配信切り忘れたら人外バレしました~一夜で顔も彼女も人外もバレた最強存在~
負雷パン
第1回 顔バレ、彼女バレ、人外バレ
今、動画配信サービス『ヨウツーブ』にて。密かに人気を高めつつある者がいた。
その名も「一般犯人男性」
料理動画をメインとする彼だが料理の腕は平凡の域を出ず、配信環境も良好とは言い難い。だと言うのに人気が伸びている。
その理由は独特な配信スタイルにある。
誘拐犯のようなボイチェンを使った独特な料理解説を行い「肉に放火していく」や「誘拐してきた大蒜を切り付けていく」などまるで犯罪行為かのように調理過程を説明するスタイル。それが人気の理由なのだ。
現在彼はヨウツブ登録者30万人、トウィッターフォロワー20万人。まさに伸び期である。
他にもメインの料理動画とは別にサブ垢の「げーみんぐ犯人男性」では動画だけでなく配信もしておりチャンネル登録者10万人を超えている。配信頻度は週2、月水だ。
この配信でも犯人ロールプレイは崩さず続けているが、お酒がとても好きらしく配信ではビール缶が5本開けられることもしばしば。
そして今日は水曜日、なので「げーみんぐ犯人男性」の方では配信をしている。
そのゲーム配信だが必ず22時には終わる。
今は21時57分、そろそろ終わりの挨拶の頃だ。
『では貴様ら、今日の配信はここまでだ。次の事件までせいぜい震えて待っていろ、ふふふふ、ははははは』
いつも通りの決め台詞。これで配信は終わり。
のはずなのだが今日は一向に配信が終わらない。
「「ブツッ」っと電源切れたかな?まえ付けっぱなしにしてたらすんごい怒ってたもんなー」
そしていきなり聞こえて来た少女の声。恐らく中学生ほどの、そんな若さの声だ。
こんな状況にヨウツーブに娯楽を貪りに来ている人間どもが沸かない訳がなく。
チャット欄はまさにお祭り状態であった。
:切り忘れ…てる?
:おい、オッサンしっかりしろよ
:は?
:え、
:草
:かのじょ?リアコだったのに(泣)
:女!?
:マジか…
同接は300人と少し。そこまでコメントの回転は早くない。筈だが今は有名配信者も顔負けの速度でコメントが流れていた。
そんなことはつゆも知らない犯人男性。呑気に鼻歌を歌いながらドタドタ何処かへ移動している。
少しして、ガチャっと玄関のドアが開く音がした。
「おかえりなさーい、
ドアを開け、霧人なる人物を出迎える少女(推定犯人男性)。
因みに霧人という名前からチャット欄では彼氏登場か!?となっていた。
だが少女に出迎えられた人物は。
「ただいま。今日は美味しそうな鰤があったから照り焼きと後は味噌汁にしようかな」
特徴的なハスキーボイスの、女性だった。
いきなり現れた女性にチャット欄はまたしても混乱を極めた。
:うそだろ…
:マジでこの声の人が犯人なん!?
:え、だれ
:お姉さん?
:家族か?
:切り忘れてますよ!気づいて〜
:いや、家族の距離感じゃない。彼女!?
「おぉー、いいねー。そだ、今から」
何か言おう足していた少女、しかしそれは霧人の声によって遮られる。
「あぁー!!ちょっとシュム!またパソコンの電源つけっぱなしにしてる!」
気づいたのだ。霧人はパソコンの電源が付いているということに。運がいいのか悪いのか配信の切り忘れは依然として誰も気づいていないが。
「うそー。あ、ほんとだ」
ちらっと後ろを確認してどうでもいい様にぼそっと呟くシュム。
対照的に霧人は結構怒っている。
「前も言ったよね!?こまめに節電してってさ!ここの家賃も光熱費も食費も私が全額負担してるのにシュムは容赦なく無駄遣いするよね!先月の光熱費知ってるのかな?4万だよ!」
今まで溜め込んでいたものを吐き出すかの様に捲し立てる霧人。だいぶ苦労人の気配が感じられた。
「ご、こめんって。今度から気をつけるからさー、消してくるよー」
流石に申し訳なくなったのかパソコンの方へゆっくりとだが向かってくるシュム。
チャット欄の反応はまさに二分化していた。
:気づいちゃう?
:はぁ解散解散
:良かった大事にならなくて
:ほっ
:うわぁ気づかないで
:つまんな
:マジで心配した
そしてパソコンの電源を切ろうとして遂に気づく。
切り忘れに。
「…うそー、、、…ヤバいっ!!え、どうしよ!ええ、え、えっと、取り敢えず切らなきゃ!!」
シュムは滅茶苦茶にテンパっていた。今までのロールプレイが台無しになるレベルの失態をしたのだ。
それにこれで視聴者が離れて仕舞えば自由に使えるお金がなくなる!という切実な問題もあった。光熱費を負担してもらい家事までしてもらっているので流石にお小遣いは無しなのだ。
がしかし。焦っていては普段できることも出来ないというもので。
「ええ、あぁ、もうっ。なんでこんな時に限って変な通知が!あ、やば違うとこおした!やばいやばい、あぁ、そこじゃな!」
誤クリックに次ぐ誤クリック。
終には致命的なミスまでしてしまう。
バンっと大きく配信画面に映し出されるインカメ画面。
そこに映し出されるはまだ中学生ほどのとても可愛らしい少女の顔。
頭から生える山羊のツノに明らかに人の物ではない瞳孔。そして揺れ動く黒い尻尾。
「あっ…」
さらに加速するチャット欄。
:顔バレキタァ!
:こすぷれ!?
:やらせかよ
:明らかに生えてますよね?
:これまじ?
:合成とかコスプレやろ?
:尻尾どうなってんねん
:めっちゃかわいい
:は!?未成年飲酒ですか?
:好きです
:え、ガチで生えてね?
「う、うぁ。そ、そうだ!貴様ら今日はドッキリ配信ぁ!」
どうにか誤魔化そうとするシュム。
:噛んだw
:うそくせぇ
:めっちゃ棒やん
:これガチ人外?
:かわよ
:いや冒険者ならスキルかも
:無理があるw
:犯人男性、お前女だったのか…
:↑スキルに姿形が変わるものは無い
:ドッキリなわけない
明らかに信じていないチャット欄。
それのせいでさらにテンパるシュム、完全な悪循環が完成していた。
「わ、私は犯人男性に雇われた女優だ!こらもコスプレだぞ、ほら!ほら!」
画面に向かって角の付け根を見せどうにか誤魔化せないかと頑張るシュム。
が何処からどう見ても頭から角は生えていた。
チャット欄の反応もお察しである。
:この焦り具合はガチ
:今日だけで色々バレてて草
:おぢさんがどうにかしてあげるよぉ
:めっちゃ肌から生えてる…
:雇われたならさっきまで配信してた犯人男性が居ないのはおかしいのでは?ボブは訝しんだ
:人外バレかぁ草
:今度から顔出し配信してほしい
:かあいいねぇぶん殴りたい
:ボブ構文草
「あ、あぁ、あああ」
何を言っても悪化していく現状。チャット欄ではもはやシュムが人外であることは確定した流れになっている。
もうどうしようもなくなってシュムは限界を迎えた。
「終わります!また今度の事件で!さらば!!」
強!制!切!断!
しかし悲しいかな時すでに遅しである。
配信最後は同接が3000にまで伸び、トウィッターでは一般犯人外という単語がトレンドに入っていた。
一般犯人男性ことシュム・ニグラウは。
今日ここにて完全に顔バレ、彼女バレ、人外バレを果たすこととなったのである。
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