気まぐれで転生。魔物達と共に安住の地を

@0000t

第1話 気まぐれで転生

 そこは辺境にある洞窟内。

 一人の少年と魔物達が対面していた。


 その少年の名はリュウト。

 黒髪黒目で端正な顔立ちをしている15歳。

 地球から転生してきたため、この世界の人ではない。


 共にいる魔物は5種類。

 ゴブリン、スライム、レッサーウルフ、レッサースモールドラゴン、ボーンバットである。


 リュウトは魔物たちの顔を見て話しかける。


「みんなが俺の仲間になってくれるのか」


 魔物たちは言葉を話すことは出来ないが、言葉は理解出来ていた。

 繋がりのあるリュウトには、同意の気持ちが伝わっている。


「これからよろしくな!」


 リュウトの声に合わせて、魔物達は快く頷いた。



 リュウトがこのような状況になっているのには訳がある。

 それを説明するために、少し時間を戻そう。


・・・


 人の暮らす世界より遥か上の次元に存在しており、神が暮らしている世界。

 俗にいう天界である。


 神が管理しているいくつもの世界が水泡に映されている。

 そのうちの一つの世界を見ている神がいた。


「この世界はもうだめかな・・・」


 その世界はイクリード。

 悪魔が世界の8割を支配しており、人が絶滅するのは時間の問題となっていた。


「まあどうせ滅ぶなら、一つ試してもいいかな」


 神はそういって、一つの魂を呼び出した。

 神の手のひらと同じくらいの大きさであり、神々しく光り輝いている。


 それは日本で普通に暮らしていた高校一年生の少年の魂。

 しかし避けられない運命によって天に召されたのだった。


 確かに少年の魂ではあるが、少年の意思や感情は存在していない。


「今まで他の世界に転生させることなどしてこなかったから、この魂でやってみてもいいだろう」


 転生や転移といった類のものは世界のバランスを大きく変えてしまう可能性がある為、この神はやったことがなかった。

 しかし今回見ていた世界は、すでにバランスが崩壊している。

 だから神の気まぐれで、転生の実験することにしたのだった。


「今のままで転生しても、この世界ではすぐに死んでしまうだろう。だからそれなりの仲間と力を授けてあげるか」


 この考えによって授けられた仲間というのが、5体の魔物だ。


「他は適当に・・・。よし、できた!」


 転生するにあたって不都合となる記憶や考えは改変。

 手続きも済ませた。


「まあ、後はなるようになるだろう。・・・じゃあ、行ってこい」


 こうしてリュウトの魂は、イクリードの映っている水泡へと消えていった。


・・・


 いきなり転生したとなれば混乱するはずだ。

 しかしリュウトに至っては、神に考え方を変えられているため、そうはならなかった。


「俺の力は仲間と一緒に成長するんだよな」


 神はリュウトに仲間だけではなく力も授けていた。

 それは自分の力に、仲間の力が加算されるというものだ。

 攻撃力はゴブリン、防御力はスライム、素早さはレッサーウルフ、知力はレッサースモールドラゴン、精神力はボーンバットがそれぞれリュウトのステータスに追加される。


 攻撃力というは、物理的な力でどれほどの攻撃ができるかというもの。

 防御力は攻撃力の反対で、物理的な攻撃にどれだけ耐えられるかというもの。

 素早さは、どれだけ素早く移動できるのかというもの。

 知力は、どれほど高難易度・高威力の魔法を使えるのかというもの。

 精神力は知力の反対で、どれほどの魔法に耐えられるのかというもの。


「この世界にどんな脅威があるかは分からないけど、何があってもいいように強くなろうな!」


 そんなことを話していると、洞窟の入り口から声が聞こえてきた。

 それは人の会話ではなく魔物の声。


 リュウトは仲間と共に急いで入口へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る