第19話 幻覚

 勘違いは誰しもが1度は経験したことがあるだろう。僕は1つ大きな勘違いをしていた。

“触られなければ攻撃されない”という勘違いを……


 「!!!!!」


既に攻撃は始まっていた!

僕はまだショッピングモールの中にいる!

僕は幻覚を見せられていた!

だが……一体いつから?

いや、今はそんな事はどうでもいい。

まずは化け物を……はっ!

ここは何処だ?!

僕は何処かのホール内に居た。

コンサートとかで使うホールだ。


「速く、サービスカウンターに向かわなくては……はっ!?何を言っているんだ?!サービスカウンターなんかに行ったら確実に死ぬ!」


狂わされている?

鈴木樺澤だったか、あの男も狂っていた。

つまり、化け物の能力は人に幻覚を見せ、精神状態を不安定にし、狂わせるってことか?だとしたら対抗策がない……厄介だな。


―――ピンポンパン―――


「涼風杜庵サン、速くサービスカウンターまでお越し下さい。」


―――ピンポンパン―――


ホール内にアナウンスが響いた。もう時間がないかもしれない……


「行かなきゃ……」


ホール中央に、化け物が現れた。僕の足は、そちらに向かっている。


「グッ!!おぉぉぉぉぉぉ!」


正気に戻った時には化け物の目の前に居た。

化け物の手がこちらに伸びてくる。


「フフアハハハ!」


僕は狂ったように笑い出した。別に本当に狂ったわけではない。この化け物の対処方法が分かったのだ。


「ふふっ対抗策……意外と簡単に見つかったな……お前は幻覚だ!!」


化け物には本来使えるはずの僕の能力が使えなかった。そこから分かることは1つ、化け物がそこに“存在しない”という事。

ならば対処は簡単……目を閉じれば良いだけだ。

僕は目を閉じた。

耳を澄ませば、静かなホールから多少の物音があるショッピングモールに戻ってきた事が分かった。

僕は目を開けた。

危なかった……もう少しでサービスカウンターに入るところだった。

僕は暫くサービスカウンターの入り口付近で佇んでいた。

これがいけなかった。

僕はすっかり油断していた。

サービスカウンター内から黒い手が伸びてきた。


「何!?こいつは……幻覚じゃない!!」


僕は黒い手に掴まれていた。

そして、サービスカウンター内に引き込まれる。

サービスカウンター内は赤かった。

それを確認したところで僕の意識は落ちた。


 「いくらなんでも遅すぎないか?」

夕食の食材を買いに行ったもう1人の俺が帰ってこない。何かあったのだろうか。まぁ大丈夫だと思うが一応あいつが行ったショッピングモールに行ってみるか……

俺はショッピングモールに向かった。








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