底辺ダンジョン配信者な俺は変身アイテムで美人な推しのピンチを助けて爆速成り上がりする!?~きっとそのさきは地獄でも俺はヒーローでいたい~

支倉文度@【魔剣使いの元少年兵書籍化&コ

第一章 アルデバラン編!

第1話 俺の推しが大ピンチ!

「皆! 今日もありがとな! じゃあまた次の配信で」

 

 ダンジョンライバー、通称【ダイバー】である津川ユウジは笑顔のまま配信を終える。

 

「……はぁ、今日も同接2.3人……新規登録もゼロ。さっぱりだなぁ」


 ユウジは魔物を倒したあとトボトボとダンジョンから出る。

 時刻は夕方、同じく配信を終えた何人かがスッキリとした顔で今日の結果を喜んでいた。


「あ、そういやあっちってコラボしてたんだっけ? いいよなぁ。俺もコラボすりゃあ、いや、ないか。そもそもソロでもうまくってねえのにどうやって誰かと組むんだっての」


 ふと、時計を見たときだった。


「あ、やっべもうこんな時間か! ”あの人”の配信が始まっちまう!!」


 ユウジは急いで自宅マンションへと戻る。

 そしてパソコンの電源を入れると、そのまま画面にかじりついた。


『こんばんわ~! ヴィリストン姫島でーす♡』


「キタァアアアアア!!」


 "姫島ぁぁぁあああ!!"


 "好きだぁぁぁああああ!!"


 "今日も色っぽいスーツでサイコー!"


 "衣装ステキ! 尊敬しています!"


 画面に現れたのはピンク色の長い髪が特徴の艶っぽいお姉さん。

 妖術師の家系であり、メガネをかけた美人秘書のようないでたちながらも俊敏な動きに加え派手な術式が人気を博し、ついには先日登録者数40万人を超えた。


 今なお飛ぶ鳥を落とす勢いであり、ユウジにとっては憧れの存在である。


「やっべ、今日胸元開きすぎじゃないか? ん? 気のせい? そうか。古参リスナーが言ってるなら間違いないだろ。あ、俺も古参だったわ。……いや~、タイトスカートでどうやってあそこまで動くんだよホント、いい……」


 早速魔物が現れ、彼女は蝶のようなエフェクトを出しながら炎に雷といった他属性を操り、ときには神速の体術で倒していく。


 一挙手一投足すべてが魅了のひと言で片づけられていくのだ。

 

 "え、あそこでカウンターとか決められる普通?"


 "なに食ったらああなんのw"


 "カメラさんもうちょっと下!!"


 ”カメラさん胸アップで!”


 "↑ 通報しました"


 "おまいらwww"


 "誓ってエロい目で見てません!"


『エッチなコメントばっかりして~。わかってるんだからね、もう。イケない子たち♡』


 彼女のこのひと言でコメント欄は大盛り上がり。

 スパチャはもちろん、アイテムの転送などが盛んに行われる。


「アッハッハッハッハッハッ! さすがヴィリストン姫島さんだなあ。ソロだけじゃなくコラボとかでも相手食うレベルで存在感やべえし。ああ~、俺もいつか姫島さんと……へへへ。はぁ、んなわけねぇよな」


 現実に戻され、また画面に目を向ける。

 時間はたち、配信も終盤にさしかかった。


『はい皆さん。今日はありがと♡ また次の配信も見てね? それじゃ、おやすみなさい』


 胸を寄せて谷間を見せつけるような艶っぽい所作をしながらカメラに手をつけた。

 コメント欄も気が緩んで挨拶のコメントが羅列する中、ユウジは"それ"を見逃さなかった。



 ────


 カメラが切れるほんの一瞬。

 見たこともない異形の怪物の輪郭が見えたのにユウジの神経は戦闘時と変わらないくらい張り詰める。


「…………」


 彼女の腕前なら不意打ちなど大丈夫だろう。

 理屈で考えればそうなのだが、感情がそれを許さない。


「くそ! 余計なお世話かもしれねえけど!!」


 嫌な予感がする。

 身体が勝手に動いた。


 持っていくのはユウジ特有の武具である【アーティファクト】。

 ユウジは姫島がいるであろうダンジョンへと向かった。

 

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