愛しい――そう吐息するしかありません。

心の底から、慈しんで抱きしめたくなるような文芸作品です。
読後、近年の鬱陶しい世相やら、夜勤明けで倦怠感の塊となった自分自身やら、そうした心身の軛から必ずしも解き放たれたわけではないのですが、なんと申しますか、とにかくこの世界は、ままならなさも儚さも含めて、美しく、慈しむべき世界なのだと、安堵の眠りに導いてくれるような短編でした。
作者様の文学的な表現力にも、いつもながら脱帽です。