報酬代わりの情報を

 一行は川を渡り切っており、城壁?のそばで焚火を焚いて休んでいる。火をつけたばかりなのだろう、まだ種火より少しだけ大きくなった火に、少女2人がこちらに背を向けて当たっている。フード付きマントを被ってるけど、あの下もしかしたら全裸かな。火のそばで皆の洋服乾かしてるしな。見てみたいな。

 おっさんとひょろい男の2人は火から少し離れたところでパンツ一丁で待機中。見たいものは見られなくて、見たくないものは簡単に見られる。世の中ってそんなもんだよな。

 俺とバーレントは、俺が最初に川を渡った時と同じように全裸で渡河中。

 

 川を渡り切ると手早く体の水気を切り、とりあえずパンツだけ穿く。その前に一瞬だけ女の子たちがこっちを見て、一人は慌てて視線をそらせている。うん、かわいい。もう一人は顔を赤らめながらも、俺にぶら下がってるモノをガン見だ。こっちもかわいい。予想通りの美少女たちだな。

 そう思いながら見ていると、おっさんが近づいてくる。

「リュドだ。助けていただき感謝する」

「なに、気にするな。マサタカだ。よろしく」

 お互い挨拶と握手を交わす。

 リュドは30ちょい過ぎか。パンツの上から一応つけられたベルトの、左右の腰に短刀を付けた、二刀流です!って感じの佇まいだ。

 変態感溢れてるが、まあ状況が状況だし仕方ないか。

 とりあえず、バーレントと共に対岸での話を一通り伝える。

 

「で、欲しいのは情報と靴であったか」

「ああ。この辺りは俺が知っているところと全く違う。草木1つとってもだ。けど、理由は知らんが来てしまったんだ。帰る方法を知るためにも生きていかなくちゃいかん。なんで、色々教えてくれ」

 こんな感じに話せばそう無碍にもしないだろう。こいつら、善人ではないかもしれんが悪人じゃなさそうだしな。

「ふぅむ、神隠しとか神の試練とかいうやつか。なかなか大変そうであるな」

 この世界にも神隠しはあるのか。だが、神の試練?

「すまん、神の試練ってなんだ?」

「む、マサタカのところではそう呼ばないのか。人が気づかぬうちに勝手に別の場所に飛ばされる現象のことだ。大体優秀な技能か素質を持った者が飛ばされることが多い」

 ここは話を合わせとくべきか。

「ああ、そんな話は確かに聞いたことがある。聞いただけだが。なるほど、神の試練か」

「うむ。クラーセンの街にも一人いる。機会があれば話を聞いてみるといい」

「わかった、覚えておく」

 

「では、ここで話し込むよりも、一緒に街へ来ぬか?最低限の服一式と旨い食事は振舞おう。ここではゆっくりと話すことも難しい」

「有り難いが、俺が街に入れるのか?見ての通りの格好で、身の証を立てるものが何もない」

 パジャマの上下に両足が靴代わりの包帯だ。その他の持ち物といえば女神さまからのメモだけ。

「そこは、私が何とかしよう。幸い、衛兵には多少なりとも顔が利く。何より、ここクラーセンの街はもともと交易都市だ。それほど出入りに厳しくはない」

「なるほど、有り難い」

「ただ、街での犯罪は厳罰に処されるからそこだけは注意してくれ。盗みは例外なく片腕を落とされて追放だ」

「そうやって治安を維持しているわけか、理解した。気を付けよう」


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