ツッコミとボケで無双する異世界転移ってなんやねん

さながらサラダバー

第1話 魔法陣にツッコミ

「はーい、みなさーん!席についてくーださーい」


朝のHRにて、教室のドアを開けながら小学生くらいかと思うくらいの少女が、舌足らずな声で呼びかけて、教卓に設置されている椅子に上る。そうすることでようやく顔が見えるようになり、高校に迷い込んだ小学生かと思われそうだが、立派な先生なのである。

先ほどまで少し騒がしかった教室は統率が取れた動きで、静まりクラスメイト達が席に着く。


「それでは、出席を取ります」


先生がそういった瞬間、教室の床が突如光りだし、突然の事に教室中がまたざわつきだす。


「教室の床に魔法陣が!?」

「これは、まさか、今流行りのやつじゃ!」

「えっ、これどうするの?どうすればいいの!?」


皆がそう叫びながら、教室から出ようとしたり、廊下の窓から脱出しようとしたりするが、ドアは開かず、窓は割れず、そのまま、目が開けられない程のまばゆい光が教室中を照らし尽くす。

ただ一人、教室に出来た円状の魔法陣から外れた隅の位置に座っていた。俺以外は。


「いや、俺入ってないねんけどー!?」


叫ぶが遅く、光が落ち着いたころ、俺一人だけが教室に取り残されている。


「えー、なにー!? 俺ただ、眩しくピカーって閃光食らっただけ?」


そう呟いた瞬間、俺の足元にもまばゆい光が生まれる。


「なんやねん、ちゃんとくるやん。こういう主人公っぽく取り残されてからの、神様に会って残り物の雑魚スキルもらいつつも、残り物には福があるって感じで、チートするわけやな!」


自分を納得させつつ、今後の展開を予想しながら口にだし、下を向くとやはり先ほどと同じような魔法陣が足元に描かれている。正確には、右足の大きさのみに描かれている。


「なんか大きさ違くない? このままやと、片足だけ異世界転生するみたいになりそうやねんけど。聞いたことある? 片足だけ異世界転生て、あるわけないやん。誰がみるんそんなん。絶対王道パターンの姫様助けたり、奴隷の子救出したりで恋愛に発展するとかならへんぞ。おもんないやろそんなもん」


もはや誰に言っているのか、なんなら魔法陣にツッコんでいるのか。落ち着いているように見えてクラスメイトが居なくなり、混乱しているためか口が勝手に回る。

すると、俺の言葉に反応してか、魔法陣が大きく広がっていく。


「そうそう、片足だけおさらばしたら、俺も今後の生活困るし、感覚とか共有しているのかとか、いきなり切断になって出血多量するんじゃないかとか心配するから。

...て、どんだけ大きくなんねん! 学校の敷地内全部くらいになっとるやないか!!」


喋り続けている間も大きくなっていた魔法陣は、ついには教室を超え、窓から外を見ると校門まで達していた。この状態で、転生したらどうなってしまうのか見当もつかない。

そう思った瞬間に魔法陣は、ぴゅーんというような軽快な効果音がしそうな感じに、跳ねるようにして飛んでいく。


「ってどこいくねーん!!!」


ツッコミながら窓から魔法陣を目で追っていると、あることに気づく。


「鳥が、止まってる? いや、雲の動きもいつもゆっくりとはいえ、全然動いているように見えないぞ」


世界が止まっているかもしれないと言うことに気づきかけるが、またもや、魔法陣が光る。


「え、ちょ、眩しい。何々? 顔面に魔法陣出来た?」


そのぐらいの目が開けづらい眩さがあるが、その光が、点滅し、複数方向から当てられる。そうこれは、まるで———。


「えー、この度は。わたしのクラスが。えー、異世界転生に巻き込まれているのに、わたしだけ取り残されるという事態に陥り、誠に申し訳ございません。って誰に謝罪会見させられてるん?! もうええわ、どうもありがとうございました」


フラッシュとシャッター音が聞こえそうな状況に思わずノリツッコミし、そろそろこの転生魔法陣ボケにもツッコミが追い付かなくなったので、無理やり終わらせるために、王道の締めで頭を下げる。すると、ちょうどいい大きさで魔法陣が足元に展開され、光も普通に照らしてくれる上に、そのまま光に包まれる。


「そうそう、このぐらいの大きさにこのぐらいの光加減でちょうどええねん、って結局転生されるんかい!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る