三話目 姫様は御前試合を見学する
姫「今日は、御前試合かの。影長、誰が勝つと思うかのぅ…」
影長「あの、二刀流の男と、そこのご老体はかなりのものかと」
姫「お主でも危ういかの?」
影長「まさか、ご要望とあれば全員まとめて五秒で再起不能にしてご覧にいれます」
※御前試合に来た全員を指さしながら、影長が歯を光らせて笑う。
姫「はぁ、それでは全然弱いではないか」
影長「影達相手ならば、あの二人だけは十秒は持つと思われますが」
姫「わらわが、菓子を食べ終わるまでに終わってしまうではないか」
影長「でしたら、ひたすら避ける事に徹し逃げない様に適度に攻撃をくわえながら夕刻まで持たせましょうか。姫様に、長く楽しんで頂けると思いますが」
姫「あぁ、父上はどちらかというと御前試合は面接みたいなものだと言う事で母上公認で楽しめると思って楽しみにしておられるからのぅ」
影長「この城が敵に落とされる等という事は、あの奥方がいる限り天地がひっくり返ってもあり得ぬ事でございますからな」
姫「確か、お主の師匠じゃったかの?わらわの母上は」
影長「はい、何でも愛しのダーリンを見つけたから影なんかやってられませんわとか言って」
姫「して、どうじゃもしもわらわの母上と戦ったらお主はどうなる?」
影長「指一本で、二秒で首ちょんぱの未来が見えますね」
自分の首をとんとんとやる仕草で苦笑しながら、影長が言った。
姫「それにしても、試し切りの丸太を買う金子も無いからと言ってあれは酷いのぅ」
姫が御前試合の前の予選の丸太をみれば、家老が丸太に括りつけられていた。
そこへ、とてとてと姫があるいていく。
参加者がほっこりしているなか、家老の袴を手に取ると鼻をかんだ。
姫「爺、いつも助かる」
爺「おぃぃぃぃ、今日洗濯したばかりのワシの袴で鼻をかむんじゃない」
姫「大儀であるぞ、爺きちゃないからちゃんと後で洗うのじゃぞ」
爺「おめーが今汚したんだろうが、全くっ…」
姫「あっ、参加者のみんなは腰から上を狙ってたも」
参加者一同は思った、不憫だ…と。
そこで影長が、すすっと参加者に耳打ちした。
影長「チャンスは一人一撃、だが骨一本につき小判一枚参加賞で姫がつけて下さるそうだ(ボソ」
参加者一同は思った、殺るぞ……と。
爺「なんか、ものすごい殺気放ってるんですが?!」
姫「こんな、貧乏城に士官にくる浪人なんてみんな食い詰めモノだからの。だから少しヤル気がでる素敵な言葉をかけてあげただけぞよ」
爺「ヤル気の字が、違うと思うのですが?!」
姫「お主が自分で志願したんじゃろが、若者の攻撃なぞ昔鍛えたワシの鋼の肉体にはききゃせんわいと父上に大見栄きったではないか」
爺「何故、それを!」
後ろを見れば、影達が横断幕で(私達が調べました)と書いたのをぶら下げていた。
姫「影長!例のあれを持ってまいれ」
消えるように影長が消えた後、その身のこなしに一同がざわついている中直ぐに戻ってきた。
影長「見よっ!姫の個人的な蓄えから貴様らがやり遂げた時に支払う黄金を!!」
ばさりと紫の布をとると、そこには眩い光を放つ山吹色のお菓子が米俵の様に積み上げられていた。
太陽に当てられて、きらりと光る黄金の山。
一同の唾をごくりと飲み込む音が、生々しく聞こえた。
殿と爺もあまりの光景に、唾を飲み込んで目ん玉ひん剥いた。
爺「あんな黄金、この障子も破れたままの貧乏城の何処に隠してたんでござるか!?」
姫「隠してたのではないぞ爺、あれは城ではなく越後屋に預けてあるぶんじゃ。あれと同じものが蔵単位でおいてあるのじゃ」
爺「どうりで、姫様と奥方様だけなんかいい着物着てると思いましたよ!」
姫「皆の衆どうじゃ、ヤル気は出たか?。何物と言わず武士は武芸に秀でてこそ。それを、自らを鋼の肉体等と自惚れにも程がある。人は人、老いもすれば風邪も引く。武士は強くあってこそじゃ、身も心ものぅ。そこに、見栄はいらんのじゃ」
爺「姫様がそれをおっしゃいますかぁ?!(半ギレ」
影長「ささ、これをどうぞ」
全員に木刀を配る影長、ドン引きする家来集。
影達が全員で良い笑顔で、親指を真っすぐ立ててグットラックと合唱した。
姫「父上~、この痴れ者には仕置きが必要だと思うのじゃが」
殿「ワシに見栄をきったのじゃから、いけるよな?」
爺「勘弁して下され~」
姫「さぁ、レッツゴ!(輝く笑顔」
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