星空の色

マグノリア

漆黒の空

 騒がしい街は迫り来る闇に覆われてもなお、静まることはない。夜空はまるで小さな宝石を散りばめたような様子であった。

 宝石ひとつひとつはとても小さいが、集まることで大きな川を作る。それは二人の恋を分断し、一年に一度だけの再会のみが許される。




 駅前の笹には色とりどりの短冊が結ばれている。今年も七夕の季節がやってきた。にも関わらず、人々の関心は別の方向へと向かっていた。笹の前では七夕の話をするものの、離れるとすぐに別の話題に切り替えている。

 今日は週末なのでいつもより人が多い。そんな中、私は一人で駅まで向かう。スーツケースがコロコロと音を立てながら引く。


 一週間前、両親から家に帰ってこないかと提案された。ちょうど七夕の日は週末だったので帰省することにした。

 実家までは夜行バスと電車を乗り継いでいく。やはり新幹線を使うより夜行バスの方がかなり安く済む。アルバイトの身には、その出費すら痛手だが。


 賑やかな駅前とは裏腹に駅構内は静まり返っていた。列車の到着を知らせる放送が流れ、電車がやってくる。重いスーツケースを引きながら電車に乗る。向かいの下り列車は、帰宅ラッシュのせいかとても混雑している。席に座ると同時にドアが閉まる。


 スマホを取り出し、ネットを開く。七夕を特集している記事は少ない。いつも通りのニュースばかりが並んでいる。特にすることも無く、ただただ適当にSNSを眺めていた。

 SNSでは七夕のハッシュタグが付いたオシャレな写真ばかり流れる。といってもただ私がそういうアカウントばかりフォローしているからなのかもしれないが。


 目的の駅へと到着し、電車から降りる。ホームは帰宅する人でごった返していた。エスカレーターに乗り、改札へと向かう。

 改札を出ると、駅の柱には夏休みの広告がされている。エメラルドグリーンの海と鮮やかなハイビスカスが目に映る。去年は友達と沖縄へ旅行に行ったなぁ〜と、思い出しながら人混みの中を進む。


 夕食はもう既に済ませていたので、明日の朝食を買いにコンビニへと向かう。コンビニではいつもおにぎりしか買わないが、今日は珍しくサンドイッチを買ってみた。


 バスに遅れないためかなり早く来たため、時間が余ってしまった。なので何かお土産はないか探した。Theお土産といったものから、なんだこれと驚くようなものまで色々な種類があり、東京のすごさを改めて感じる。

 色々なお土産を眺めていると、ひよこのお菓子に目を奪われた。丸々とした体にちょこっとした頭がついている。目は小さいがつぶらで、くちばしからはなんとも言えない愛くるしさを感じる。東京っぽくは無いが、変なものよりかはずっとましだ。


 お土産を腕に提げ、バス乗り場へと向かう。


 バスの到着を知らせるアナウンスがかかる。私は荷物をまとめ、バスまで移動する。スーツケースを預け、バスに乗り込む。

 席に着きゆっくりしてしばらくし、バスが出発する。座席は全て埋まっており、そのためか少し早い出発となった。


 バスは賑やかな街を進み、しばらくして高速に乗る。揺れが小さくなると自然と眠ってしまった。


 

 真っ黒な空には二つの星がただ強く光っていた。

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