第4話 凛とした剣のように


「やっぱりもう少し条件を妥協した方が…」


例の受付嬢にメンバー募集中のギルドを探してもらったはいいものの、なかなか見つからないのが現状だった。


「仕方ない。こうなったら自分たちで立ち上げるしか…」


「仲間が必要だから探してるのに、結局それじゃ何も意味ないだろ」


「む…では女性がいないという条件は取り下げる。客観的に見てこれ以外もう原因は見つからない」


「最初から絶対それだったよ!どうせベルナはここに居ないんだから別に少しくらいいいだろ!?」


「よくない!不貞は許されない!」


「数時間前の発言を思い出せよ!どの口が言ってるんだ!」


「えっと…こちらが候補になります…」


「ほら見たことか!0から一気に10個くらいになったよ!」


受付の人を驚かせてしまったのは申し訳ないが、新天地で知り合いと出会うというのが新鮮味を損なって不機嫌なのかもしれない。別に仲間でもないので特に安心感もないのだ。


「ええい…!なら早く選んでしまえ!」


「はぁ…まったく疲れ…ん?」


候補の中にどこかで知った名が…『叛逆の騎士団アグリーツァ支部』とある。まさかローズの言っていたあの叛逆の騎士団だろうか?


「決まったか?」


「…ここにする」


「2人しかいないようだが…まぁいいだろう」


「ああ…そのギルドでしたら、大抵酒場の隅にいますよ。本を山積みにしている子と大鎌を持っている子なのですぐに分かると思います」


何から何まで教えてもらって、ありがたいことこの上ない。軽く感謝の言葉を述べ、俺とセントーレアは酒場に向かうことにした。


酒場とは言うが昼間なのであまり酒の匂いはしない。どちらかと言うと飲食店だろう。そして奥に机に山積みにされた本が見えた。


「貴方達が叛逆の騎士団アグリーツァ支部の方達か?」


大鎌の黒髪と読書家の赤髪の少女2人…明らかにこの空間においてかなり浮いていることがわかる。セントーレアはよくもまぁ、何の躊躇いもなく話しかけられることだ。


「?そうだけど、私達になにか用?」


「貴殿らのギルドに参加したい」


ガタッ、と音を立てて本を読んでいる赤髪の方が本を取り落とした。黒髪の方も驚いている。


「え、えぇ?私達のとこに?もっといいとこあったでしょ」


「詳しくはこっちに聞いてくれ」


「君は…その髪、セクレド人?」


「いいや、レグーナから来た。ここに来る前に叛逆の騎士団レグーナ支部の人に出会ってんだ。知ってる名前だからつい…」


「えっと…正直私達は勝手に名乗ってるだけで…一応接点はあるけど本部は別に何とも思ってないみたいだし…」


赤髪は奇異の眼差しでこちらを見るが、黙ったままだ。黒髪は動揺しながらも話してくれる。


「それでもいい。どうか仲間にしてくれないか?」


「えぇ…ナターシャ、どうする?」


赤髪がようやく口を開いた。


「私は嬉しいけど。でも最終的にはリンの決定を尊重する」


「なら…よろしくお願いします?でいいのかな…」


「よろしく。俺はゼノ・ルイス。こっちはセントーレアだ」


セントーレアに自己紹介させると余計なことを喋りかねないので俺がまとめて紹介した。


「私はナターシャ・ベルナール。よろしく」


まだ困惑している黒髪をよそに、赤髪が自己紹介を済ませた。


「えっと…リン・スティングレイだよ、よろしく…一応このギルドのリーダーってことになってる」


「スティングレイ?」


「うん。ゼロ・スティングレイの娘の…父さん、有名人だもんね。でもみんながっかりして帰っていくんだ、父さんは行方不明だから…」


ローズが言っていたあのゼロ・スティングレイの?しかし相変わらず行方は知らぬままか…彼女に朗報を聞かせてやるのはまだ先のようだ。


「どうだっていいでしょ?2人はどんな関係?戦友?恋人同士とか?」


セントーレアの方をちらりと見る。彼女も受け答えに困るようだ。


「…解釈はそちらに任せる」


「何それ、人には言えない関係ってこと!?」


リンが興奮気味に机に身を乗り出した。年相応の好奇心といったところか。


「リン…」


「ああごめんなさい。あんまり口出ししない方がいいよね。このギルドに入りたがってる珍しいお客さんだもん」


「そのことなんだが、貴方達の実力は信用できるのだろうか?彼がこのギルドを選んだ理由がよく分からないのだ。もし相応の実力が無ければ、身勝手で無礼を承知だが入会は無かったことにさせてもらう」


セントーレアはここに来てもお堅い頭か…


「なんかよく分からないけど試されてる感じ?じゃあいいよ、ちょうどこれから遺跡探索に向かうところだったからね。ナターシャ、私達の実力を見せてあげよう」


「はぁ…売られた喧嘩は何でも買うんだから…ああ、喧嘩したいつもりじゃないのは分かってるよ、あくまで例え」


「では準備を済ませたら出発しよう」


何だか話が勝手に進んでいくなぁ…やっぱり手伝わせるんじゃなかった。結局彼女が取り仕切っているではないか。






「…陛下の申し付け通り、リヴィドにはカトレアを、アグリーツァにはセントーレアを送り込みました。しかしセントーレアとはおそらく連絡を取れないかと…海が激しく荒れておりますので…」


「…ではカトレアの方は?」


「女王エンジェライア・リヴィドは我々の動きを牽制、カトレア一行はシックスガーディアンの監視下にあります」


「ガーディアン…リヴィドの最高峰の騎士達ですか。噂には聞きますがその戦力はいかに?」


「陛下であればまとめて葬れるかと」


「ふん…大したことはないのですね」


「ですがリヴィドには魔神が…」


「分かっています。ガーディアンが表向きの最高戦力なのであって、リヴィドが秘密裏に抱えるゲームチェンジャーが存在することを」


「念の為にケルニオン方面にも捜索隊を派遣しておりますが、期待はできないかと…」


「真逆の方向ではないですか。戦力の無駄です。引き戻しなさい。リヴィドの庇護下にあるのなら、かなり厄介なことになります」


「しかし本当の敵は…」


「分かっています。…叛逆者ゼロ・スティングレイ…紛うことなき強者。大魔女フェリシーですら私に警鐘を鳴らした男…運命への叛逆者、己の運命を打ち負かした男…夢想家、利己主義者、人の身で神になった男、リヴィドの魔神にすら彼には勝てないと言わしめた力の象徴…」


「随分とお詳しいようで…」


何度も計画の妨害をしては風のように去っていくのです。忘れるはずがないでしょう」


「現在彼がどこで何をしているのか、何一つ定かではありません」


「でも、わざわざ話題に挙げたくらいなら何か意図があるのでしょう?」


「叛逆の騎士団と名乗る組織からです」


「手紙?読み上げなさい」


「『拝啓、不完全な完璧主義者様、我々叛逆の騎士団は貴殿らに警告を促す。叛逆者ゼロ・スティングレイの名に於いて、リヴィド及びその管轄下にあるハイドレスト地方を乱すことは許可しない。また、我らが保護した少年についても同様だ。我らの牙は既に貴殿らの首元にかけられていることを忘れるな。

敬具、叛逆の騎士団代理団長兼シックスガーディアン第一席』…!?」


「誰からなのです?」


「…『マリー・メリア・ベルナール』…!」


「ハッ…ハハハ…!アハハハ!!」


「…?」


「そうですか!ベルナールですか!これは滑稽ですね!…はぁ…その手紙は罠です。ゼノはアグリーツァにいます。リヴィドではありません」


「え…なぜ分かるのですか?」


「あの女のやり方は熟知していますから。流石に対策しているだろうと思っても、何一つ変わらない女です、ベルナールという女は」


「何か分かりませんが…では海が鎮れば、アグリーツァに兵を挙げさせます」


「はい。そうしなさい。…ウフフ!裏目に出ましたねベルナール!貴女が叛逆の騎士団を率いているのは少々想定外でしたが、これでゼノの居場所が分かったのですから!相変わらず嘘が下手なままだ。子供でももっとマシな嘘をつけるでしょう。こんなもの、むしろ正直に白状しているのと同じです。200年生きてきてその愚かさ、もはや尊敬に値します」







「うわー…なんかこの遺跡、思ってたより長いし暗いね〜」


リン、ナターシャ、セントーレア、俺の四人は『黒龍の遺跡』と名付けられた地下の迷宮に赴いている。地上からは小さな廃墟にしか見えなかったそれだが、いざ地下へと進むと想像もできない広さだった。


「ん…?二手に分かれてるね。じゃあこっちも手分けして進もう」


「私はゼノと行く」


ここに来ても監視第一か。真面目な奴だ。


「えー?せっかく知り合ったんだし、ナターシャと一緒じゃなくてどっちかと一緒がいいなー。二人のこともっと知りたいし」


リンのこの我儘はまさに渡りに船だった。いいぞもっと言ってやれ。


「リン。向こうにも向こうの事情があるんだから、いつも通り私と二人でいいでしょ?ごめんねセントーレア、リンが変なこと言っちゃって…」


「いや…確かに一理ある。分かった、では私はナターシャと行こう。ゼノ、君はリンと一緒にそっちの道を進んでくれ」


「本当にいいの?リンのワガママなんて無視していいんだよ」


「いいんだ。進もう」


「そう…じゃあ出口かここ、あるいは最奥でまた会おう。リン、いい子にね?」


そう言うとナターシャは片方の道を魔法で照らしながら進み始めた。セントーレアが一瞬迷った後、すぐに足早にその後を追った。


「じゃ、私達も行こっか。ランプはゼノが持ってて。ヤバくなったら私を置いて逃げること。分かった?」


俺とリンも反対の道を進み始めた。彼女は寒くないのだろうか。全体的に少しはだけており、不思議な服装だ。少し長いだけの下着のようにしか見えない。その上に男物と思わしき白いコートを着ている。これがアグリーツァのファッションというものなのだろうか?いや流石にないだろう…


「分かった。君も、俺のことなんて構わず逃げてくれるならな」


「あはは!それはちょっとできないかな〜」


「どうしてだ?それだと不公平じゃないか」


究極のお人好しなのだろうか。いや、見た目通り純粋に天真爛漫な少女なのだろう。


「これ。写真って言うんだって。絵じゃないんだよ」


彼女が取り出したのは一枚の紙切れ…俺が紡いだ絵のように白と黒で描かれた、写実的な絵…いや、絵ではないらしい。


「これは…」


幼い…まだ10歳前後と思わしき少女の隣で恥ずかしそうに微笑む男性…俺とそっくりだった。


「ね?この人が私の父さん。ゼロ・スティングレイなんだ。だからさっきは本当に驚いた。父さんが帰ってきたのかと思って。けど目を見れば分かったし、ロマンがどうこうって口癖を言わなかったから分かった」


目に違いがあるのだろうか。写真の男を見てみると、目から光が失われている。相当の修羅場を越えてきたのだろうか。


「覚えてて。これが覚醒者…運命に抗った者が辿り着く境地なんだ」


「これが君の父親なら、少し若すぎないか?だって、俺と同じくらいにしか見えないぞ」


養子であるなら話は別だが、見る限り血を継いでいそうな程、この男の特徴がリンにも現れている。黒髪(白と黒なのでこの男が本当に黒かは分からないが)、眼差し、立ち姿…


「歳をとらないんだよ。凄いでしょ?母さんもそうなんだ」


「この隣の女の人か?」


色が薄い、おそらく白い髪と思われる、お淑やかな女性だ。こちらも母親というよりは姉に見える。


「そう!凄い美人でしょ!?私もいつか母さんみたいになりたいなぁ…」


「君は既に十分美人じゃないか」


「褒めたって何もでないよー?ま、口説きの常套句としては悪くないかも…」


しまった。これもベルナのせいだ。気を付けなければ誰でも口説き落とす奴に思われかねない…


「恥ずかしいから忘れてくれ。…ん?」


「どうかした?」


「この人、知ってる…大魔女フェリシーだ。何回か見たことがある。この人も変わってないんだ…」


「フェリシーさんとも知り合いなんだ…ラッキーだね」


本来の髪は薄い青色だったが、この写真だと灰色に見える。だか他にも、親子の3人の後ろにたくさん女性がいる。


「この人達は…側室か?」


「ん〜…まぁ、そんな感じ。あ!勘違いしないでね!?被害者は父さんだから!」


その一言で察せられる。どうやら、ゼロ・スティングレイと俺は容姿ばかりか境遇も似ているらしい。話が合いそうだ。


「そうなるとこの写真も意味合いが変わってくるな…」


「大丈夫、手は出してない…はず」


「それでいいのかなぁ…」


もしもの話だが、ベルナより先に誰かと結ばれて子供をこしらえた場合、彼女は諦めてくれるだろうか。…いや、とんでもなく怒って二度と部屋から出られないだろうな…


「おっと、お喋りはここまでみたいだね」


「敵か…」


リンが大鎌を順手に構えた。さながら死神。これから魔物達の魂を刈り取るのだろう。


「こういうの、ロマンがあって憧れてたんだ。男の子を守って敵の前に立つの。どう?今の私、カッコいいでしょ?」


「最高にクールだ」


少女は魔物の群勢に飛び込む。鎌を一振りするだけで亡者の首が宙を舞い、太腿のホルスターから抜いたナイフで脚を削ぎ落とす。かと思えばナイフはブーメランのように彼女の手へと戻り、彼女はそれを再び投擲する。


「ちょっと狭いなぁ…」


そう言うとリンは鎌を背中にかけ、短剣を抜いて戦い始めた。卓越した剣技だ。でもなぜだろう。その後ろ姿に、妙に見覚えがあるのだ。セントーレアか、カトレアか、俺の近くで戦闘を行うような奴はそれくらいだ。決闘であれ、侵入者の撃退であれ、俺に見える程近くで戦うということは相応の緊急事態か、よほど立派な行事かのどちらかであり、その2人くらいしか当てはまらないのだが、そのどちらとも違う。


「死人は死人らしく地面に這いつくばってなさい」


初対面の印象とは違う、冷酷な一面…やはりどこかで見覚えがある。その剣技もだ。セントーレアとカトレアの『美しい剣技』とは微妙に異なる、言うなれば『格好いい剣技』だ。飾ることのない、純粋に対象を排除するためだけの剣技だ。


「なんてやつだ…あんなにいた魔物が一瞬で…うわっ…!?」


「ヴァァ…!」


低く唸る声。つい彼女に見惚れていて、足元にまで這いつくばって来た亡者に気が付かなかった。驚いて転んでしまい、すぐに右手をついて立ち上がろうとするが、亡者が俺の足に絡みついてそれを阻止する。


「くっ…!離れろ!」


咄嗟に左手を突き出し、術式も何もかも無茶苦茶なまま黒の魔法を解き放つ。無定形の魔力の塊が亡者の顔を僅かばかりに退けるが、依然として俺の首元を狙っている。


「え…!?ゼノ!!」


リンがこちらの異常に気が付いたが、到底間に合う距離には見えない。焦った様子のまま、リンがナイフを投げたが明らかに上すぎる。きっと亡者には当たらないだろう。


(まずい…!魔力を込めてないから操作できない…!!私の馬鹿!!)


ナイフは俺から少し離れた壁に突き刺さる。しかし、その銀色に輝く刃物に魅せられるようにして、俺の体に熱が籠るのを感じた。


「ヴァァァ!!」


亡者の顔がすぐそこまで迫る。死を覚悟して目を瞑る。ああ、せめてあのナイフに手が届けば…


「ゼノ!!…え…?」


覚悟していた痛みがない。そっと目を開くと、亡者は首から上が切断され、壁に釘付けにされていた。…たった一本のナイフによって…


「助かった…ありがとう、リン」


きっと彼女の第二投のナイフが間に合ったのだろう。感謝せねば。


「違う!私のナイフは魔力を込め忘れてそこの壁に突き刺さった!ゼノが操ったんだよ!!どうして!?その魔法は私にしか使えないはず!」


「え…?俺が…あのナイフを…?」


何が何だか分からない。一体どういうことだ?彼女がやったのではないのか?


「…私の魔法は刃物を操る能力がある。けどさっき投げたナイフは焦って魔力を込め忘れて操れなかった。だからゼノが操作したとしか思えない」


「でも俺の魔法でそんなことはできない。こいつの頭を押し返すのが精一杯だ」


「このナイフを持って」


「え?わ、分かった」


リンが太腿のベルトからナイフを一本外し、俺の手に渡した。


「魔力を込めて」


「えっと…こんな感じか?」


右手でそっと魔力を込める。ナイフの刀身に白い光の線が走り、ひび割れのような模様を作る。


「いやちょっと待って何で白と黒両方使えるの?さっき黒の魔法使ってたよね?」


「これは…生まれつき稀有な才能で…」


リンが若干引いている。確かに、白と黒の両方の紡ぎ手は俺以外いないと断言してもいいかもしれない。少なくともレグーナには存在しなかった。


「え?今までどうやって生きてきたの?なんで白と黒両方使えて体が無事なの?普通とっくに燃え尽きてるからね?」


「分からない。でも二色使いなら他にもいるぞ?セントーレアなんて三色だぞ」


「それは多分、赤青緑の三色でしょ?そうじゃなくて、白と黒は共存するはずがない。五色合わせて使えるっていうならまだ分かる」


「白と黒しか使えないな」


「それがおかしいんだよ。『追憶の白』と『忘却の黒』は絶対に相容れない存在なの。例えば、『遷移の赤』と『調和の緑』は組み合わせられるし、『回帰の青』もそう。赤と青は相性が悪いけど、緑が間に入れば話は別」


「だからセントーレアは滅多に緑の魔法を使わないのに一応習得してるんだな…」


「赤と青の相性の悪さとは比べ物にならないほど、白と黒は相容れない。もし使えるとしたら、三色で中和してようやく死なない程度に使えるのがやっとなんだよ…だから白と黒使いは必然的に五色使いになるんだけど…」


そもそも二色の時点でかなり珍しいのに、そんな人間がいるだろうか。俺が当てはまるとしたら、この俺の魔法の貧弱さの説明がつかない。


「まぁ、そんな奴いないだろうな」


「いや…マリー・メリア・ベルナール…ナターシャのお母さんだけは例外。あとはリヴィドの魔神、エンバージュもそうなんじゃないかって噂がある」


「マリー…え?マリーってあの!?」


まさか、とは思ったが噂に聞くマリー・ベルナールの外見とナターシャは一致している。真紅の髪、海色の瞳…なぜ気が付かなかったのだろう。


「そうだよ。でもそんなことは今はどうでもいいや。かなり話が逸れたね、とにかく、君は自分の異常性を自覚した方がいい。今生きてるのが奇跡なんだよ?」


それは二つの意味で奇跡なのだろう。白と黒が反発しなかったこと、先程偶然にもナイフを操れた…まだ確証はもてないが、そういうことにしておこう。ともかく、これが運命というものなのだろうか。


「…珍しい才能があるのに、魔法の腕はこんなものか…奇跡とは言っても笑えるな」


そう言い終わり、先に進もうとするが、リンに手を握られて止められた。


「…?」


リンが頬を赤らめて目を泳がせている。


「…さっきはごめん。私がしっかりしてれば君を怖い目に遭わせなくて済んだのに…」


「いいんだ。自分の才能に気付けたから。それに、守ってもらってばかりじゃダメだろ?俺もいつか、リンを守れるように強くなるから」


「……ありがとう」


先に進もう。冒険はまだ始まったばかりだ。










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