五話目 姫様は習い事が嫌い

姫「はぁ、退屈じゃの」


爺「姫様、今は華のお時間です」


姫「爺の秘蔵の本の中に、尻にぶっ刺した絵がこれでもかと描かれていたのぅ」


爺「それは、お忘れ下さい姫」


姫「へい、尻。今日の夕餉は何がでるのかの?」


影長「今日は、魚の煮つけにございます(低音イケボ」


爺「影長の芸が細かい!!」


姫「へい、尻。今日の爺の褌の色は?」


爺「そんなっ、ワシのプライバシー!」


影長「今日は真っ赤の、赤褌でございます(やや高めの美少女声」


姫「流石、影長は芸が細かいの~」


影長「恐悦至極」


爺「いつも、いつも…。そんなに迅速ならもっと城下を調べて参れ」


姫「じい、それは出来ぬ相談じゃ」


爺「何故でございます?これだけ打てば響く解答が叶う調査等中々出来る事ではござらんぞ」


影長「我らの主は姫様です、姫様の命も受けずに勝手に職場放棄等出来るはずがなかろう」


爺「真面目っ!そういうとこだけ凄く真面目!!」


姫「そういえば、華道は凄く退屈じゃ。影長、何か無いかの?」


影長「それならば、これはどうでしょう?」


二本の薬瓶を取り出して、姫の前に置いた。


爺「そんな怪しげな薬品を、姫の前に置くではない物騒な」


姫「影長、これはそんなに面白いのか?」


影長「はい、必ずやご満足頂けるものと断言致します」


赤と黒の液体の入ったツボを、畳に置く影長。


影長「まず、この赤い薬は毛生え薬です。一塗りでどんな禿でもふっさふさでございます」


爺「凄いではないか!、では早速」


一瞬でふさふさの黒髪が生えて、ご丁寧にマゲの形に自動で整う。


姫「効能は確かな様じゃの、さて影長これだけだとわらわは楽しくないぞ」


影長「急いてはなりませぬぞ姫様、そこでこの黒い液体でございます」


姫「ほうほう、してその効果は?」


影長「滅毛剤です、指で塗った所の毛根が死滅して二度と生えない様にする薬です」


姫「大儀である!流石は影長じゃ、わらわの好みを心得ておるの」


その台詞に首をぐるりとやって、焦りだす爺や。


影長「例えば腕や足など毛深い所に指でバカと大きめに黒い薬で書く様に塗ります。それで一生そこから毛が生えないのでくっきりはっきり残りますぞ」


姫「最高かっ!、影長。よくぞ持ってまいった!!」


爺「なんてものを、毛生え薬はその為の布石だと」


影長&姫「「イェスザッツライト☆」」


姫がにっこり両手を出せば、影長は膝をついて姫の両手を握りしめて前後ろにブランコの様に揺らしながら二人で喜びを表現する。


爺「廃棄せよ!、この黒い液体は御禁制にしてくれる」


影長「それはできませんぞ、家老殿。もう殿に許可をもらって、越後屋で販売して貰っていますからな」


爺「仕事が早い!」


姫「よくやったぞ、褒めてつかわす」


きりりと、頭を下げる影長。


影長「これで、色んな所に華を描いては如何でしょうか姫」


姫「最高か!、それは名案じゃ!」


爺「最低か!」


姫「もう、出来たぞ」


書道の筆をいつの間にか左手に持って、爺が良く見れば腕と頭に既にはなが描かれていた。華ではなく、豚の鼻だったが実に良く描けていた。


影長「お上手です、姫様」


姫「うむ、くるしゅうない!」


爺「いつの間にっ?、姫様も仕事が早い!」


姫「何、わらわは普段は何もしたくないがこういうことだけは神速で事を成すのじゃ。」


影長「それでこそ、我が主。やはり、出来る主に仕える事が忍びの誉れ」


拍手しながら、胸をはる姫様を影長がよいしょする。


爺「貴様ら!」


姫「主家の一人娘に、貴様はなかろうが恥をしれ」


爺「なんで、そんな時だけ正論!」


影長「姫、ライスをお持ちしました。夕餉も、食べれるよう少量です」


姫「爺の不幸で、飯がウマい」

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