女性異世界転生者、ステータス最弱級の少女冒険者に転生する。大好きな天才少女魔法剣士を救うためなら魔王だって倒せます。どんなに無能な冒険者でも、アイテムボックスと魔法具( 個数限定 )なら使えるのです。

INC

第1話 ステータス最弱級!!美少女無能冒険者の異世界転生

1 8☆2

放課後の夜の帰り道、私の親友が殺された。

お昼休みのお弁当、遊園地、修学旅行ー

 高校生だった私には、いつも隣に大好きな、大切な親友がいた。

 その親友が通り魔にメッタ刺しにされて殺された。

   そして、彼女を救おうとした私も、その鬼畜に刺されて殺される。

  生暖かい血の感触ー

  私の血と、そして、命よりも大切な親友の血が絵の具のように混じり合う。

死の間際、薄れゆく意識の中で私は消えてゆく大切な親友の姿をこの目に見た。


   

 目覚めると、そこは美しい樹木やお花畑に囲まれた庭園だった。

 そこにある白いイスの上に私は座っている。

 目の前には薔薇のように美しい女性がテーブルを挟んで座っている。     

  滑らかな手付きで優雅に紅茶を飲んでいる。

 私はここがどこなのか、何故か知っていた。  


「おはよう。気がついたようね。

ここは神の国で私は秩序の女神。

 あなたのように、前の世界で何かの強い未練があって死んだ人間は、神のご加護を受けてもう1度別の世界で、別の人間としてやり直すチャンスが与えられているの。

 私はそのためのサポートをしているわ」

秩序の女神が説明した。

「そう、やっぱり私は死んだのね。」

私は小さく呟いた。

 「異世界転生と、その異世界の事、その他諸々の事については、あなたの記憶に書き込ませてもらいました。  

 だから詳細な説明については、省略させてもらいます。」

 女神がそう言った。

 そうか、だから私は、神の国の事も、この女性、女神の事も知っていたんだ。

 そして私自身が死んだことも。

「それでは、早速ですけど、本題に移ります。あなたには、2つの特典が与えられます。


 1つは、前世での記憶。その記憶は、前世でやり残した願いを忘れないためです。

 そしてもう1つは、スキルです。

過酷な世界で弱い人間に転生するあなたには、特例で、どれか1つだけスキルが与えられます。」

「 弱い人間?」

女神はうなずいた。

「あなたの記憶にも書き込んでありますが、異世界転生者は、その転生先とその転生先の人間の肉体を自分では選べません。

 時と運によりランダムに選ばれます。

 酷い場合には、凶悪な魔物のはびこる世界で何の能力も持たずに生まれてくる場合があります。  

 そんな人の為の救済措置として、スキルが1つだけ与えられるのです。

 ちなみに、これがこれからあなたが転生する先の世界と、そこに転生する人間の潜在能力とステータス、個人情報です。」

 そういって、女神は魔法を使って目の前の空中に映像を映し出した。

 目の前には、転生先の人間のデータが映し出される。

    

 まず、私が転生する世界はエイルヘルム。

 剣と魔法が支配するまるでゲームのような世界である。

 この世界の文明は、中世ヨーロッパのそれに近い。

 そこでは凶悪な魔物がはびこり、毎日大勢の人間が殺されている。

 しかもそれだけではない。

いまから十数年後、魔界から無数の魔物たちが大挙して地上に押し寄せ、このエイルヘルムと人類に滅亡の危機が訪れる。

今まで閉じていた魔界の深層の扉が開くのが原因だそうだが、残念ながらどうして扉が開くのかは不明だそうだ。

だが、プロの天才美少女ラノベ作家をしていた私には解っていた。

魔王だ魔王。魔王がきっと千年ぶりくらいに復活するに違いない。



  

 そして次に、転生先の私の肉体についての情報だ。

 彼女の名前はマリー・キャンベル

マリーはアストレア大陸にある、中規模の国家、ミッドガルのこれまた中規模な街の近郊にある、普通の農村で生まれる。

 体格は少女の中でも小柄な方で、病弱でひ弱な少女である。

  

  

10歳時点での推定能力数値

 パワー0・8 スピード0・9

魔導力 0・03

剣の適正1・6

魔法の適正0・07

以下省略  (その他すべてクソナメクジ )

 10歳時点での保有スキル [ なし ]

なんじゃこりゃあ!!

「 これは、ひどいわね。」

 特に、魔導力が酷かった。

 魔導力が低すぎるため、魔法が使えない。

 当然、魔法のスキルもない。

「そう、でも、慰めになるかどうかわからないけど、あなたにはスキルが1つ与えられるわ。

 あなたの適正にあったスキルを選んでね。」

 私の適正と言われても。

 ほぼ全ての数値がクソナメクジの私に、適正もへったくれもないだろう。

よく言えたもんだな。

私は心の中で呟いた。

「では、これがあなたが持つ事のできるスキルの一覧よ。好きな物を選んでね。」

 その女神の問いかけに、私の答えはすでに決まっていた。

「[アイテムボックス]よ。

 [アイテムボックス]のスキルをお願い。」

 私は二つ返事で答えた。

「随分速いのね。何の迷いもなかったわ。

 どうしてそのスキルなのか、教えて貰えるかしら?」


「剣術や槍術、弓術などのスキルは、体格やパワーやスピードなどのステータスによって左右されるので却下。

 黒魔法や白魔法、召喚魔法は、当然魔導適正がクソナメクジなので却下。

 と言う事は、身体能力や魔導力などのこれらのステータスに影響されないスキルを選ばなければならない。

鑑定、テイム、風水術 

 色々あるけど、どれも融通が効かないわ。

 ようするに、あらゆる状況に適した応用が聞かない。

 でも、アイテムボックスなら、これらの条件を全てクリアしているわ。

 運動能力や魔導力などのステータスにも左右されずに、様々な使い方ができる。」

「なるほど、了承したわ。」

マリーのステータス表示に、アイテムボックスのスキルが追加された。

「それじゃあ、早速ですけど、転生してもらいましょうか。」

「1つだけ、聞きたいわ。」

「何?」

 「次に転生する世界には、私の親友もいるの?」

 私は声を震わせながら聞いた。

「残念だけどいないでしょうね。

 異世界転生するのは、あなたのように前の世界で何かの強烈な未練がある人間だけ、ここにいないという事は、そういうことよ。」

 女神の答えに私は意気消沈する。

「そう。でもそれでは、私が転生する意味がない。」

「それは、あなたが異世界転生してから、しばらくして時期がくればわかるでしょう。

 それでは、幸運を祈っているわ。」

 そう言って、女神は私に魔法をかける。

 私の身体が光に包まれ、異世界へと転生した。

   

   

 異世界転生してから13年がたった。

転生してから私は、幼少の頃から世界を救う冒険者となるための訓練を毎日続けた。

    

「えいっ!!」

 木刀で少年の撃ち込んた剣撃を弾き返すと、彼の右肩に袈裟斬りを叩き込む。

 木刀で私は、男の子たちと剣での戦いを想定した実戦訓練をしていた。

倒したのはこれで50回連続だ。

 前世の私は、剣道3段、空手初段、合気道5段の超天才美少女武術家だった。

 たとえ武器のスキルや魔法は使えなくても、剣技や体術の基本的な能力は伸ばす事ができるはずだ。

その剣技や体術の勝負勘を養うため、私は毎日かかさず鍛錬をした。

「どうしたの!?あなたたち、これでも男の子なの?!」

 そう言って私は少年たちを挑発する。

 もう少し頑張って貰わないと、この私の練習相手にすらなりはしない。

 そして今や、村の男の子なら1人で当時に7・8人相手でも勝てるようになっていた。

  筋力や体格では男の子である彼らには勝てないが、技術や練習量の差でそれらを補い、打ち勝てるようになっていた。

 だが、あくまでそれは素人同士での戦いの話である。

 もし今の状態で、熟練者の、それも体格でも筋力でも私を上回る男性の冒険者と戦えば、私は負けるだろう。

 剣の腕でも1流で、魔法も使える女性冒険者と戦ったとしても、私は負けるだろう。


 ましてや、邪悪なる魔物たちには勝てない。

だがそれは始めから解っている事だ。

 困難が待ち続けている事など、百も2百も承知だ。

 それでも、私は強くなる。

 この世界にいる全ての冒険者よりも強くなって、魔物たちを打ち破り、そして世界を守ってみせる。 

「マリー、凄え!!」

「もう誰も太刀打ちできねえぜ!! 」

少年たちが口々に称賛する。

「さあ、休憩終わり、午後の訓練始めるわよ」

「えっ、休憩してねーし」

 よし、機は熟した。

 いよいよ冒険者として、デビューする

時だ。


 私は武器や防具、ポーションなどのアイテムを買い揃えると、冒険者登録をするために近くの街へと出発した。

 草原の広がる道を歩いていると、スライムが3匹現れた。

スライムは飛び跳ねて接近して来る。

 私は手にしたショートソードでスライムを3匹斬る。

 少し離れた距離から、今度は巨大なカエルのモンスター、ブルーフロッグが3匹現れた。

 フロッグも同じく飛び跳ねながら、口から謎の粘液を発射する。

 私はショートソードを消滅させると、指先の空間から銅の盾を出現させてその液体を防御する。

 剣と盾、2つ同時に装備すると虚弱体質の私には重いので、1つずつしか持てない。

   

私が今手に持っている銅の盾は、アイテムボックスから取り出した物だった。

 アイテムボックスは、武器や防具、ポーションなどを次元空間に収納できるスキルである。

しかも、いつでも好きな時に取り出す事ができる。


 そして、このアイテムボックスこそが、私が使えるただ1つのスキルである。

 このスキルを磨くことは、私が世界最高の冒険者になるためのただ1つの方法である。

  

 私は今取り出した盾をすぐにボックスに収納すると、今度はナイフを8本取り出した。

そして、両手の指に挟んで連続でフロッグに投げつける。

 フロッグが液体を発射するよりも速く、ナイフはフロッグにザクザク突き刺さり、地面に落下して消滅する。

   

 モンスターを全員ナイフで撃退すると、私はポーションを一本取り出し飲み干した。

 う〜ん、運動の後のポーションは最高だ。

 ちなみに私は、ナイフもこのポーションも、それぞれ200個近くアイテムボックスに収納している。

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