第11話 読殺本

 本には「   のカップが割れる」や「   がこける」などといったところどころ空白のある奇妙な文が書かれていた。


「なんだぁ?この本は?ずっと奇妙な文が続いてるぞ?」


僕は本をパラパラとめくった。そして本の最後のページを少しめくったところで置いてあったコーヒーのカップが床に落ちて割れた。


「あっ!すいません。よく見ていませんでした。」


偶然か?いや、違う!

僕はそんなところにカップを置いていない!

これは!!

僕は急いで本の最初のページを開けた。

やはりだ!さっきまで空白だったところに文字が浮かび上がってきて

「涼風杜庵のカップが割れる」

という文になっている!


「もう1度聞くがお前はこの本を読んでないんだよな……」


「はい。どうしたんですか?早くその本を読ませてくださいよ。」


「ダメだ!この本はヤバい!今すぐ帰ることをおすすめする。これを読むと最悪の場合……死ぬ……」


「え……それってどういう事ですか?」


僕は見てしまった。

さっきチラリと見えてしまったのだ。

本の最後のページに書かれていた“死”という文字を。

このまま順に進んでいけば僕は恐らく死ぬことになるだろう。

この本は読んだら殺される本……つまり人を『読殺』する本だ。

何故この本が神名の家にあったのかはしらないが神名がまだ読んでなくて助かった。神名を強制的に帰らせよう。この少しの“瞬間移動”の能力で。


「それは言えないな……まぁとりあえずさよなら。」


「え!」


神名はまるでそこに存在しなかったかのように消え去った。とりあえず学校まで瞬間移動させた。すぐにはここまで来れないだろう。

さぁ、後はこれをどうするか……

そう思った瞬間、いきなり突風が吹き、僕は転んでしまった。

これも恐らくシナリオ通りだ。

刻々と死が近づいてくる。

後200ページぐらいだろうか……

僕は本を引きちぎろうとしたが本はゴムのようになっていて引きちぎれなかった。

そう簡単にはこの状況は打開できないだろう。

まずは、このカフェから出なくては……

僕はレジまで行き代金を支払おうとするが財布からお金を落としてしまった。

僕は急いで拾おうとするが後ろの人に押されバランスを崩し前に倒れてしまった。

このままではシナリオの沼にはまってしまう。

そう思った僕は急いでお金を拾い上げた。

そうして無事にカフェから出られた僕はとりあえず近くの川に向かうことにした。ゴムみたいといえど所詮は紙だ。水で濡らせばビリビリになるだろう。

僕は道行く人に肩をぶつけられたり足を踏まれたりしながら川に向かった。






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