ニナの悩み

 最近のね、あたしの定位置は雷のアオの頭の上だったの。

 あたしは精霊のニナ。雷のアオとは仲良しなんだ。

 アオの頭の上はとっても快適で、あたしは毎日アオの頭の上に乗って、お出かけしていたの。天界のいろんなところに遊びに行ったり、アオの雷修業につきあったりした。

 とっても楽しかったの! でも!

 

「ニナちゃーん! なんで逃げるの?」

 あたしはアオから頑張って逃げている。ぱたぱたっ。

「ぼくの頭の上に乗りなよ。いっしょにお出かけしようよ。ねえ、ニナちゃん」

「お。何してんの? 鬼ごっこ? おれもまぜて。走るの、速いよ。ニナが鬼?」

 あたしが一生懸命アオから逃げていると、小鬼のレイが来て、そう言った。そして、アオといっしょにあたしを追いかけて来た。いやん、もう!


「違うちがうー! 間違ってるー! 鬼ごっこじゃないもんっ」

 あたしはぱたぱたと一生懸命、逃げた。

 でも、ふわってアオの手の中に入っちゃった。……アオの手の中、すき。あったかくて。

「ニナちゃん、どうして逃げるの? ぼくの頭の上においでよ」

「そうだぞ、ニナ。お前やばいから、アオの頭の上がいいぞ」

「やだやだやだー!」

「……ニナちゃん、ぼくのことが嫌いなの?」

 アオはそう呟いて、涙をこぼした。アオの手の中にいたあたしに、アオの涙が一滴かかった。

 ぽんって、あたしはまた大きくなっちゃった。


「ニナちゃん!」ってアオはあたしのことをぎゅってして、レイは「げっ!」って言った。

「アオ」あたしもアオをぎゅってしようと思って、「あ!」だめだめ!

「ニナちゃん!」逃げようとしたけど、アオに放してもらえなかった。

「ニナちゃん、どうしたの?」


「……あたし、あたし、太っちゃったの‼ アオの上に乗っかって、遊んだり食べたりしていたら、太っちゃったのよお」


 あたしはくすんくすん泣いた。泣いているうちに、ぽんって元のサイズに戻っちゃった。

「ニナちゃん、太ってないよ。かわいいよ」

「男の子はみんな、そういうのよお。だって、お気に入りのスカートがきつくなったんだもん」

「じゃあさ、アオの上から下りればいいんじゃない?」とレイ。

「それはダメ! ニナちゃんはぼくの頭の上!」とアオ。

「あたしも、アオの頭の上がいいんだもん! でも太っちゃったんだもん!」


「じゃあさ、ときどきアオの上から下りて、いっしょに鬼ごっこすればいいんじゃない?」

「ニナちゃん、そうしようよ。レイと三人で鬼ごっこしようよ!」

「あたし、鬼じゃないもん! 角ないもん! だって、すぐに捕まっちゃうもん! そんなの間違った鬼ごっこだもん!」


 結局あたしたちはかけっこをすることになった。あたしはひらひらって飛ぶんだけどね。

 それでね、約束したのよ。今度はかけっこしながらスパイごっこしようって。神さまの書斎に行くのよ。楽しそうでしょう⁉

「げ。マジかよ?」「楽しそうだね、ニナちゃん!」

 神さまもきっと「楽しそうだね」って言ってくれるよね。だってあたしは神さまのお気に入りだもの!

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