6 呪われていると言われた私

「バーバラに嫉妬は見苦しいぞ」 

「あの方は私が嫉妬するほど成績は良くありませんが」

「っ・・・・・・人間の価値は成績だけじゃないのだぞ」

「ですが、私は王太子妃教育の際に、完璧できなければならないと言われました」

「あぁ、君は確かにがんばったよ。しかし、最近の君は知識を自慢しすぎるし、生意気だよ」


 私はレオナード王太子殿下をお支える為に、適切なアドバイスをしていただけよ。意見を求められて答えていただけ。そうして、その通りに彼が行動すればすべてが良い結果になった。


「ですが、私はレオナード様の為を思って・・・・・・」

「ステファニー、お控えなさい。頭でっかちな女性は男性に嫌われますよ」


 いつものようにキャサリン王妃殿下が、私達の会話を聞きつけてこちらにいらっしゃる。まるで私を監視しているようだわ。私達がちょっとした言い合いに発展するタイミングで、必ず姿を現すキャサリン王妃殿下。私はカーテシーをして口を閉じるしかなかった。常に完璧でいよ、とおっしゃっていたキャサリン王妃殿下が、今日は違うことをおっしゃるのよ。


 頭が混乱してしまう。 

 私はなにを求められているの?



❁.。.:*:.。.✽.



 卒業記念パーティの当日。レオナード王太子殿下から毎年贈られていたドレスはない。私は手持ちのドレスに着替えて、レオナード王太子殿下のお迎えもないので、両親と一緒に会場に向かった。卒業記念パーティには生徒の保護者も出席するので、貴族達が集う舞踏会と同じような規模になるのよ。

 

 今回はレオナード王太子殿下もいらっしゃるので、特別に王宮の広間で開催されることになった。本来ならばレオナード王太子殿下のエスコートのもと、華々しく入場するはずなのに、両親の後ろに隠れるようにひっそりと入っていく。


 ところが会場に着くと、両親は私からすぐに距離を取るようにそれぞれの知り合いの元に話しかけに行き、取り残された私にレオナード王太子殿下がバーバラ様を伴って近づいて来た。


「ステファニー嬢をとらえよ。バーバラにした数々の嫌がらせを知らないとは言わせない。証人もいるのだぞ」


 友人と思っていた令嬢達が私を怖々と見ているが、唇を弓なりにしているので、心の底ではこの状況を楽しんでいるのがわかった。


「ステファニーの髪と瞳の色はとても不吉ですわ。近年、農地が荒廃し農作物が育たない現象があいついで報告されています。風で大量の砂やちりが舞いあがり、息ができなくなる者もいます。洪水に見舞われた地域や竜巻が起こった地域もありましたね。そうよ、ステファニーは呪われているに違いありませんわ」


 王妃殿下が貴族達に、身振り手振りを交えて演説をする。それと同時に王家の騎士達が私を拘束し、腕に縄が巻かれていった。両親を探し目が合うと、あからさまに目を逸らされ、捨てられたと悟った。


「あぁ、だからジュベール侯爵家が負債を抱えるようになったのか。災いをもたらすような娘は勘当します!」

 

 お父様は私を冷たく見据えながらそうおっしゃった。私はこの瞬間、ジュベール侯爵家から捨てられたのよ。そうして私に待っていたのは・・・・・・






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