第10話:しゃんとしなさい
「ぱぱー、ままー、どこー、、、え゛ーーん」
「ぁぁ、終わりだぁ、全部、全部なくなっちまったぁ」
「わ、わしの家はどこじゃあー」
逃げ遅れた人々の様子は酷いものであった。それほどまでに災害は、人々の心を落ち着かせる間もなく街を包み込んだのだろう。
「み、みなさん!落ち着いてください!僕たちが安全な所に着くまで必ず守り切りますから!」
アークを解いた僕は、移動中である現在でも落ち着きが一向に現れない団体に対して必死に声をかける。
しかし。
「家に帰りたあああい」
「終わったんだよこの街は・・・」
「わ、わしの家はどこじゃあー」
「みんな此処で死ぬんだぁ」
「くッ・・・。」
一向に改善しない。
前ではアーク、権能を使い安全なルートを探りながらナビゲートするリューネ。その周りでサポートしながら遊撃の役割をこなすニア。殿で無線を使い、対策本部と連絡をとるアトラ隊長。
それぞれ己の役目を果たしているのに、僕だけが何もできていない。
心臓のテンポだけが嫌な加速をする。
戦地で焦りなど禁物、そんなこと分かってる、ちゃんと学んできた。
だけど。
「やばい・・無力だ。」
思わず下を向く。
その時。
バシッ!
僕の背中に衝撃が走り、手の形に熱を感じる。
「しゃんとしなさい!あなたがそんなだと余計に不安を煽るわ!」
さっきまで殿に居たはずのアトラ隊長が僕の後ろまで来ていた。
「セラ、覚えておきなさい。どんな状況でも戦士たるもの最後まで冷静にいること。いい?どんな状況でもよ。」
「はい・・・わかりました!」
言葉を噛みしめる。
アトラ隊長の言う通り、冷静さを忘れてはいけない。
頭を振り、僕は前を視る。
災害により建物等が倒壊しているため、目的地である教会の姿が少しづつ視え始めていた。
礼を言おうと後ろ視たが、アトラ隊長は既に殿に戻っていた。相変わらずの身体能力である。
改めて被災者たちの方へ身体を向ける。
「皆さん!視てください!教会までもうすぐです!さぁ、行きましょう!」
僕はそこから協会に着くまで約10分ほど、絶えることなく声をかけ続けた。
リューネの権能やニアの遊撃のおかげもあり、接敵することなく教会までたどり着くことができた。
被災者たちが協会に入っていったことを確認したのち、僕たち13番隊はアトラ隊長を先頭に教会横に設置された対策本部に入っていった。
「おぅアトラ、南勢部の救助お疲れさまだ。」
「ほんとよガラナさん、後で一服つき合ってもらうから。」
「おうよ、全てが終わったらな。」
総指揮をとるガラナさんが僕たち、というかアトラ隊長のことを肩を叩きながら出迎えた。
「んー、いないなぁ。」
僕は、そんな中で友の姿を探す。
教会に被災者たちを送り届けた時からずっと特徴的な、あの赤い髪を探していた。
12番隊の姿がない。
あいつらに限ってそんなことはないはず。きっと。
手に汗を握る。
対策本部、通信機器を纏める機材たちに囲まれた所に大きなヘッドセットを付けた少女がガラナに声を飛ばす。
「ガラナ総指揮官!報告します!下位12番隊のエギ隊長からの報告です。接敵したため、少し遅れる、負傷者はナシとのことです!サポートのため追加で偵察ドローンを向かわせますか?」
「ミア、報告感謝する。負傷者なしか・・・。一応、三機ほど回してくれ。」
「了解!」
返事が早い。思わずそう思ってしまった。
しかし、そんなことより。
「よかったぁ。」
友の無事に思わず安堵した。
その安堵もつかの間。
「ガラナ総指揮官!大変です!街の最南端にて1級クラスの星壊の獣が7体そして・・・0級クラスが2体出現しました。現場を飛行していたドローンはオールダウン。緊急事態です!」
「な、なにぃ!?ミア、本当か?」
「は、はい・・・」
ヘッドセットのため素顔は良く見えないが先ほど全く異なる声色が緊急性を示していた。
「この街に居るすべての上位戦士に繋げろ・・・。エマージェンシーコールを発動する。・・・俺も出る。」
ガラナは低く、重みを伴った声で非常事態宣言を告げた。
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