第8+6話 どっちの蜂蜜がお好みだ?


 //SE 草を踏み歩く音



 「まーーた来たわけ? ……あんたも暇ねぇ、鉢嶺」



 「え? そ、そう……そっちの養蜂場は従業員がいるもんね。……いいなぁ、社長は。……まぁ、あたしのニホンミツバチさん達のお世話にはこの子1人で十分だけどな!」 /そばに寄り添って



 「で、今日はまた何しに来たわけ??」



 「採れたての蜂蜜を持って来たって……そ、そんなに採れたの!?」



 「はいはい……。どうせあたしの養蜂場はちょっとしか採蜜できませんよ~だ。嫌味でもいいに来たんならさっさと帰んなさいよ」


 

 「嫌味を言いに来たんじゃない? じゃあ、何しに来たのよ……」



 「い、要らないよ!! せ、セイヨウミツバツの……鉢嶺の蜂蜜なんて……。この子にはさっきあたしの蜂蜜食べさせてあげたし……」



 //SE 草を踏み歩く音



 「あっ、こら!! この子に勝手に触るな!!」



 「か、彼氏とかじゃない……けど……。で、でもこの子はあたしの養蜂場の大事な子なんだから!! か、勝手に蜂蜜を食べさせないでよね……。そ、それに……一応……候補……だし」



 「な、何でもない!! ってか、なに鉢嶺の近くに行ってるんだ!! は、早くこっちに戻って来なさい!!」



 //SE スプーンに乗ったたっぷりの蜂蜜を食べる音



「あっ、こら!! セイヨウミツバチの蜂蜜なんか食べちゃダメぇ!!」



 「た、確かにセイヨウミツバツの蜂蜜は甘くて美味しいかもだけどさ……。で、でもニホンミツバチさんの蜂蜜の方がおいしいもん!! ほ、ほらっ!!」



 //SE 草を踏み歩く音



 「ほ、ほらっ!! あたしの左指にたっぷり付いたニホンミツバチさんの蜂蜜も食べろ。はいっ、あ~~ん」



 //SE 左指にたっぷりつけた蜂蜜を食べさせる音



 「よく味わって! …………どう? セイヨウミツバツの蜂蜜と違ってちょっぴり甘さの他にほのかな苦みもあるだろ? それはニホンミツバチさんの蜂蜜には花粉が多く含まれてるから。ニホンミツバチさんの蜂蜜は大人の味♪ なんだよ?」



 「うんうん♪ ほ~~らっ、やっぱこの子はあんたの蜂蜜よりあたしの蜂蜜の方が好きだって。分かったらさっさと帰んなさい!!」 /勝ち誇った態度で



 //SE バイクの爆音



 「……ふぅ、やれやれ。さっ、邪魔者も帰ったしお家に入ってこのニホンミツバチさんの巣蜜を使ったとっておきの料理を作ってあげよう。その名も、巣蜜ケーキだぁ!!」



 「ん? 何??」



 「……………………」 /顔をしかめる



 「えっ……け……ケーキって何?? ……ど、どういうこと!?」



 「……………………」 /動揺しながら



 「……はぁ!? 一昨日鉢嶺の家に行ってもう蜂蜜で作ったケーキを食べた!? 何それ!? ……浮気じゃん!! ねぇ、完全に浮気だよね!? ねぇってば!!」



 //SE 身体を前後に揺さぶられる音



 「たまたま街で会ったからって……。そ、そんなの言い訳になんないよ!!」



 「信じらんない……。よりによって鉢嶺の家に行くなんて……」



 「い、いや……あたしは全然いいんだよ? ……あ、あたしは全然いいんだけどさ……。そ、そう!! に、ニホンミツバチさんがさ、嫌がるじゃん!!」



 「そうだよ。ほ、他の蜂のにおいなんか付けて巣箱の側をうろうろなんかしたら警戒されて刺されちゃうぞ?」



 「でも今日は刺されてないって……そういうことじゃないのぉ!!」



 「……ってか、何であいつの家になんか……。そりゃ、あたしより女子力あるかもだけどスタイルはあたしだって負けてないのに……」 /小声でぶつぶつと



 「ま、まさかとは思うけど……泊まったりはしてないよね?」



 「そんなに威張らないでよ、家に行ってないくらいで。そんなんで喜んだりしないんだからな? あいつの家に行ったのは事実なんだし……」



 「……………………」 /しばらくの間、下を向いて



 「あ~~!! やめやめ!! この話はもうおしまい!! うじうじすると気分落ち込むしあたしらしくないもん! 早くお家に入るよ! あたしのケーキの方がおいしいってことを分からせてあげるんだから!!」






 ♦ ♦ ♦






 「お待たせ~~♪ さぁ、出来たよ!」



 //SE テーブルにケーキを置く音



 「ん? 何?? ケーキの断面に見たことないものは入ってるって? 大丈夫だって! いいからほらっ、食べなさい! 口開けて、はいあ~~ん!!」



 //SE ケーキを食べる音



 「どう? おいしいっしょ??」



 「ふふっ♪ そのケーキの生地にはねぇ、巣蜜を使っているからな!!」



 「そうそう♪ さっき採って来たニホンミツバチさん達のお家をそのまま生地に使ったケーキなのだぁ!!」



 「そんなニホンミツバチさん達の巣を生地に採用しているためこのケーキは生地はサクッ! 中からはじんわりと、とろっとろの蜂蜜が溢れ出てくるという夢のようなケーキとなっております♪」



 「どう? これがあたしのスペシャルケーーキ!! 鉢嶺のケーキなんてあたしのケーキに比べたら……ねぇ?」 /顔を近づけて囁く



 「うんうん♪ そうだろう。あたしのケーキの方が断然おいしいだろう♪」



 「……でも、鉢嶺の家でケーキを食べた罪についてはしっかりと償ってもらわなくっちゃなぁ?」



 「ん?? たいしたことない? いやいや、鉢嶺の……じゃない。……セイヨウミツバチの蜂蜜入りケーキを食べた罪は重いぞ? というわけで、明日はあたしの買い物に付き合って!」



 「え? どこに行くのかって?? ふふっ♪ もちろんニホンミツバチさん達の巣のふゆじたくのための買い出しだぞ! 重い木材もたくさん買うからキミにもたっぷり手伝ってもらうからな♪」

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