第9話 結局オタクはみんなリアクション同じなのよねぇ……。


 『Weed Soul』として新たにスタートを切った俺達だったが、徐々に仕事が減っていった。


 翔也の会社『W.V.F(ウエストヴォイスフィールド)』が各所に自分達の所属声優を使う様に圧力をかけてきたのだ。


 やはり今、急成長の会社のスポンサーが無くなるのはキツいらしく、渋々言う事を聞いている所が多い中、それでもこだわりを持ってやっている人達から仕事を貰って会社はなんとか凌いていた。


 そんな中、社長の所に一人の女性がやって来た。


 仲原十条なかはらじゅうじょう


 アニメ化が噂されている『コンビニ店員とOLさん』の原作者だ。


 年下コンビニ店員の気を引く為に、OLの風花ふうかがあの手この手を使うが、いつも玉砕してしまうといった内容の大人気ドタバタラブコメディーだ。


 見た目は二十代後半位で、黒髪ストレートのロングヘアが似合う落ち着いた感じの女性だ。


 「改めまして、『王子おうじ』です。どうぞこちらにお掛け下さい」


 社長は名刺を渡して挨拶をすると、ソファーに腰掛けた。

 その後すぐに沙樹もお茶を持ってやって来て、


 「滝野川天たきのがわそらの担当の神谷沙樹です、宜しくお願いします」


 そう言って名刺を渡した。


 仲原さんは、ふう〜っと大きく息を吐いた後、二人を見回して……、



 「わっ、私ねっ、てんちゃ……、滝野川天さんの大ファンでっ! まだ、正式には決まってないんだけど…………アニメ化が決まったら絶対『風花』の役をやってもらいたくて……、あっ、わかってる、わかってるのっ! 天ちゃんのロリボイスには、この役合わないって!」


 ふぅ〜っと息を吐き、


 「でもっ、でもっっ! デビューした時から、天ちゃんの事、ずっとずっと好きでっっ♡ …………天ちゃんの『大人の女性の声』聞いてみたいなぁ……って、ダメっ? だっ、ダメですかぁっ?」


 一気に捲し立てて、お茶をグイッと飲み干した。


 「仲原さん、落ち着いてっ!」

 社長がなだめてる間にすかさず沙樹も、

 「冷たい麦茶ですっ、どうぞっ!」


 

 「あっ、ありがとうございますっ!」



 ※※※



 「ウチとしてはありがたい話だけど……、コレばっかりは天に聞いてみない事にはなぁ……」


 社長は腕を組んで思案顔だ。


 「あの子、あのロリ声が地声だから……、ちょっとお時間頂けますか?」


 沙樹が言うと、


 「他の人だったら、アニメ化なんてしないんだからっ! ふんっ」


 仲原さんは鼻息を荒くして断言した。

 沙樹は一瞬だけズルい顔をして、


 「それでは、天をキャスティングするにあたって、こちらからも一つ条件を出しても良いですか?」


 「な、なんでもいいわよっ! 天ちゃんがやってくれるなら!」


 「相手役のコンビニ店員を弊社の赤羽亮太でお願いしたいのですが」


 そう言って『新しい声』の入ったボイスサンプルを流した。



 ※※※



 「うん、うん、……なんか感じピッタリじゃない? 全然いーわよ! オッケーオッケー!」


 二つ返事で沙樹の肩をバンバン叩いて上機嫌の仲原さん。


 ……最初の落ち着いた印象は?


 「ありがとうございます、早速天に原作読ませて、イメージ通りの声になる様、練習させます」


 頭を下げながら沙樹は悪い顔でニヤリと笑った。



 ……そこから先は、仲原さんの天に対する熱い想いを延々と聞かされる事になり、ただただ苦笑いの二人だった。



 ※※※



 「それじゃ『声』出来たら教えてねっ! こっ、今度は天ちゃんも連れて来……っっあぁぁ〜っ、ムリ! はぁっ、はぁっ♡」


 「今度は天も連れて来ますよ」

 社長が言うと、


 「はっ、はいっっ! お願いしますお願いしますっ!!」


 「そっ、それじゃ、またっ!」


 バタンっ

 扉を閉めて数秒後……、


 「きゃあぁぁあぁぁっっ……っっ!!」


 ドアの向こうで叫び声が響いていた。



 ※※※


 

 その日の夜、

 

 俺の仕事が増えてきて、コンビニとの掛け持ちがキツくなって来た事を親父に言ったら、

 『じゃあ、客も来ないし、二十二時で閉めるかっ!』


 ……ってアンタ、いくら家賃収入で生活出来てるからって閉めるの流石に早すぎだろ?


 てか、それなら最初から深夜やるなよっ!


 『閉めた後は、好きに使っていーぞ!』



 ……そういう訳で、先週から二十二時以降は俺達のたまり場になっていた。


 まあ……前と何も変わらないけどね(汗)



 ※※※



 「……って事になったのよ」


 沙樹はビールをグビっと飲み干して、昼間にあった事を報告した。


 「やったじゃん、バネ太♡」

 麻里が抱きついて来た。


 「なんか、……複雑な心境だな」

 俺は麻里を引き剥がして苦笑いをした。


 「でもでもっ、サンプル聞いてオッケーだったんでしょ?」


 天が頬を紅潮させて原作を読み終えた。


 「コレ、亮太先輩とのじれったい甘々ストーリーですよ! ラストなんて、……キ、キスシーン♡ その後も、……キャーっっ♡♡ はぁっ、はぁっっ♡」


 「私、頑張るっ! エロい大人の声、出してやるんだからっ!」


 そして、俺にウインクをして……、


 「だから……協力して下さいねっ♪」

 「セ・ン・パ・イ♡」



 第10話につづく←もう10話っ!



 ※※



 さぁ、今回はイチャイチャなしのお仕事回でしたよねー!


 次回は天ちゃんお当番回!!


 あーコレで天ちゃんファン激増だわっ、

 わた……麻里の人気が無くなっちゃいそう! まいっか!


 フォロワーとお★さまがピタッと止まりましたよ! このまま埋もれてもいいんですか? PVは安定してるので皆様、ポチっと宜しくお願いしますねー♪



 ♪読んで頂きありがとうございました♪

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