34 キャサリン王妃達のざまぁ

 あのステファニーがぞっとするほどの美貌の皇太子に、あれほど大事に愛されているのが気に入らなかった。


 なんなのよ! あの皇太子もあの皇子達も皆、見たこともないほどの美形ぞろいだわ。私はこんな腹のでた夫しかもてなかったのに・・・・・・私が若い頃はそれは美しくて、あのステファニーなんかよりも数倍も綺麗だったのに!


 狡い! 妬ましい! 皇太子妃の座から転がり落ちれば良いのに! 


 私はほの暗い思いで心がざわついていた。そこに夫のルコント国王はとても楽しい提案を口にした。


「あの美しいステファニーを側妃に迎える。儂が愛でてやり、子をもうけるのだ。その子供達はきっと緑の奇跡を起こす能力を持つ。緑の妖精王の愛し子の子供達が我が国を繁栄させるのだ。どうだ? キャサリンよ。儂の愛はお前のものだが、ステファニーに子供を生ませても良かろう?」


 あっははは! 樽のような突きでたお腹のあんたの愛なんていらない。思えば若い頃から美食ばかりしていたこの夫は、新婚時代でさえ腹が突きでて顔も脂でテカテカしていた。政略結婚だから仕方なく一緒にいただけだわ。愛したことなど一度もない。


 あのヴァルナス皇太子の数千分の一も美しくない、お腹のでた醜い私の夫の慰み者になるステファニー。考えただけで楽しい。泣きわめいてきっと気が狂うほど絶望するわね。


 私はステファニーをひとめ見た時から好きではなかった。賢く美しくてレオナードよりも優秀なことはわかっていた。きっと王妃になれば私よりも完璧に公務をこなし評価され活躍するのよ。そんなの許せない。


 だから冷たくしたし、多少の意地悪もしてやった。王太子妃なんて私を引き立たせる可愛いだけの令嬢の方がちょうど良い。あまり優秀な子はいらないわ。私やレオナードの影でいれば良い。決して目立ってはいけないのよ。


 私は夫の作戦に内心拍手喝采をおくっていた。隣にいたバーバラも同じ気持ちのようだった。


「私よりもステファニー様が幸せになるなんて許せません!」


 うふふ、この子とはとても気が合うわ。



☆彡



 今までのことをつらつらと思い返していると馬車が急停車した。


「なにごとよっ!」


 御者に怒りながら外を見ると、馬車はたくさんの民衆に囲まれていた。


「この罰当たりの王妃と王太子を引きずり出せぇーー! こいつらがステファニー様を迫害したから、ルコント王国の地は緑の妖精王の怒りをかったのだ! こいつらに責任をとらせろぉーー!」


 わたし達は怒り狂い暴徒と化した民衆に囲まれていた。

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