第6話 激情

店内に入ると真正面にカウンターがあり、黒服の受付が二名立っていた。

「いらっしゃいませ。ご予約はされておりますか?」

「はい、十九時予約の安達です。」

「安達様…はい、お待たせ致しました。百二十分コースで六万五千円になります。」

 僕は封筒から徐ろにお札を取り出し、受付に手渡した。

「丁度お預かり致します。もう直ぐ準備が完了致しますので、此方にお掛けになってお待ち下さい。」

 僕は案内されたソファに腰掛けた。

 待合室は煙草や香水が入り混じった、中途半端な匂いが立ち込めていた。

 しかし、今の僕にとってはそれは大した問題では無かった。我慢し続けている僕のシンボルを抑えることに必死であった。

 気を紛らわせる為に、本棚から何冊か漫画を取り出し、読み始めた。

 三、四ページ読み進めたところで、黒服が僕を呼び出した。どうやら準備が完了したようだ。

 努めて冷静を装いながら黒服に付いていくと、背中越しに女の子の姿が見えた。

 金髪のショートボブに、出る所は出て、引き締まる所は引き締まった均整の取れたプロポーションに、ピンクのサテンのネグリジェ姿の女の子な姿に興奮を隠しきれず、鼻息が荒くなっていくのが分かった。

 女の子の顔がはっきりと確認出来る位置で黒服が静かにフェードアウトした。

 女の子は満面の笑みで僕を出迎えてくれた。顔も若手女優と見間違うくらいの美人だった。

「ご指名いただいてありがとうございますー。初めてですよね?」

「ええ、最近婚約していた彼女に振られましてね。臨時収入が入ったので思い切って来ちゃいました。」

「そうだったんですか。大変でしたね。頑張りますので楽しんでいって下さいね。」

 女の子に導かれるままエレベーターに乗り込んだ。

 もう直ぐこの子と楽しいことが出来るワクワクで心臓が破裂しそうな感覚になっている。

 エレベーターの扉が閉まると、女の子はいきなり僕の唇を奪ってきた。

 突然の出来事であったので固まったまま動けなかったが、その柔らかい唇は僕のシンボルに更なる活力を与えた。

 唇を離した女の子は何も言わず、悪戯に微笑んでいた。

 エレベーターが開くと、個室に案内された。

 室内には手前にベッド、奥に浴室らしきスペースがあった。勿論、お楽しみのエアークッションも用意してあった。

 女の子に荷物や上着を手渡し、女の子が片付け終えると、女の子はいきなり僕のズボンを下ろし、シンボルを口にし始めた。

 シンボルを通じて温かく、柔らかい感触が僕を包み込んだ。

 彼女のストロークの度に、愛液が絡み付いて、終始脳内に電流が走り続けた。

 ストロークは速さを増し、比例するように僕のシンボルはアイドリングが進んだ。

 我慢の限界に達したシンボルは大量の白い液漏れを起こした。

 彼女はその全てを口内で受け止め、飲み干した。

「めちゃくちゃ多いですね。さあ、洗いましょうか。」

 いきなり一発抜き取られてしまった。しかし、まだまだ体力は有り余っていた。

 服を全て脱ぎ、彼女の指示通りにマットの上に寝そべった。

 背中に冷んやりとした感触がした。その上に彼女が乗ってきた。乳房の柔らかい感触がシンボルを硬くする。

 彼女は僕のシンボルの方向へ下がっていき、乳房でシンボルを包み込み、上下に動かした。

 余りの快楽に嬌声が漏れた。彼女はそんな僕の反応を楽しむかのようにニンマリとしていた。 その後も彼女は自らの肉体で僕の肉体を洗ってくれた。

 一頻り洗い終えると、彼女は器用に咥えたラテックスをシンボルに被せ、下腹部に招き入れた。

 温かい感触は口と変わらないが、下腹部には物理的な締め付けも加わったため、抗い難い快楽に嬌声を制御することが困難になった。

 視線を上に向けると、彼女も同様の反応であった。いや、むしろ彼女の方が激しい嬌声と共に僕の上で踊り出していた。

 下腹部に全てのエネルギーがチャージされていく感覚が強まり、いよいよ許容を超えた。

 全てを解放したとき、シンボルに血流の影響かトクン、トクンと鼓動が感じられた。

 女の子も体力を使ったようで少しばかり息が上がっているように見えた。

 女の子は時計を確認すると、僕の体を丁寧に拭き上げ、ベッドへと誘導した。どうやら再戦を要望しているようだ。

 勿論僕に断る理由はない。ベッドに腰掛けると彼女の肩を抱き寄せ、僕の方から唇を奪った。

 彼女も乗ってきたのか、息遣いが荒くなり、舌を捩じ込んできた。

 彼女の柔らかい舌で僕の舌は完全に舐め上げられた。此方からリードするつもりだったが、彼女の方が何枚も上手だったようだ。

 彼女の口は徐々に下に下りていった。首筋、乳首と快楽ポイントを通過して、シンボルでストップした。

 顔を上げて僕の顔を覗き込んで微笑すると、再び顔を下ろして上下運動を開始した。

 うねるように込み上げる快楽の波に、僕のシンボルは二度目のノックアウト寸前まで追い込まれた。

 僕の状況を察知したのか、彼女は顔を上げ、下腹部を広げた。「来て欲しい。」

 僕はこれまでのお返しとばかりに一心不乱に下腹部に貪り付いた。

 彼女は売って変わって嬌声を張り上げながら顔を歪めた。

「ん…す…ごい…」

 彼女の息が荒くなり、首越しにそれが感じられた。

 暫く貪り付いた結果、彼女の下腹部は十分に潤いが出てきたのが分かった。

 彼女を仰向けに寝かせ、潤っている下腹部にシンボルを挿入した。

 彼女の嬌声は激しさを増した。頬は薄紅色に染まり、体が小刻みに震えているのが分かった。

 僕自身も再び訪れた快楽の波に乗りながら腰を振り続けた。

 お互いに目の前の快楽にのめり込む余り、口数も減り、快楽のみを貪る獣と化していた。

 どのくらい時間が経っただろうか。僕は貯めに貯めた飛魚を下腹部にぶっ放した。

 快楽を貪り尽くした二人は動く元気も無くなり、早くなった呼吸を緩めながら見つめあった。

「お客さん、とても激しかったですね。思わず大きな声が出ちゃいました。」

「いやいや、余りにも気持ち良すぎたからです。腰がガクガクです。」

「ウフフ。私もです。」

 二人揃って微笑を浮かべたところで、ピピピッと音が鳴った。

「そろそろ時間一杯みたいです。帰り支度にしましょう。」

 二人とも服を着て、荷物も揃えて部屋を出た。

 受付まで二人で歩き、受付前のカーテンでお別れをすることになった。

 手を振りあい、カーテンを開けようとした時、右腕を掴まれた。

 振り返ると、彼女が唇を重ねてきた。

「今日は楽しかったです。また来てくれたら指名してくださいね。」 

「勿論だよ、ありがとうね。」

 再度手を振りあった後、今度こそカーテンを開け、受付に戻った。

 店外に出ると同時にお腹が音を立てた。店内では意識が向いていなかったが、夕食を食べていなかった。

 駅前の定食屋を物色し、牛丼チェーンに入った。

 食べたいメニューは決まっていたので、お目当てのセットの食券を直ぐに購入し、カウンターの最前列に腰掛けた。

 直ぐに店員さんが来てくれたので、食券を渡し、到着を待った。

 待っている間、今日の出来事を回想していた。

 朝は百万馬券を当て、夕方以降はソープランドで心身を癒した。なんて幸せな一日だ。

 そんなことを考えている内に、セットが到着した。

 今日みたいな日に食べるセットはいつもよりも美味しく感じられた。幸福スパイスが特盛で効いている。余りの美味しさにあっという間に完食してしまった。

 店外に出た僕は時計に目をやった。終電まであと三分。

 僕は全速力でダッシュした。この終電を逃せば朝まで帰れない。当然明日からの出勤にも支障が出る。

 やっとの思いで列車に乗り込めた。良かった。しかも、端の席が一つ空いていた。

 安心した僕は、座るなり深い眠りについた。

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