第30話 大迷惑

 俺が風呂から出ようとした瞬間、そいつはやって来た。

俺はすぐに湯船に浸かり直し、適当に能力を発動した。

案の定全て効かなかった。


「これは……本格的に除霊をしないとな……なんで入ってきたんだ?!」


「今日からお世話になるから体を洗ってあげようかなって……」


「もう洗ったから!帰れ!殺すぞ!」


「もう死んでる……」


「いいから速く出てけ!」


幽霊は風呂から出ていった。

はぁ……まじで焦った。

あいつ……ヤバいだろ……

俺は幽霊の気配が消えた事を確認した後、風呂から出た。

流石に脱衣所で待ち伏せはされてなかった。


 「怒ってる?」


俺がリビングに行くと幽霊がそんな事を尋ねてきた。


「いや……怒ってないよ……」


正直今すぐあの世に送ってやりたいぐらいキレているがここはぐっと抑えた。


「俺もう寝るわ。」


「じゃあ私も……」


「えっ……お前何処で寝るの?家にはベッド1つしか無いよ。」


「決まってるじゃん!一緒に寝るんだよ。」


「断る。なんで初対面の人外と一緒に寝ないといけないんだ!しかも、お前冷たいし。物理的に。」


「取り憑いてるからある程度の距離に居ないといけないの!」


「だからって一緒に寝る必要ないじゃん!床で寝ろよ!」


「こういう時って普通男子が床で寝るんじゃないの?」


「アニメの見過ぎだろ!いいからお前は床で寝ろ。」


そう言うと幽霊は諦めたみたいで俺はベッドで寝れることになった。

幽霊って全員こんなのなのか?

もしくは俺がハズレの幽霊を引いたのか?

ていうかハズレの幽霊って何だよ!

幽霊が取り憑いてる時点でハズレだろ!


 そんなこんなで俺達は寝室にやって来ていた。


「絶対に入って来るなよ!」


俺は温かい毛布にくるまりながら言った。


「それはふり?」


「違う。ガチだ。もう寝るからな。」


俺は瞼を閉じて意識を手放した。

こうやってすぐに寝れたら良いなと思っていた。

眠れない……

別にコーヒーを飲んだ訳でも無いのに……

理由は明確だった。

誰が幽霊の近くで寝れるというのだろうか……

さっきから冷気を凄く近くで感じる……

近づいてきてる?

いや……あれだけ釘を打ったのだ。流石に入って来ないだろう。

そして、瞬時にフラグを回収する。

俺はいつの間にフラグを回収する能力を手にしていたのだろうか。

幽霊が布団に入って来た。


「冷た!!何入って来てるんだよ!!」


俺は咄嗟にパンチを繰り出した。

しかし、そのパンチは空を切った。すり抜けたのだ。


「起きてたの?!あと殴ってきた?!レディに暴力はダメって習わなかった?」


「お前って女だったの?」


「この下り前にもやったよ。」


「とりあえずベッドから降りろ。……いや、もう俺が床で寝るよ。どうせまた入ってくるんだろ?」


はぁ……結局こうなるのか……まぁ良いや。寝れたら。

俺は若干自暴自棄になりながらも何とか眠りについた。

床は固かった。











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