少年は居ない

くいな

ミコちゃんへ

しばらくの間、泊まり込みが続くことが決定したので、こうして手紙を書いた次第です。浮気では断じてありません。

文句はにっくきコロナウイルスに言ってくれよ。あいつめ、こっちが汗水たらして働いているっていうのに、ふよふよ飛び回りやがって。お気楽でいいご身分だ。夏で気分が高揚しているか知らないけれど、緩み切ってカラオケに入り浸る彼らも彼らだよ全く。あ、僕に会いたいからって、感染しないでくれよ。とんでもないサプライズだからね。


そろそろ要件に入ろうか。


まず一つ目。今回は、いくら来る人拒まずの総合病院といっても、君からの電話だけはお断りするよ。満室だってのに突如むりやり八人を収容しなくっちゃいけなくなって、深刻に人手が足りなくて電話に出られないから。あと職場の電話に個人的な話をしようとしてくるのは、やっぱりよくないよ。長いし恥ずかしいし。


二つ目。どちらかというとこっちが本題だ。この時期だしもう察しはついているかな。コタロウのことだよ。僕だってコタロウに会いに行きたい。けれど、さすがは過去2、3年を潰したコロナの進化系。休むことも許してくれないこの冷徹っぷり。今年は無理そうだ。コタロウへの手紙と、あいつが好きだったたまごボーロを同封するから、とりあえず先にやっておいてくれないかい? おまえに弟か妹ができるぞ、ってお腹をさすりながら話してやってくれ。僕に対する愚痴はほどほどにね。場所は……さすがに覚えているか。


それじゃ、任せたよ。

                     君を世界でいちばん愛している男より


追伸。お土産はガトー・ド・パムの栗タルトでいいかな?買えるかどうかわからないけれど。


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