第21話 出撃命令

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……場所は変わって特別軍事研究部では……


 日彩と三空に出撃命令が出されていた。そして、その事でリリムとカルムは2人に話をしている。


「なんですか?話って」


「いやぁね、君達に出撃命令が出されたでしょ?多分それってシャドウが絡んでるんだと思うんだよ。基本的に僕達はムスペルヘイム本国からも少し嫌われてるからねぇ、前線に出してもらえることがないんだ。でも、今回は違う。場合によっては前線への出撃を許可するって言ってきたから。もし行くのであれば、それなりに対策しないとまずいよ」


「そうですね。僕も少し考えはあります。それに、今回は三空と同時に出動なので2人同時に戦おうかと思います」


 日彩はそう言って更衣室へと向かっていく。そして、パイロットスーツを着用し始めた。どうやら反旗で出撃するようだ。


「ちなみにだけどさ、別に辞退してもいいんだよ。これは絶対じゃないんだからさ」


「お気遣いありがとうございます。でも、僕は行きます。シャドウが来る可能性があるのなら、必ず捕まえないといけませんから」


「別にそんな使命感を感じなくてもいいんだよ」


「いえ、これは僕がやらなくては行けないのです。先程僕達が調査に行った場所、あそこは僕の友達である湊月の通っていた学校です。そこが消されたと言うことは、そこにいた人達は皆殺されたということです。そして、聞きましたが湊月は既に殺されていると記録されていたらしいです。理由は分かりませんが湊月が殺されたことには変わりません。湊月のためにも僕がシャドウを捕まえなければならないのです」


 日彩はそう言った。すると、カルムは少し考える素振りを見せて日彩に言う。


「君はシャドウが憎いかい?」


「……」


 その問いかけに日彩は答えない。すると、カルムは続けて言った。


「知ってるかい?憎しみは時に人を殺すよ」


「それは……十分承知してます」


「わかってるならいいんだけどさぁ」


 2人はそんな会話をして、急に沈黙する。そのせいでその場には重苦しい雰囲気が漂ってしまった。


「ま、日彩君は人を殺すことは無いでしょ?カルムさんも心配しすぎですよ」


 その時リリムがそう言った。カルムはその言葉を聞いて少しだけ気を緩める。


「そうだねぇ。ま、君なら大丈夫か。そんなことよりアポロンを改造チューンしておくよ。さすがに武器も防具も何も無いんじゃ彼に勝てそうもないからねぇ」


 カルムはそう言ってパソコンと向き合い始めた。すると、アポロンの情報が整備の人達に提示させられたのか、整備の人達がアポロンを改造し始める。


 日彩はその様子を眺めながら近くにあった椅子に座った。


「……」


「ねぇ、日彩」


「ん?三空か。どうしたの?」


「シャドウと戦うんでしょ?作戦を考えよ」


「作戦?」


「そう、作戦。1体1だと彼には勝てない。だから、私と日彩の2対1で行きたい」


 三空は日彩にそう提案する。日彩は三空のその提案を聞いて少し考える素振りを見せた。


「2人か……でも、どうやって戦うの?恐らくだがシャドウはイガルクに乗っている。生身なまみで戦うのは少々無理があるんじゃないかな?」


 日彩は三空にそう言う。すると、三空は少しだけ俯いて悲しそうな顔を見せる。しかし、三空はなにか思いついたのか目をキラキラさせながら言ってきた。


「私がコックピットに乗るのはどう?私と日彩が乗って、そして日彩がシャドウのイガなんたらを壊したと同時に私が外に出てシャドウを追い詰める。これはどうかな?」


 三空は目をキラキラさせながら顔を近づけてくる。


「う……えっと……カルムさん!アポロンのコックピットに2人って乗れますか!?」


 日彩は三空の視線が痛くなってダメ元でカルムに聞いた。しかし

 日彩はその答えがどうなのか予想が着いている。


 なんせ、搭乗者本人なのだから。あんなに狭いコックピット二二人も乗ればまともに動けそうにもない。だから無理だろう。


「ん〜行けるんじゃない?狭いけど。でも、君達2人なら多分乗ると思うよ。ただし、1人はずっとたっておかなくちゃならないけど」


 カルムは考えながらそう言った。そして、再びパソコンと向き合う。


 三空は今の言葉を聞いてよりいっそう目を輝かせた。


「私ずっと立ってて良い。だから乗せて」


 更にはそんなことまで言い始める。


「……はぁ、分かったよ。どうなっても知らないからね」


「ん。それは承知の上」


 三空はそう言って満面の笑みを浮かべると自室へと戻り準備を始めた。


 日彩もそんな三空を見つめながら準備を続けた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━そして月華団は……


 彼らはずっと車で移動をして既にに時間が経過していた。団員のほとんどは、長時間の乗車にもかかわらず誰一人眠ることなく準備をしている。


 そして、湊月も同様に準備をしていた。なんせ、今回は準備無しで勝てる戦いでは無いからだ。


 今回の戦いにおいて1番重要なのは、どれだけ長い間隠密行動ができるかということと、どれだけ早く相手のアサシンブレイカーを奪取するかだ。


 恐らくだが、今回もイガルクだろう。だから、なるべく戦いは避けた方がいい。それに、今回はまた異名持ちが居る。


「……フィラメル・レウ・ムスペル……」


「どうしました?」


「……玲香、お前に1つ言っておく。もしフィラメルに出会ったら逃げろ。イガルクで勝てる相手では無い」


「フィラメル?誰ですか?それに、イガルクって……」


「そこら辺はまた今度説明する。ただこれだけは覚えておけ。青い機体に出会ったらすぐに逃げろ。それは、青い悪魔だ」


 湊月はそう言って再び考え事をする。玲香は湊月のその様子から少し緊張感を覚えたのか、胸に手を当てて深呼吸をしていた。


「……」


 そして再びその場に沈黙が流れる。湊月はそんな空気を気にもとめず無言で考え事を続けた。


(……あの謎の機体。太陽のような機体はなんなんだ?それに、東京にいるはずなのに、何故か嫌な予感がする。少し対策を考えておかなくてはならない。それに、あの女。シェイドはライトニングと言っていた。そっちも対策を打たなくてはならないな)


 湊月はそう思って自分の懐からもう一度ハンドガンを取りだした。そして、そのハンドガンを分解し始める。


(出来るだけ……そう、出来るだけ強化しておかなくては。シェイドから貰ったこの力。存分に使わせてもらうぞ。……いや、使わなくては勝てない!)


 湊月はそう心の中で思うと、ハンドガンに影の力を注ぎ込んでいく。すると、ハンドガンが黒く染まり出した。そして、影は一瞬にしてハンドガンを飲み込み、黒いメタリックのハンドガンになった。


「もう、後戻りはできない。我々は次のステージへと向かう時なんだ。どんな障壁があっても必ず潰す。……いや、皆殺しだ」


 湊月は小さな声でそう呟いて仮面の下でニヤリと笑った。

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