見えるふりするのよくないという教訓を得た話

 中学の部活で、見事「見えるふりして構ってほしいマン」の烙印を押された、実際に霊が見えているみほしです。こんにちは!


 前回紹介した、公民館の体育館を突っ切った霊。あれはそれっきり顔を合わせることはなかったんですが、それとは別の長いこと顔を合わせ続けている霊がいます。


 駐車場の隅っこにいる、着物を着た女の子の霊。

 日本人形みたいなおかっぱロングヘアに、真っ赤な着物を着ていました。


 1年生の入部当初から、駐車場がなんとなくおかしいなと思っていましたが、1年の頃はまだはっきり見えてなかったので目視できず。

 2年生になって見える体質になって、バッチリ目視できるようになりました!

 目視なんて、できないままでよかったのに!!

 なんならしっかり目が合って、「あ、見えてる感じ?」みたいににんまり微笑みかけられちゃった!


 霊と目を合わせるって、ハイリスクになることが大半です。

 目を合わせればついてくるし、家にも入ってくるし、お風呂も便所もついてくるし、隙あらばあっち(死後)の世界に引きずり込んじゃうぞ☆みたいな霊も実際います。プライバシーとかないですね。


 なので、にっこりされてもわざとらしく「見えてませんよ~」と不自然なくらい斜め上とかを見ながらやり過ごしていました。

 霊は私が霊が見える体質なのを見抜いているにもかかわらず、斜め上を見てやり過ごそうとしているのを見て、どんな風に思ったんでしょうか。

 私が死んでる側だったら、こいつド阿保なんかな?と思ってることでしょう。実際私は、プロのド阿保です。


 中学生って、中二病って言葉があるくらい、妙な年代なんですよねきっと。

 人にない、特別な能力が欲しい。自分は選ばれた人間なの。みたいな。

 でも、目に見える魔法とか超能力とかはない。

 そこで手っ取り早いのが、「霊が見える」という能力なのです。見えていようがなかろうが、いかに周囲を信じ込ませるかが大事!という、その辺にある詐欺みたいなそれが、私が学生だった当時は重視されていました。


 ただ、これだけははっきり言えるます。

「見えてねぇならそれに越したことはねぇし、見えるってウソついてもいいことなんか一個もねぇ」

 これにつきます。マジで。見えないなら見えない方がいいんです。


 その教訓を得たのが、この時期でした。



 私は部内でまぁまぁな陰湿ないじめに合ってたんですが、霊が見えるってのは部員の一部に刺激を与えたようです。

「実は、自分も見えてる」

って寝とぼけたウソつき始めちゃった人が出てきました。自分に注目を集めたい、主人公は自分!タイプの人です。

 見えてねぇです。安心せい。みえてねぇだろ。知ってんやからな。って思いながら、私は薄情なので「へ、へぇ~」みたいな白々しい返答をした気がします。


 この「見えてる」発言、いったん始めるとどこでもし始めちゃうのがこの人の怖いとこだったんです。

 体育館でもトイレでも、とにかく「あそこにいる」「ここにいる」って騒ぐんですね。おらんのですけど。

 ただ、「いるいる詐欺」って霊を呼ぶんです。もともと寄りやすい場所だったから、日増しに故人が集まってきてしまって。やめろなんてことも言えないのでなにも言わなかったけど、集まりまくってちょっとした授業参観みたいな人数が集まってきてしまった頃のことでした。


 駐車場の、日本人形のような女の子の霊の目の前で、その人がいつもの詐欺をしようとしている顔をしているではないか!

 やべぇ!言っちゃまずいぞ!と思ました。言わせないのが少女漫画。言わせてもどうにかなるのが少年漫画。怖い目に遭うのが小説。

 では実際どうなってしまうのか。一例として、見ていきましょう。


「ここにも霊がいる…」


 見えてないから、霊本人の前で言ってのけてしまって、女の子(日本人形風の霊)の目がまん丸になりました。もちろん私も目がまん丸になりました。


ーえ、今言う?


 そう思った瞬間、霊がこちらを向きます。度肝を抜かれた私は、ついうっかり霊と目を合わせてしまいました。

 女の子の表情が、見る見るうちに変わっていきます。

「こいつ、今言うたで」

 にんまりかわいい笑顔をこちらに向けて、そういってきているのが頭に入ってきます。私はなにも返さず、とにかく「これはBUKIMI☆」と思ってました。


 翌日もう一度体育館を利用しましたが、いつもの場所に女の子の姿はありませんでした。どこ行ったんかと思えば、見えてないのに見えてる発言をしている人に引っ付いてます。そう。お持ち帰りです。


 なにも起きなきゃいいなと思っていたまま、数日平和に過ぎました。


 そして。


 お持ち帰りの人は、学校を欠席しました。


 その人はいじめの主犯格みたいな部分があったので、他人からいじめられていたということはまずありえません。

 私はというと、お持ち帰ったことを既に忘れ、ぼんやり過ごしてました。欠席の話を聞いても、風邪かなくらいにしか思ってなかったです。


 そして部活のとき、欠席理由を知りました。


「なんか料理してて、どうなったんか知らんけど、包丁が足に落ちて突き刺さったらしい」

「刃先から足の甲に刺さって、足裏まで包丁が貫通したらしい」

「救急車で病院行ったらしい」


 超物騒。怖すぎる。ただ落っことしただけの包丁が、足の甲から足裏まで貫通とかするもんなんか、私にはよくわかりません。でも、お持ち帰りをした人の身に起きたことは事実であり、その事件以降「霊が見える」発言は全くしなくなりました。


 日本人形風の女の子は、また同じ場所に立っていて、私のことを見てきていました。

 私、打撲と骨折は慣れてますが、切り傷となにかが刺さるのだけは絶対嫌なタイプなので、絶対家についてくんなと思っていました。


「ついてきたら、家にある伯方の塩を滝のようにかけるぞ」

「仏壇のチーンのやつ、あんた(故人)の鼓膜どうかなるまで耳元で鳴らしまくるからな」


 ずっとそう思っていました。

 この威嚇が功を奏していたのかは定かではありませんが、女の子の霊がうちに来ることはなかったです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る