第19話 非情

 湊月とシェイドが2人で話したあと湊月はシェイドを服の裏に隠して影の中から出た。するとそこは、玲香達がいる場所のほぼ後ろだった。


 湊月は目の前にいる玲香を見て歩き出す。2人はどうやら今までの事を話しているみたいだった。湊月はそんな2人を少しだけよく思いながら話しかける。


「待たせたな。それでは移動しよう」


「「「っ!?」」」


 突如背後から話しかけられ2人は急いで飛び上がり振り返る。


「シャドウ!?いつの間に!?」


「たった今戻ってきた」


「そ、そう……無事でよかったわ」


「そうか。心配かけて悪かったな。それよりこれから拠点を作る必要がある。少し時間がかかるが名古屋に反逆軍レジスタンスがいるらしい。かなりの規模らしいからそこと合流する」


「待て!そんなことよりお前と話したいことがある!」


 湊月がある程度説明をして進もうとすると、山並が突如そんなことを言ってきた。


「や、やめましょうよ!」


 玲香はそんな山並を止める。しかし、山並は玲香のそんな静止も聞かずに湊月に言う。


「お前、フォースの持ち主なんだってな!なんで黙っていた!?」


 山並はそう言って湊月を指さす。そしてさらに続けた。


「お前、ずっと俺達を騙してたんだろ!日本人っていうのも嘘で、本当はムスペルヘイムのスパイなんだろ!どうなんだ!?本当のことを言え!」


「本当のことか……。俺は日本人だ」


 湊月はそう言った。しかし、山並はその事にさらに腹を立てて言う。


「まだ嘘をつくつもりか!?お前が日本人だと言うなら、その仮面を取ってみろ!そしたらお前を日本人だと認めてやるよ!」


「無理だな。それは出来ない」


 湊月は山並に冷たい言葉でそう言う。すると、やはり山並は怒る。


「そうだろうな!なんせお前は日本人じゃないからな!」


「違うな。そんなアホくさい理由では無い。相手はフォースを持っている。フォースユーザーとでも言うべきか?まぁ、そのフォースユーザーの中には相手の記憶を探るやつも存在する。そんな奴にお前らの頭を探られでもすれば、もし俺が仮面を外して行動する時バレてしまうだろ?」


「それなら、お前はその技にかからないというのか!?」


「当たり前だ。俺は考えて動くからな」


 湊月はそう言う。すると、山並はさらに腹を立てた。


「っ!?俺達が何も考えてないと言うのか!?」


「そうだな。もしお前達が何か考えていたのなら、何故あそこまで追い詰められる?もっといい策を考えつかなかったのか?」


 山並は湊月のその言葉に何も言えなくなる。そして、湊月はそんな山並の様子を見て続けた。


「今だってそうだ。もし俺が敵だった場合どうした?相手はフォースユーザーだ。だがお前達は違う。2人で俺と相手するつもりだったのか?それとも、隠れてるお仲間さんと一緒に戦うつもりだったか?」


 湊月はそう言って周りの森の中を見つめる。すると、そこから人がぞろぞろとでてきた。どうやら宵闇の月華団の全員が切れていたらしい。


「先に言っておく。俺に銃は通用しない」


「だが、まだあれが……」


「アサシンブレイカーか?それならやめておけ。あれは前の戦闘でエナジーチャージャーを破壊されてな。エナジー不足で動かん。たとえ動いたとしても、誤爆するだろう。それに、突如アサシンブレイカーが現れればムスペルヘイムの軍が来るぞ」


 湊月はそう言ってため息を1つついた。そして山並の前に立って言う。


「もう少し考えろ。今の状況を考えて、真の敵が誰かを見極めろ。わかったか?」


「クッ……!」


「山並さん!信じてあげましょう!私はシャドウを信じます!例えムスペルヘイムの人だったとしても、シャドウがムスペルヘイムに対して何かしらの憎悪を持っていることは確かです!利害は一致してます!」


 玲香も山並の横からそう言う。すると、さっきまで湊月を遠くから見ていた月華団の全員が少しずつ湊月に歩みよってきた。


 そして、全員が忠誠の証としてポーズをとると、口を揃えて言う。


「「「我が意思は皆シャドウの元に」」」


 そして、全員は山並の周りに集まる。すると、山並は皆に説得されたのか湊月を認めた。


(……フッ、俺を裏切るか……)


 湊月は頭の中でそう呟いて振り返ると、少し歩いて街を見下ろす。ちょうど今いる場所が高台の上だから街全体を見下ろすことが出来る。


 すると、ムスペルヘイムの街にある車を発見した。それは、キャンピングカーのような人を乗せるようなタイプの車だ。


 湊月はそれを見てニヤリと笑う。


「よし、作戦は出来た。今から愛知県に向かうぞ」


 湊月はそう言って移動を始めた。


「あ、そうだ。そのアサシンブレイカーは破壊しておく」


 湊月はそう言ってアサシンブレイカーを破壊した。そして、影で完全に消してしまう。そうして証拠やら何やらを全て消してしまったのだ。


 湊月はそのままムスペルヘイムからバレないように車の場所まで移動し始めた。


「シャドウ!私達は何を?」


「いや、何もしなくていい。俺が言ってくる」


 湊月はそう呟いて1人でその車の場所まで移動した。


 湊月はある程度進むと誰にも見えない場所で変装を解いた。そして、シャドウから星影湊月に戻る。


 湊月はその姿で車の近くの脇道へと逸れた。そしてある店へと向かう。それは、闇の商人の店だ。だいたいあんなところにでかい車があれば、麻薬密売とかそこら辺だ。だとすれば、ここら辺に闇の商人がいる可能性は高い。


 湊月はそのまま路地裏のような場所を進んである店の前に着いた。そして、中に入る。


「いらっしゃい。今日は何の用だ?」


「外に置いてある車を貰いたい。それと武器もだ」


「何?あんた若いのに払えんのかよ?それに、あんたルーザーじゃないか。うちはルーザーに売るものなんかねぇよ。帰りな」


「無理だな。それは出来ない。もしお前が売る気がないというのなら、俺は力ずくで奪っていく。それでもいいのならそのままの態度でいてもいいぞ」


 湊月はそう言って銃を構えた。そして、商人の額に銃口を向ける。すると、商人は少し目を補足して言った。


「そんな武器で勝てると思っているのか?そんなちっぽけな弾がこの俺に当たると思っているのか?」


「あぁ。当たるさ。お前が俺の機嫌を損ねればな。なに、俺が要求したものをくれれば何もしない。今すぐよこせ」


 湊月はそう言って不敵に笑う。すると、男は笑い始めた。


「ハハハハハ!馬鹿なヤツだ。俺達にはフォースがあるというのを知らんガキめ。こんな状況でもまだその減らず口を叩けるか?」


 男はそう言って鉄を作り出し銃へと変化させ湊月に向けた。そして、何時でも引き金を引けると言わんばかりかニヤリと笑う。


 しかし、湊月もその状況になって笑って言った。


「フハハハハハ!愚かなやつだ!そんな脅しで俺が黙るとでも?たとえこの状況になったとしても、俺にそれは通用しない。それに、引き金を引けばお前は死ぬ。お前の負けだ」


「そうか、なら今すぐ引いてみな。その瞬間あんたの死は確定する」


「そうか。じゃあ殺してみろ」


 湊月はそう言って引き金を容赦なく引いた。しかし、湊月の持っている銃から放たれた弾丸は男に当たることは無い。男は顔の前に鉄の盾を作り出し弾いたのだ。


 そして、そのまま男も引き金を引く。すると、湊月に向けて無数の銃弾が放たれた。その弾丸は凄まじい勢いで湊月を襲う。そして、少しして静かになる。


「……死んだか。ったく、掃除が大変なんだよ」


「いいや、一瞬で終わるさ。全て消してしまえばいい」


 突如湊月がいた場所から声がする。男は直ぐに前を向いて確かめた。すると、そこからはなんとシャドウが現れたのだ。男はその事に慌てて机の上にあった電話に手をかけた。


『……』


「クソッ!なんで繋がらないんだ!」


 なんと、何故か電話が繋がらない。男はその事に慌てる。


「言っただろ?俺の弾丸はお前を貫くと。どうやらその前に電話線を貫いてしまったみたいだ。済まないな。間違えてしまって。きっちりと貫いてやるよ」


 湊月はそう言って銃を突きつける。そして、そのまま引き金を引いた。すると、男は全く同じようにして弾丸を弾こうとする。しかし、なんとその弾丸には影がまとわりついており、そのまま鉄の盾を貫いて男のこめかみに被弾した。


 男はそのまま脳を撃ち抜かれ絶命した。


「どうやら俺の弾丸はお前を貫いたみたいだ。言葉には気をつけるべきだったな」


 湊月はそう言って男を影で飲み込んで消す。そして、扉に手をかけ中にあるものを全て影の中に収納すると外へ出た。その建物に残ったのは何も無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る