とある軍事国家の全世界戦譚禄記

ぬこちゃろ

1-1 残酷な世界



 幸せと平穏、それは突如として喪うものだ。

 仲間と笑いあって、1日1日を楽しく過ごしていた。



 “無敗”。



 その言葉の通り、この“軍事国家”は負けた事もない。

 隣国とは、同盟を組んでは農業や工業なども盛んに交易も繰り返しては国は繁栄し豊かである。



 だが、それは“たった一人の観光客”によって崩されてしまった。

 名も知らない“未知なる国”が、いつの間にか“観光客”を“軍事国家”へと潜らせていたんだ。




 突然の襲撃に陣形を崩されて、あの“無敗”と言われた“軍事国家”は“たったの一週間”で壊滅した。


 戦争が始まって、3日目。



 最後の砦を護るために、【近接部隊の隊長】が残って防衛する事になった。



『大丈夫だ、安心して本部で待ってろ!それと、ーーーー!俺に何かあったら、わりぃーけどさ?俺の後輩の事を頼んだぞ!』



 その言葉を聞いて其処から離脱して5時間後に、“最後の砦の陥落”の報せを悔しそうな表情をした【遊撃部隊の隊長】から聞かされた。


【遊撃部隊の隊長】は、【近接部隊の隊長】の後輩だ。



『あの人を置いてなんて、後輩としては無様な結果を残すのと同じっすよ?それに、………あの人を殺すのはオレなんで、勝手に死なれても困るんですよ』



 そう言った【遊撃部隊の隊長】は、足止めのために中継地へと出向いては敵の足止めを行っていた。

 だが、それも【近接部隊の隊長】の連絡が途切れた3時間後までの事だ。




 彼からの連絡も、そこで途切れた。




 今までにない不安で、心が砕けてしまうんじゃないかと思うような重い感情が押し寄せていた。



 戦争開始して“最後の砦”が陥落した次の日には、市街地での戦闘が激しく始まっていた。

【襲撃部隊の隊長】と【遠距離部隊の隊長】の二人で、門前にて防衛をしていた。



『こっから先へは、行かせないからな!ーーーーは、旦那と共に総統の事を頼んだぜっ!』


『これが終わったら、ーーーーちゃんを誘って久々に海に行きたいわぁ~?どう?もしくは、僕とデートでもしない?』


『おいおい、旦那に殺されるぜ?いいのか?おい?』


『えー?総統に頼んで、一妻多夫制度にしない~?』



 市街地での激しさが門前へと近付く前に、城塞内部へと入っては防衛するための準備をしていた【防衛部隊の隊長】に出会った。



『ーーーー念のために、“隠し通路”へと向かってね?ふふっ、大丈夫っ、皆は必ず護るから?ね?』




ーどうして、こうなった?


ーどうして、こんなにも苦しい?




 もう、負けに近い状態だ。





 それでも、彼らは諦めずに“小さな希望”を逃がすために逃がす時間を稼いでいる。


 “隠し通路”に行けば、【情報管理局の局長】と【潜入調査局の局長】が其々の武器を持って近くにて門番をしていた。



『今は大丈夫やけど、そろそろ来る筈やわ』


『あー、折角ーーーーに抹茶を飲ませようと企んでいたのにさぁ……終わったら、飲んでくれる?』


『ほら、奴さんが来たみたいやわ!ーーーー、ボサッとしてないで行け!』



 二人に急かされながらも、他のメンバー登録共に隠し通路の中へと入ったのだが、別のルートから敵の軍人が入って来ていた。


 自分達を逃がすために、【外交官】と【軍師】がそこで時間を稼ぐために持っていた武器やアーティファクトを手にしていた。



『戦いは苦手なんだけど、大事な娘や総統を逃がせる時間を少しでも作れるなら頑張る』


『そうですね、女性を逃がすのも総統も逃がすのも何よりも大切な事ですからね』


『ほら、そんな顔をしたら駄目……大丈夫だから、な?』




ーどうして、戦わせてくれない?



ーどうして、一緒に逃げない?




 隠し通路から城塞を脱出したのだが、敵の軍人に包囲されていて表に出れなくなってしまっていた。



 こうなったら、降参するしかないのだろうか。



 だが、【書記長】の赤黒色のマフラーが視界を覆っていて【暗殺部隊の隊長】と【総統閣下】に手を掴まれて走り出していた。



『さっさと、遠くに行け!此所は、俺が殿(しんがり)を受け持つ!!ーーーー、絶対に生きろよ』




ーあぁ、どうして。


ーどうして、行ってしまうの。



ー共に、居させてくれないの。




 軍事国家から離れた渓谷へと逃げ込み、崖ご近い所で敵の軍人に囲まれてしまい逃げ場を失っていた。

 だが、【総統閣下】は深刻そうな表情で何かを【暗殺部隊の隊長】に話をしていた。



『ーーーー、どうか無事にな』


『すぐに、迎えに行くで?だから、良い子で待っておるんやで?……エエな?ーーーー』



【暗殺部隊の隊長】は安心させるように微笑んでから、ーーーーの頭を優しく撫でてからーーーーの事を渓谷の崖から突き落としては川へと落とした。


 渓谷から離されてから、数日が経った頃に軍事国家へとどうにか戻ってきて大広場へと来れば、其処には見たくもないものが見えていた。




皆は、無事だった。


でも、拘束されていた。




『これより、軍事国家の幹部おろか総統の公開処刑を始めるっ!!!』




ーあぁ、やめて。




【近接部隊の隊長】


【襲撃部隊の隊長】


【遊撃部隊の隊長】




ーあぁ、お願いだからっ。




【遠距離部隊の隊長】


【防衛部隊の隊長】




ーあぁ、カミサマは居ないんだ。


ーだから、こんなものを見せる。




【情報管理局の局長】


【潜入調査局の局長】




ーどうして。


ーどうしてっ。




【外交官】


【軍師】


【書記長】




ーあぁ、やめ……。



ーあぁ、お願いっ。




【総統閣下】




 最後として、この国の最大の戦力とも言われていた【暗殺部隊の隊長】が処刑される時だった。


【暗殺部隊の隊長】は、抵抗しては数人の敵の軍人の首を切り落としていた時に、こちらに気付いては優しく何処か悲痛な表情を浮かべては周りに聞こえるか分からない声で呟いていたがーーーーには何を言われたのかわかっていた。



【愛しているで、ーーーー】


【ずっと、や】




 その言葉を紡いだ直ぐに、【暗殺部隊の隊長】はその場で乱雑に首を切り落とされていた。






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