第12話 バラのいろ

 薔薇色の未来なんてない。

 薔薇色の昨日がないように。

 けれど、バラ色はある。

 バラバラの、礼拝堂のモザイクみたいな、いろんな色の思い出。あれとか、それとか。君とか、あいつとか。十年前とか、一昨日とか。

 許せない怒りだって、耐えられない悲しみだって、モザイクの一部になってしまえば、遠目から見れば、「ま、こんな人生でもよかったんじゃん?」と思える。人生とは曼荼羅だ。そして一枚の絵画だ。モザイクガラスだ。

 いつだってクリスタルの透明やクリムトの黄金や、赤や青や、そんな美しいぼくではないのだから、茶色や黒があっていい。むしろ、あったほうがいい。

 薔薇色の未来なんて信じてないけど、バラ色の明日はある。

 これを読むあなたの心に、少しでもぼくのなんらかの色が伝わりますように。なんて言ってみたら、ちょっとキラキラしてるみたいで、少し恥ずかしいけれど

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