悪役令嬢な私に興味なんて無いはずの王弟殿下が何故か溺愛してきて困ってます。〜えっちな恋愛小説作家なのは秘密です〜
pasuta
第1話-最後の日
残業が終わり、買い物をして家に帰る。
結婚して、子供もできずに気付けば5年が過ぎた。
夫は連日飲み会ばかり。
私はいつも家で1人。
1人で過ごすには広すぎる部屋、1人分の夕食を作って1人で食べて片付けて、お風呂に入って寝る準備…。
こんな寂しい生活もう終わりにしてしまえばいいのだが、夫はそうは思って居ないらしい。
ほとんど家に居ない夫。放っておかれる事にも慣れてしまった。
そして最近では孤独こそが至高!と考えるようになっていた。
ポジティブに生きでこそ人生を楽しめるというものだ。
こんなに自由な時間があるのだ。
この時間を活かさない手は無いだろう。夫のチクチクと刺さる嫌味を聞いて過ごすよりもよっぽどストレスも掛からない。
会社の同僚に話したら「大丈夫?」と心配されるのだが、私はどうして心配されるのかサッパリ分からない。
風呂上がりのビールと肴を手に、私のゴールデンタイムは始まるのだ。
「仕事は終わって、旦那も居なくて、部屋も綺麗だし、家事も無いし!幸せだわぁ。さぁて。」
ヘッドホンをガッポリと装着し、大音量でBGMを再生する。机に向かうとノートパソコンを開き、書きかけの小説をまずはザッと読んでみる。
「昨日いいとこまで書いたのよねぇ……もういいでしょ!!結構焦らしたわよ……ふふふ。あぁ可愛いわぁ。いいわぁ。ほんと素敵……ッ」
ブツブツと小声で独り言を言い、カタカタカタカタとキーボードを叩く音が部屋にこだまする。この時間が堪らなく幸せなのだ。
集中すると周りが見えなくなるのは悪い癖。
…ギィィィ…ガチャン…
玄関のドアが開いて閉まる音が、BGMの合間に聞こえた気がした。
しかしお構いなしに溢れる文字を出力していく。
今書いてるのはカフェ店員と社長のラブストーリーだ。男性カフェ店員と、そこに通う女社長があれよあれよと恋仲になり、焦らし焦らされて今まさにベッドインした場面だ。
昨日は書けなかったこのシーンを今日こそは書き上げよう!楽しみだ。
ギシ…ギシ…
まただ、誰かが家にいる気配。夫はもう帰ってきたのだろうか。せっかくこれからだって時に。構わずパソコンに向かっていたら、真後ろに気配が来た。
「おかえり、今日は早かったわ……ね。」
ヘッドホンを外し振り返ると、そこには心底怯えた様子の男が包丁を振り翳していた。
「お…おまえが居るから……悪いんだ……ッお前が!!」
男は引き攣った顔で叫ぶようにそう言うと、包丁を一気に振り下ろした。
「――ッ!?!」
スローモーションのように、振り下ろされる包丁を凝視してそして息を飲むと、視界は真っ暗になりそのまま意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます