第7話 コレ書かないと、話が先に進まないのよねぇ……。


 『ウエストフィールド社、大塚事務所を買収』


 衝撃的なニュースは更に続き、社長は解任、そして新社長には翔也の兄でウエストフィールド社の副社長をしていた西ヶ原龍也にしがはらりゅうやが就任した。


 社名も新たに『W.V.F(ウエストヴォイスフィールド)』に変更された。


 それに伴い副社長に就任した翔也は、大幅な人員削減と言う名目で、自分の気に食わない人間は全て解雇していった。


 残った奴らは、翔也に媚を売るイエスマンや後輩達、それに当たり障りのない先輩だけとなり、更には業界の事は何も知らない兄は名ばかりの社長、正に翔也のやりたい放題になってしまった。


 当然俺はクビだが、業界内でも顔が効く沙樹まで解雇するとは思わなかった。


 「頭下げられたって辞めるつもりだったからラッキーよ! 退職金も出るしねーっ」


 俺の出勤時間に合わせて沙樹はやって来て、イートインスペースで浴びる様に酒を飲んでいた。


 「その棚に置いてあったおつまみ、もらったわよ!」←オイ



 ※※※



 「でも、……どうするの? このままバネ太声優辞めちゃうの?」


 当然のように麻里も店に来ていた。


 「せっかく新しく勝負出来そうな声が出来たんだ、フリーでもやってみせるよ」



 『だって、麻里と約束したからな!』


 

 「あっ、……はぁ〜んっ その声っ、しゅきいっ♡」


 酔っ払ってるのもあるが麻里は真っ赤な顔をして、テーブルでフニャフニャになっていた。


 そんな中、店の入り口の前に一人の男が現れた。


 「いらっしゃぁ……っ! 社長っ!!」


 王子皇輝おうじこうき


 声優界最大手『大塚事務所』の三代目社長、まだ三十代半ばなのに業界内での信頼は厚い。


 端正な顔つきで長身、ウェーブがかかった肩まである長い髪。


 名前と相まって、本当の王子様の様だ。


 俺がこんなにくすぶってる間もクビにする事なく、いつも気軽に声を掛けてくれ、俺の『あの声』が戻るのを辛抱強く待っていてくれた。


 俺の声優界の恩人、だ。


 「バネ太、……すまなかった、俺がもっとしっかりしていれば、……こんな事にはならなかった」


 社長は俺に深々と頭を下げた。


 「やっっ、やめて下さいっ社長っ! 社長には感謝しかありませんからっ! 頭っっ、上げてくださいよーっ!」


 俺がオロオロしていると、沙樹が、


 「そーよ、社長はアイツらにハメられたのよ! 悪いのはアイツらなんだからっ! あ〜っ、くやし〜っ!」


 何故か俺に抱きついて、頭を胸に押し付けて、グリグリしてきた。

 社長はそんな俺達を見て、苦笑いしながらも、


 「神谷、……俺もこのままじゃ気が済まないんだ、これ以上好き勝手されたら、声優界にも悪影響だ…………新しく会社立ち上げるつもりなんだが、神谷、手伝ってもらえないか?」


 「社長ぉ〜っ♡」


 沙樹は俺から離れ顔を上げて、今度は社長の胸に飛び込んだ。

 

 ホント酔うとベタベタするよな、オマエ……。


 そして社長の手を取り、

 「もちろんですっっ!! せっかくバネ太が『新しく声』見つけたんだから、みんなに聞いてもらいたいもんっ!」


 社長は抱きついて離れない沙樹の頭を優しく撫でながら俺を見て、


 「バネ太、俺もその『新しい声』、そして何よりも『あの声』を取り戻して、お前を声優界の頂点に押し上げたいんだ! ……こんな俺だが、ついて来てくれっ!」


 「社長っっ!!」


 俺は沙樹の手も一緒に社長の手を掴み、


 「俺っ、……もう、……『あの声』が出なくて、声優はもう、……辞めようと思ってたんです…………だけど……、こんなにみんなが期待してくれて……、ネガティブな事ばっかり言っててすみませんでした」


 俺は真っ直ぐ社長を見て、

 「俺っ、やりますっ! 『新しい声』と『あの声』も取り戻して…………『天下』とりますっっ!!」



 「バネ太ぁ〜っ!!」


 麻里が俺に飛びついてきた。


 「私も協力するから〜っ! みんなで『天下』取ろうね♡」


 「ん、? ……確かキミは……?」

 社長が俺にしがみついている麻里を見て言いかけたが、


 「……しーっ」


 麻里は社長を見て人差し指を立てて、指先を鼻の頭につけウインクした。


 「麻里……社長と知り合いなのか?」


 「まだ、……内緒♡」


 そう言って俺の胸に顔を埋めた。



 「ちょっとぉ? 何どさくさに紛れて抱きついてるのよぉ〜っ! わっ、私だってぇ〜っ!」


 沙樹も背中に抱きついて顔を擦り付けた。


 社長は苦笑いで、

 「はははっ、バネ太、モテモテだなっ! ……これで西ヶ原に解雇されたみんなの再就職先もお前が最後、一段落したし、俺も再始動だ!」


 社長は解雇された全員の再就職先を探していた様だ。


 「神谷っ、明日から忙しくなるぞっ!」


 「おっしゃあぁ〜っ! やってやるわよぉ〜っ!!」

 沙樹は腕を折り曲げ、力こぶを作って鼻息を荒くした。


 「じゃあ沙織さん、バネ太は私に任せて!」


 麻里は俺の腕に絡まって、ニヤニヤしながら人差し指を立てた。


 「麻里ちゃんっ! 抜けがけはナシよ! 私達は運命共同体なんだからっ!」


 「とりあえずみんなっ、乾杯しよっ!」

 沙樹は俺と社長にもビールを渡して、



 「みんなで『天下』とるわよぉ〜っ!」

 「かんぱ〜い!!」


 「「乾杯っ!」」

 「かんぱ〜い♡」



 ……俺、一応コレでも仕事中なんだけどな……。  まっ、いっか!

 


 第8話につづくよー!



 ※※



 まぁね、アニメで言うところの『俺たちの戦いはこれからだ!』回ですよ!


 これからバネ太もコンビニ以外のお仕事シーンが増えてきます。←コンビニの仕事描写一切ナシ


 「がんはれーバネ太」

 「麻里の正体ダレ? うーん、わからないや」


 棒でもいーので『愛』あるコメントをどしどし募集しちゃいますっ!←何か古い



 ♪読んで頂きありがとうございました♪


 


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