第15話 兄さんのことが好き


 千桜先輩は志帆の言葉を聞くと、満足そうな笑顔を浮かべた。


「可愛い! でも、そんなはしたない子にはもっとお仕置きをしないとね?」


「えっ、そ、そんな認めてくれたら放してくれるはず……いやっ」


 千桜先輩はますます過激に志帆をいじめようとする。

 俺はさすがに千桜先輩を止めた。


「ち、千桜先輩。やめてください」


「どうして?」


「志帆は俺の妹です。あまりひどいことをすると、相手が千桜先輩でも怒ります」


 俺の言葉に、千桜先輩は「ふうん」とつぶやき、ジト目で俺を見た。


「羨ましい」


「え?」


「だって、志帆ちゃんは勇人くんに兄妹として見てもらえてるんだものね。わたしのことは姉だと認めてくれないのに」


「そ、そんなことですか……?」


「わたしにとっては大事なの。あのね、わたしも君の家族になるんだよ?」


 そう言われれば、それはそうだ。どれほど正体が怪しくても、千桜先輩が羽城の養女として、俺の姉になるのは事実である。


「わかりましたよ。千桜……姉さん」


 千桜先輩はふふっと嬉しそうな評定をする。


「よく言えました。でも、『お姉ちゃん』の方がいいんだけど」


「さすがにそれは恥ずかしいので、勘弁してください」


「まあ、今はそれで許してあげる」


 千桜先輩は志帆から手を放した。

 解放された志帆は「うわーん」と大げさに泣くと、俺に抱きついた。


「し、志帆!?」


「兄さん……! あたし、もうお嫁に行けないよ……」


「い、いや、そんなことないんじゃない?」


「だって、あんな辱めを受けたんだもん……」


 志帆は頬を上気させながら、そんなことを言う。

 正面からひしっと抱きつかれているから、志帆の身体の柔らかい部分が俺に押し当てられている。


 もともと露出度の高い格好だし、俺はくらりとした。義妹なのに、完全に異性として見てしまっている。

 志帆は上目遣いに俺を見る。


「ね、ねえ。兄さん。お嫁に行けないあたしを……愛人にしてくれる?」


「へっ!? し、志帆? 冗談でも、そんなことは言わないほうが……」


「あたし、本気だもん」


 そう言って、志帆は俺の胸板に、その柔らかい頬をすりすりとさせた。その大胆な行動に俺はびくっとする。


 本当にどうしたのだろう?


 志帆の顔は相変わらず真っ赤だが、単に恥ずかしがっている以上に赤い気がする。それに、女の子特有の甘い香りに混じって……少し、お酒の匂いがする。


「志帆ちゃん、さっき食堂においてあったお酒を間違って飲んじゃったみたいよ」


 千桜先輩が横からくすくす笑いながら口をはさむ。


 そ、そういうことか……!

 

「さっき言ったよね? あたし、兄さんにエッチなことをしてほしくてこの格好をしてきたの」


「で、でも……」


「兄さんが妹としてあたしのことを大事にしてくれているは知ってる。でも、別の意味でもあたしに触れてほしい」


 志帆の腕が俺の首筋に絡められる。正面から密着して、俺は体温が上がるのを感じた。

 志帆はふふっと笑った。


「兄さん、照れてる……?」


「そ、そりゃ照れるよ」


「兄さんは愛華さんのものだけど、でも、今だけはあたしのものだね」


 志帆はくすくすと笑う。


「俺は別に愛華のものではないよ」


「そんなこと言ったらダメ。でも……愛華さんが兄さんを裏切るようなことがあったら、あたしが代わりに兄さんを慰めてあげる」


「志帆は……」


「あたしは兄さんが好き。たとえ二番目でも、兄さんのそばにいたいな」


 志帆は小声でささやいた。







<あとがき>

志帆が可愛い! 志帆にも頑張って欲しい! と思っていただけましたら、


☆☆☆での応援、お待ちしています!

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