ罰当たンぞ?おん?」


 張角は名を問う。


「ワシは南華老仙なんかろうせんじゃ…」


 老人は答え終わると、風のように消え去った。

 張角はこの書を昼夜を通し学び、風雨を呼び起こす術を得、「太平道人」と号した。


 中平元年正月、疫病が流行った。

 張角は符水をもって病人を治し、自ら「大賢良師だいけんりょうし」と名乗るようになった。

 門弟は五百を超え、皆、符を書き念呪した。衆徒は日に増し、"ほう"を組織し渠帥きょすいを置いた。やがて将軍を名乗り


 「蒼天已そうてんすでに死す、黃天當こうてんまさに立つべし。歳は甲子にありて天下大吉ならん」


 とうそぶいた。

 衆徒は大賢良師張角、その名を仰ぎ奉った。

 張角はその党員、馬元義ばげんぎを中央に送り込み十常侍の一人である封胥ほうしょを抱き込み内応させた。

 張角は二人の弟、張宝、張梁にその意を語る。


「民の心は掴みがたい物だが今、それを得た。この機に天下取らねばかなり勿体なくね?」


 そして挙兵を期して軍旗を作り、一方では唐周とうしゅうを封胥の元へと走らせた。


 唐周は速攻ソッコー裏切って反乱をチクった。

 馬元義は速攻ソッコー捉えられ斬られた。

 封胥達も千人くらい獄に繋がれた。ちと展開早くね?


 張角は計画露見を知ると急いで挙兵した。

 己を「天公てんこう将軍」、次弟張宝を「地公将軍」、末弟張梁を「人公将軍」とし、


「漢の天運、今まさに終わらんとす!世に大聖人が生まれた!(ワシのことね?)」

「お前達は天運にしたがい正にしたがうべし!(つまりワシにね?)」


 その四方の衆徒、黄色い頭巾を頭に被った張角に与する者達は四五十万に上った。

 その多さに、官軍はちょっとビビってしまった。


 馬元義を斬った、大将軍である何進かしんが上奏すると詔勅しょうちょくも速攻降った。

 各所の防備を固め、一方で中郎將ちゅうろうしょう盧植ろしょく皇甫嵩こうほすう朱儁しゅしゅんをそれぞれ派遣し三方からこれを迎え討つ。



 果たして戦いの趨勢や如何に?

 且聽下文分解。




────────────

用語解説


※黄巾賊

 張角の宗教・反乱組織。黄巾党とも。頭に黄色い頭巾を被った。

南華老仙なんかろうせん

 道教の聖人、荘子そうしの仙格化。太平妖術書に権威を持たせつつ張角を

 罰当たりの自滅扱いすることで荘子を悪人にしないという話作りの妙。

※中平元年

 西暦184年。

符水ふすい

 呪符と神水。この手の胡散臭い手法は現代社会でも健在。人間ェ…。

ほう

 黄巾賊の軍の単位。

渠帥きょすい

 黄巾賊軍の将軍の位。

※蒼天已に死す、黃天當に立つべし。歳は甲子にありて天下大吉ならん

 意訳「漢朝もう滅びるけど次は俺らやで?」

天公てんこう将軍

 はっきり言ってこの時代の感覚でもかなりイタイ称号。

 でもそんなハッタリ風味を信じて動く人間も多い。今もね。人間ェ…。

且聽下文分解しゃていかもんふんかい

 原作の各話最後で〆る決め台詞。

 シャテイカモンフンカイ…!

 と呟くとちょっと必殺技っぽくてイイ感じ。


────────────

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る