第5話 ブレス


 兎丸の暗殺術を舐めていた。

 今どこにいるかもわからないがドサドサと獲物が倒れていく。

「もう強いのわかったから出ておいでー!」

「キュッ!」

「おわっ!兎丸凄いな!」

「キュッ!」

「ここはいい狩場だって?そうかもな、兎丸に勝てるのは熊さんくらいかもな」

「キュッ!!」

「熊にも勝てるって?分かったよ」

「キュッキュ」

「見てろだって?だめだよ!もう帰るヨォ」

 兎丸は行ってしまった。


 数十分待ったが兎丸が帰って来ない。

 心配になって兎丸を呼び続けるが出て来るのはモンスターばかり。

「キュッキュ」

「兎丸!ってデカ!」

 体長五メートルはありそうなクマのモンスターを倒したらしい兎丸は満身創痍だった。

「あんまり無理すんなよ!兎丸!」

「キュー」

 兎丸と抱きしめあって、中級ポーションを使ってやる。そしてクマをカード化する。

「よし。帰ろう」

「キュッ」

 二人で初の森は金貨になった。クマが金貨に化けたのだった。


 俺が剣士、兎丸が斥候、あとは魔術師とタンクが欲しいところだな。とすればタンクはあのクマがいいか?うーん、悩みどころだな。

 もうこっちに来てから一ヶ月近く経つ、日本に帰るのは諦めた、と言うかそんなカードないだろ?どうやったら帰れるかなんかわかんねぇよ。


「はぁ、まぁ、今のとこ不自由はないし、レベルが上がるのを待つだけだな」

 カードホルダーレベル2になれば何か変わるかもしれない。


 よし!狩りに行くか!

「兎丸!今度はクマを仲間にするぞ」

「キュッ」

「タンク要員だな」

 また森に入ると兎丸はいなくなる。

 俺は俺でフォレストウルフなんかを相手にしている。剣術を覚えた俺もなんとか戦えるのだ。


 さて、熊はどこにいるかな?

 倒したフォレストウルフをカード化して、兎丸を探す。奥から戦っている音がするので走って行ってみると兎丸じゃなくてテルハさんだった。

「加勢します!」

「助かる!ってユートか!」

 二又の蛇と戦っていたので片方を受け待つ。

 毒液を吐いて来るので避けると今度は尻尾の攻撃を受け流そうとして弾かれ木にぶつかる。

「ユート!」

「大丈夫です、テルハさんは正面を!」

「わかった!」

 テルハさんさえ苦戦してるんだ。

「おらっ!」蛇の右目を掠ると嫌がって後ろに下がる。

「いまだ!」

「うおぉぉ!」

 テルハさんと二人で蛇の首を落として戦いは終わった。

「助かったよ」

「いえ、ちょうどいただけですから」

「分前は半分でいいな?」

「え?いらないですよ?」

「半分でいいな?」

「はい、じゃあ、俺が運びますよ」

 カード化すると、

「それがユートのユニークか」

「そうです。カード化ですね」

 その時ちょうど兎丸が帰ってきた。

「兎丸!ちょうど良かったって。そいつ生きてんのか?」

「キュッ」

「カード化」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 キラーベア レベル10

HP700

 森に住む番人。その爪は鉄をも切り裂く。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 おぉ、タンク向きのモンスターだな!

「それはテイムか?」

「そんな感じです」

「そうか、そのウサギも強そうだ」

「そうなんですよ。俺より強いんじゃないかって」

 実際俺より強いだろうな。

「そうか。お前の強さが見れた気がしたよ」

 テルハさんに褒められた。すげー嬉しい。

「あはは、兎丸のですよ」

「いや、お前も十分強いよ」


 双頭の蛇は金貨にして二十枚。一人で十枚づつだった。最近は金に困ることがないな。

「またなユート」

「はい!またよろしくお願いします」

 テルハさんはフフッと笑うとギルドから出ていった。

「テルハと何かあったのか?機嫌が良さそうじゃったけど」

「共闘しただけですよ」

「そうか。あのテルハとのぉ」

 おばちゃんも笑う。

  

 晩飯を食いながら熊の名前を考えてるとドアが開いて、

「モンスターの氾濫だ!戦える奴はきてくれ!」

「分かったすぐ行く!」

 代金を払ってすぐに門に向かう。

 門にはもう沢山の冒険者や騎士がいて、向こう側がよく見えないが振動が凄い。

「兎丸!半殺しで連れて来れる奴は連れてきてくれ!」

「キュッ!」

 今は夜、ナイトホーンラビットの本領発揮だ。

 俺の前に積み上がっていくモンスターを片っ端からカード化していく。

「お前何やってんだ?」

「うるさい!邪魔しないでくれ」

「なんだと!」

 せっかちな男が殴りかかろうとすると、

「うるさいと言っている!」

「テルハさん?」

 テルハさんがそいつを蹴り飛ばした。

「手伝えることはあるか?」

「いえ。モンスターがもうすぐそこにきているので」

「わかった」

 テルハさんは最前線へと走って行った。

 俺は兎丸のもってくるモンスターをカード化するので精一杯だ、早くしないと!

『カードホルダーがレベル2になりました。カードの範囲が広がります』

 よし!これで一括で行けるか?

「カード化」

 今戦っている瀕死のモンスターもカード化できた。

「カード召喚」

 前線に今まで敵だったモンスターが立ち塞がり、モンスターを蹴散らしていく。

 キラーベアも、前線で活躍している。

 もう一度カード化!カード召喚!

 こっちが盛り返してきた!

「行けるぞ!こっちのモンスターは仲間だ!」 

 カード化!カード召喚!

「もうこっちの方が多いぞ!いけぇ!」

 だが、そうも言ってられなかった。最後に来たのは地龍だったのだ!

 カード化!カード召喚!今回でほぼモンスター全部がこちら側になったが、地龍が蹴散らしていく!

「兎丸!背中に一枚違う鱗があるはずだ!それを攻撃してくれ!」

「キュッ」

「よーし、俺もいくぞ!」

 デカいモンスターが地龍を食い止めている間に冒険者が攻撃を仕掛けている!

「おらぁ!」「こっちだ!」「ファイアーボール」

 その中で一番危険な場所にいたのはテルハさんだった。

 地龍の顔面を斬りつけ!突き!払う!

「テルハさん!そこは危ないですよ!」

 誰かが言っても止まらない。


『ギャオォォォォォ』

「お!兎丸がやったか!」 

 ドラゴンなら逆鱗があるはずだ!

 暴れる地龍になんとか喰らいつくモンスター達!冒険者はさすがに離れている。


「ヤアァァァ!!」

「テルハさん!もう戻って!」

 バリスタの登場だった。ようやくバリスタが発射され地龍にブッ刺さる。


『ギャオォォォォォ』

 地龍が最後の一撃を放とうと口からブレスの光が見える。


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