第31話:脅迫
トレジャーハンター、冒険者が強いのはダンジョンの中だけだ。
それほどレベルアップしても、その力はダンジョンの中でしか使えない。
ダンジョンの外で悪い人におそわれたら、簡単に殺されてしまう。
だから、治安の悪い国ほど冒険者と犯罪者が近づく事になる。
犯罪者組織は金を稼げる冒険者を仲間に加えようとする。
冒険者は、自分と家族を守るために、力のある者に守ってもらおうとする。
日本のような治安の良い国なら、トレジャーハンターも冒険者も安心して市民生活を送れるけれど、合衆国のような先進国でも稼げる人間はボディーガードが必要だ。
それはトレジャーハンターや冒険者に限らない。
映画俳優やプロスポーツ選手なども、常にボディーガードに守られている。
当人だけでなく、家族も狙われてしまうのがとても悲しい。
僕の一族は、弱くて狙われやすい子供たちを集団で育て守っている。
最悪の場合には、引退した者たちが子供たちを守り、プライベートダンジョンに逃げ込むようにしている。
どこにも何の情報も伝わっていないプライベートダンジョンは、よほど実力のある冒険者でなければ、簡単に命を失ってしまう危険な場所だ。
外に出ずに通信教育を受けている限り、子供たちは安全に暮らせる。
危険があるとしたら、成人して社会人となり世間に出て行った者たちだ。
それも、トレジャーハンターと名乗れるほどの実力がない者たちが危険だ。
実力のない成人がダンジョンの外でおそわれたら、抵抗のしようがない。
それでも、これまで海外の犯罪組織が日本に来て冒険者をおそわなかったのは、おそっても国外に連れ出すのが難しかったからだ。
あまりに露骨にやってしまうと、犯罪者組織だけでなく、裏にいる政治家や国の加担が表に出てしまうからだ。
合衆国の駐留軍が、航空機や艦艇を使って冒険者や冒険者家族を連れ去ったら、さすがに国際問題になってしまう。
ロシアにしても、日本国内にあるスパイ企業を使って冒険者を呼び出し、貿易に来ていた輸送船や漁船に放り込んで連れ去る方法を使えば、国際問題になる。
「何ですって、一族の1人がラチされたのですか?!」
おばあちゃんから遠縁の成人男性がロシアに連れ去られたと言う連絡がきた。
僕はまだパーティーメンバーと舞洲ダンジョンに潜っていたので、救出作戦に参加したくてもできなかった。
我が家では、一族が人質に取られた場合は徹底的に報復する事になっている。
ダンジョン外ではレベルアップした能力は使えないけれど、どれがどうした!
我が家は1000年も前からトレジャーハンターとして暮らしているのだ。
ダンジョンが現れた41年前なんて、短過ぎる期間でしかない。
1000年近くは普通に鍛えただけの体で宝物を探し、家族を守ってきた。
我が家は、ダンジョンの外でも一族を守り報復するだけの力を持ち続けている。
「みなさんに大切なお話があります。
命に係わる事ですから、真剣に聞いてください」
僕は個人とパーティー、両方の記録用ドローンを使ってライブ発信した。
「僕の一族がロシア政府とマフィアに誘拐されてしまいました。
彼らは、タカラブネファミリーがこれまでに稼いだ金を全て寄こせと命じました。
さらに、ロシアに移民して稼ぎの9割を納めろと命じました」
僕はここで言葉を止めて、ライブ配信の反応を見ました。
最初は信じられないようでしたが、具体的な誘拐方法、大使館員を含めた誘拐犯全員の氏名と住所を公表しました。
「僕たちタカラブネファミリーは、家族愛がとても強いです。
どのような方法を使っても家族を救い出します。
じゃまする者は容赦なく殺しますし、自分たちの犠牲もかえりみません。
だから、今直ぐロシアから逃げてください。
報復にロシアが持っている核爆弾を自爆させます。
家族が捕らわれている場所から、遠くにある核爆弾から順番に自爆させます」
☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画
藤河太郎:おい、おい、おい、これ本当の話か?!
雷伝五郎:報復するのは本当だろうけど、核爆弾の自爆はハッタリだろう?
Benno:いや、ネットのウワサにそんな事が書いてあったぞ。
藤河太郎:いや、そのウワサはタカラブネファミリーの限った事ではない。
雷伝五郎:そうだな、多くの都市伝説組織が核兵器を支配していると言われていた。
Rafael:ロシアも政府ではなくマフィアが核爆弾を支配していると言われていた。
ノンバア:私もロシアマフィアが政府から核爆弾を手に入れていると読んだ。
ゆうご:ありえないと思うが、万が一の事がある。
Benno:ロシアマフィアが核爆弾を持っていたとしても、竜也に起爆できるのか?
ゆうご:竜也がやるのではないだろう、歴戦の家族がやるのだろう?
Benno:タカラブネファミリーが全力でやれば本、当に核爆弾を起爆できるのか?
Rafael:竜也の家族が本気でやったらできるかもしれない。
Benno:S級冒険者が20人でやれば本当にできてしまうのか?
ノンバア:冷静になれ、S級冒険者でも地上ではただの人だぞ!
Benno:そうだった、タカラブネファミリーでも戦車や戦闘機には敵わない。
ノンバア:戦車や戦闘機どころか、拳銃やマシンガンにも敵わなぞ。
雷伝五郎:おい、まて、竜也だけでなくみゆき姫も訴えているぞ!
Rafael:みゆきファンクラブとサイレントリュウヤが総力を結集するのか?!
雷伝五郎:日本政府を屈服させた2つの組織が、本気でロシアを叩くのか?!
Rafael:核爆弾が暴発する前に国を出る!
Benno:その方が良いかもしれない、今直ぐ国を出ろ!
藤河太郎:竜也とみゆき姫が表だって何かを頼むのは初めてだよな?
Benno:ああ、これがどれだけの力を発揮するのか……
Rafael:できれば核爆弾が暴発する前にタカラブネファミリーに謝ってくれ!
★★★★★★
作者です。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作品フォローや☆評価が作者のモチベーションに繋がります。
作品フォローと☆評価をお願いします。
<(_ _)>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます