第34話  「クレーム」

 翌朝、花咲凛さんに椎名さんとの時間をとってもらう。

 その前の人にも無事話すことには成功し、協力も取り付けた。

 まぁ、協力しないわけないとは思っていたけどね。

 

 「こんにちは」


 「…………ご無沙汰しております、武田様。いきなりのお呼び出し、本日はどのようなご用件でございましょうか」


 言外にこっちは暇じゃないんだよ、とばかりに非難の色が込められてる。

 まぁ言いたくなる気持ちも理解できる。

 できる、が、こっちも怒っているわけで。


 「いつもの軽い口調じゃないんですね」


 「徹夜明けでなので、そこまで余裕がない状況ですので」


 「そうですか、僕らの関係で?」


 「いえ武田様たちに関係はございませんよ、別件で少し」


 じゃあ今夜ももう一回徹夜になるな。

 この様子だとどうやら何も知らないみたいだし。


 「…………なので要件を簡潔に話していただければ幸いです、何か許嫁投票関連でトラブルが起こった、みたいな話でしょうか?」


 「いやそうじゃないですね」


 「そうですよね、ちょっとしたいざこざはあっても何か喫緊のことはなかったはずですから、家の中の様子を見ていても」


 「…………家の中ではそうですね、何もなかったですよ」


 「それはつま。家の外ではあったと…………?」


 「ええ率直に言えばですけど――」


 一息ついて、


 「――単純に情報漏洩についてです」


 「…………情報漏洩…………?」


 さっきまでの話と毛色がまるで違うからか、怪訝そうな様子の椎名さん。


 「なぜか俺の居場所が九頭竜、高遠、どちらにもばれていました。それも自宅に来るならわかりますが、俺一人でいるときです。どう考えてもおかしいと…………思いませんか?」


 「待ってください、九頭竜に高遠……そのお二人はどこかで…………あぁ思いだしました、宝生様の元許嫁の方とそのお相手ですか…………なぜその方たちが武田様の居場所を知っていることを知っているのですか?」


 「なぜってそれは相手が接触してきたからでしょう2回も。1度ならば偶然でも済ませられますが、2回ともなると話は変わってきますよね」


 「確かに2回は偶然では済まされませんね」


 だんだんと話の流れが読めてきたからか、椎名さんの顔がこわばっていく。


 「しかもそれに伴って、九頭竜はなぜか俺の姉が病気であること、入院していることまで知っていた。この話を知っている人間はそう多くないと思うんですけどね」


 「…………私たちNAZ機関から武田様たちの情報が漏れたのではないか、そのように疑われているわけですね?」


 「ええ端的に言えば。姉さんのことを話しているのは、NAZ機関くらいしかないので」


 「なるほど、確かに。……ただ犯人が一人とは限らないのでは?二人情報漏洩者がいることもあるのではないでしょうか、それこそ疑いたくは無いですが、許嫁の方の中とかもありますし、そこのメイドだって可能性はありますよね?」


 「そうですね、なので可能性は排除してません、ただ1番可能性が高いのはあなた達だったので。それに彼らがいるから言ってNAZ機関が漏らしていない、という話でもないでしょう?」


 「それは…………そうですね」


 「なので教えてほしいのですが、俺らの情報、美桜ねぇの情報を漏らしましたか?」


 あえて笑顔を浮かべておく。

 そうでもしないと、怒りで顔がゆがみそうだから。


 「ッ!…………私は情報を漏らしていないです」


 「本当に?証明できる?」


 私は、ですか。


 「…………証明、ですか」


 椎名さんの顔がゆがむ。

 やっていることを証明するのは簡単だ。物証なり矛盾なりなんなりを探せばいいから。

 でも逆は難しい。

 やっていないことを証明する。


 「いわゆる悪魔の証明、ですね」


 「うん」


 「……NAZ機関としても極秘に調査をすることはお約束します」


 「ふーん、それもいいけどちゃんとやってくれる保証はありますか?最近汚職でいろいろと公共機関騒がれてますけども」


 「ちゃんと私自らさせていただきます!」


 「そうですか、ではお願いします。1週間もあれば十分ですよね?」


 「…………はい」


 苦渋の判断ぽい顔をしているな。

 結構無理を言っている自覚はあるからね。

 実際椎名さんが漏らしたとは思ってない、正直自分の担当がハーレム失敗なんて得にもならないし。まぁそれだけ俺が嫌いとかってパターンもあるけどね。


 「ではよろしくお願いします…………お話は以上ですか?」

 

 「そうですね…………あ」


 「あ?」

 

 思い出したように、ついでとばかりにいう。


 「そういえば、九頭竜って別のハーレム制度の対象者なんですよね?」


 「…………はい、そうですよ」


 一瞬逡巡したみたいだけど、すぐにうなずいた。

 個人情報、とかなんとか考えたんだろう。

 俺も確認のためだし、意味はないけど。


 「そういえばその九頭竜が俺のところにきて、俺のハーレムにお前も入れとか言ってきたよ。そうしたら、お前の不出来な姉もついでに救ってやる、とさ、そんなことを言ってましたよ」


 側室にする、とか普通に寒気がするんだけど。

 ただそれを聞いた椎名さんは劇的だった。


「…………は?」


 もうさっきまでの戸惑いながらだった表情が一変した。

 顔が能面のように無表情になった。


「じゃあまあそんな感じだったのでよろしく!」


「……ちょっと待っていただけますか?」


 ガシッと腕を掴まれた。


「え、なんですか」


 後ろを振り返れば笑顔の椎名さん。

 パンツスーツが良くお似合いで。


 ただ目は全く笑っていない。


 「どうかしました?」


「いえ一連の内容をきちんと話してください、そうしたらより相手を探しやすくなるので……というか何人の仕事に手を出してくれんの?は?舐めてんの?処す?まじで処そう」


「そうですか、それでは私が」


 そう言って花咲凛さんがあとを引き継ぐ。

 それを聞く椎名さんの目は真剣だ。頬もぴくつき、眉は上がっている。


 ……いや真剣というかガンギマってるが正しいかもしれないけど。


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 お疲れ様です!

 新年2回目の更新!

 評価500超えてて嬉しかったです!感謝!


 新連載もやってます!お時間ある時に是非!

 下にURLとあらすじ貼っときますね〜!


「気づいたら大学のマドンナを染めた男になっていた件」


 https://kakuyomu.jp/works/16817330663207506037


「ねぇ、私の偽彼氏になってよ」


 そんなことをお隣のギャルに言われた、知らないベッドの上で。なんかしかもシーツで顔を隠してるし、

 え、ちゃんと責任取らなきゃ……

 ……ん?よく見たらこの人大学のマドンナじゃない?

 ……あれ?俺に偽彼女ができたのを知った幼馴染の様子が?

 ……別れたはずの元カノが大学に編入してきた?


 いつの間にか大学内で、マドンナを彼女にして、幼馴染を浮気相手に、元カノをセフレ、と大学中のヘイトを集めてるんですけど?


 俺の平穏な大学生活はいったいどこへ?






 

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