Day9 肯定

 なんでもかんでも反論からはいる人っているよね。『でも』とか『ていうか』が口ぐせみたいな人。そのくせ自分のいうことはすべて肯定されないと気がすまないの。

 こっちのいうことに、いちいち『でも』だの『ていうか』だのと返されていると、だんだん話す気がなくなってくる。

 私のまわりにはそんな人ばかりだったから、『へえ〜、そうなんだ』とか『なるほどね〜』とか、なんでもない相づちをうってくれる彼が、ものすごくいい人に思えた。いや、実際いい人なんだけどね。

 それだけよ? ほんとうだってば。

 べつに笑顔にドキドキなんてしないし、ほかの女の子とたのしそうに話してるからってモヤモヤなんてしないし、私だけに笑いかけてほしいなんて思ったこともないから。

 自分の気持ちを認めてあげることが大切? まあ、そうだよね。

 ……私さっきからなにひとりで会話してんだろう。頭おかしい人みたいじゃん。いや、いや、大丈夫。声にはだしてない。はず。たぶん。

 やだなもう。なんでこんなにそわそわするんだろう。仕事帰りにちょっとふたりでご飯たべに行くだけなのに。


 先にエントランスにおりていた彼が振り向く。ああ、やめて。そんなやわらかな笑顔を見せないで。まぶしいから。


 わかった。認める。認めます。降参です。

 私は彼に、恋をしています。


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