第3話 予言には続きがあった


「オードリ嬢、意地悪されて傷ついた貴女の気持ちをやわらげたい。今度、一緒にランチを楽しまないか」


 王子様から、誘いがありました。これは奇跡です。


「嬉しいです、王子様。でも、王族用の部屋に、平民は入ることができません」


 とても残念です。こんなチャンスは、今後、無いかもしれません。心の中で泣きます。


「それでは、中庭でサンドイッチにしよう、いいな」


「はい、お心遣い、ありがとうございます」


 やったー! 中庭なら、偶然に一緒になったことにすれば、不敬にならないです。




 中庭で、工事が始まりました。何を作っているのでしょう?


 白い柱が8本、上にドーム型の天井……

 中庭に、王族用のガゼボが組み立てられています。


「王族のやる事って、平民の考えを、はるかに超えているのですね」


 私の考えが、甘かったです。



   ◇



 青空の下、王子様とのランチです。


「美味しいサンドイッチです。僅かにピリッとくるソースがたまりません。ありがとうございます、王子様」


 パンに、肉とレタスを挟んだだけかと思いましたが、ソースと相まって、絶品です。


「オードリ嬢が喜んでくれて、嬉しいよ」


 王子様の前なのに、サンドイッチを頬張ってしまいました。王子様は微笑んでいますが、こんな機会、もう二度とないと思います。


 イケメンより、美味しい食事です!



「ところで、“予言”は知っているかい?」

 

 ランチ中の話題にしては、変ですね。


「その令嬢、青き制服をまといて、金色の王子を射止める」


「この部分だけ、エイダン君が話してくれました。」


 正直に話します。


 これは、青き制服の私と、金髪の王子様が結ばれるという予言らしいです。



「そうか、その話には、続きがあるんだ」


「隣国の大地との絆を結び、ついに汚れた人々を青き清浄の地へ導く」


 王子様が、真剣に語ります。こじらせた中等部の男子みたいではなく、何かを決心した言葉です。



「よく解らないのですが、どのような意味ですか」


「今は言えないが、貴女には、いずれ、話す時が来ると思う。貴女には迷惑をかけないことは、誓う」


 空気が冷たくなりました。もう何も聞けないです。



   ◇



 午後の教室です。


「グレース侯爵令嬢、貴女との婚約を、破棄する」


 王子様が、宣言しました。



「承りました。理由を聞くのは、野暮ですね」

「そのオードリへの意地悪が、原因なんでしょ?」


 グレース侯爵令嬢は、いたって冷静です。


「貴女の行動が、私の婚約者として不適切だったという事だ」


 王子様は、決意は硬く、言い放ちました。



「予言のとおりに、なりましたね」

 侯爵令嬢は、勝ち誇ったように微笑んでいます。


「予言は、関係ない」

 王子様は、悲しそうに否定します。


 これでは、どちらの断罪なのか、分かりません。



 教室が、シーンと静まりました。





あとがき

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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