第11話 作戦開始

 その日、湊月はレジスタンス達を手に入れた。これで、ムスペルヘイムを潰すための軍隊も手に入れたようだ。


 あと何が足りないか……


 今のところあるものと言えば、力と軍隊の2つだけだ。これだとまだ足りない。


「おい、シャドウ。これからどうするんだ?」


「頭が高いな。まぁいいが、私達はこれから名声を稼がなくてはならない。そのために、今日から我らは”宵闇の月華団”と名乗る」


「宵闇の月華団……?」


「そうだ。我々は今は30人程しか居ない。それなら、人々の名声が必要だ。まずは私達がこの世界に誕生したことを世界に知らしめなければならない」


 湊月はそう言ってアサシンブレイカーが入ってきた場所から外に出て周りを見た。


 銃声がどこからか聞こえる。それに、アサシンブレイカーの起動音もだ。


「なぁ、名声を稼ぐってどうするんだ?」


「簡単な事だ。マスメディアを使えばいい。それに、簡単なことがある」


「簡単なこと?なんだと言うんだ?」


「フッ、今行われている虐殺を止めることだ」


 そう言って近くに来たアサシンブレイカーを一機、影を使って倒した。それも、山並達から見えない場所で。


 湊月はそのアサシンブレイカーに近寄り外傷などを見た。やはり、上手く倒したからどこも壊れていない。


 湊月はアサシンブレイカーのコックピットの位置までジャンプした。


 ちなみに、コックピットは背中のバックパックの部分にある。


 湊月はそのコックピットの中を見た。人が死んでいる。どうやらさっきの影で確実に殺しみたいだ。


「よし、貰っていこう。キーはこれだ……パスワード……操作方法はこうだな」


 湊月は一瞬で使い方を覚え山並達の前まで移動した。


「っ!?まずい!逃げろ!」


「待て。私だ」


 そう言って中から出る。その様子に全員驚いて言葉を失った。湊月はそんな皆を横目に全員の役目を考えた。


 そして、すぐに全員に伝える。今回の作戦はこうだ。


 1、1人がこのアサシンブレイカーに乗り暴れる。恐らくだが、相手が俺達のことを舐めているだろう。だから、そいつは集中的に狙われる。


 2、そのアサシンブレイカーに乗った人を囮と思わせながら裏で工作する。ま、基本的にやることは爆薬を仕掛けるだけだがな。


 3、最後に囮にしていたアサシンブレイカーを逃がす。多分だが、これが1番簡単だ。


「おい、そんなに上手くいくのか?」


「お前らが言う通りに動けばな」


「……分かった」


 山並達はそう返事をして早速作業に取り掛かった。まず、アサシンブレイカーの動かし方だが、知っているものは少ない。


「そこの女。お前がこれに乗れ。動かし方は教えてやる」


 湊月はそう言って先程まで山並達と話していた女を指さす。


「はい!」


 女はそう言って近づいてきた。


「名前は?」


「え?あ、くれない玲香れいかです」


「よし、分かった。じゃあ早速だが、着いてきてくれ。これの動かし方を説明する。まず、ここにこのキーを差し込め。そして、パスワードを解除しろ」


 湊月はそう言ってアサシンブレイカーのコックピットに入ると、車の鍵のようなものを抜き取り見せてきた。紅はそれを受け取ると、アサシンブレイカーに差し込む。すると、パスワードロック画面が現れる。


 今回はパスワードは湊月が解除した。本来は使用者がするものだが、今回は仕方がない。


 ロックを解除すると、アサシンブレイカーが起動する。月華団の全員はそれを見て感嘆の声を上げた。


「操作方法は簡単だ。アサシンブレイカーには思考解析プログラムが搭載してあるから、お前が考えれば簡単な動作は出来る。例えば、歩くとか走るとかな。だが、難しい動きは出来ない。そういう場合は手動で動かせ。右が右腕、左が左腕だ。そこに指をかける場所がある。それでも指を動かすことが出来る。足は、足元に動かすためのアクセルが着けてある。ブレーキも一応あるが、あまり使わないな。大体の説明はした。俺自身もあまり動かすのは得意では無い。だから、無責任になってしまうがこればっかりは体で覚えろ」


「はい!」


 玲香は返事をするとすぐに動かすためのレバーを握った。湊月はそれを見て下に降りる。そして、玲香は試運転を始めた。


「……うん。……ここがこうね。シャドウ様!だいたい分かりました!」


「そうか。なら作戦を実行する。準備に取り掛かれ。お前らも準備をしろ」


「「「はい!」」」


 月華団の全員は返事をすると素早い動きで作戦の準備に取り掛かる。湊月もやるべきことをやるために動き始めた。


 それから5分後、月華団はそれぞれの位置に着き動き出した。湊月は街のほとんどを見渡せる高台から街を見下ろす。逃走経路はきちんと用意してある。


『さて、まずはアサシンブレイカーを潰さなければならない。ここからは傍受されている可能性も考え事前に伝えた呼び方で呼ばせてもらう』


『了解』


 通信機から月華団の返事が聞こえる。


(さて、どうしたものかね。相手の出方を知るのが先だが……だいたいは理解出来た。それに、相手の動きが単調すぎる。誘ってるのか?それとも、指揮官がただのアホか……まぁ、なんにせよ、乗ってやる意味もない)


『まず、α隊は前進しろ。恐らくそのまま真っ直ぐ行ったところに敵が3人ほどいるはずだ。そいつらはなんの能力を持っているか分からない。だから、50m程離れた場所で待機しろ。次に、β隊は地下を移動しろ。そこで渡した爆弾を仕掛けておけ。θ隊は高台からいつでも狙撃できるようにしろ。ω隊はビルに爆弾を仕掛けた後、すぐに脱出しろ。玲香、いつでも行けるか?』


『はい。いつでも出撃可能です』


『よし。では、合図をしたらすぐに動き出せ。武器は全て渡した。これらは全てムスペルヘイムがアサシンブレイカーの中に入れていたものだ。日本のものとは使い方が違うものもあるかもしれんが、大体は一緒だ。そこは後々説明していくとする』


『『『了解!』』』


 通信機から揃った返事が聞こえる。作戦は完璧だ。相手の動きがあればすぐに作戦を実行するだけ。簡単だな。


「なぁシェイド、影を操れば会話も聞けるんだよな」


「うん。聞けるよ。感覚を研ぎ澄ましてみて」


 シェイドはそう言って湊月の体に触れる。すると、感覚が研ぎ澄まされていく。どうやらシェイドが手伝ってくれているらしい。


「どう?」


「うん……分かったてきた……」


 段々と声が聞こえてくる。そして、ムスペルヘイム軍の会話が聞こえてきた。しかし、今の実力だと距離がかなり短い場所しか気書けないみたいだ。


(まぁこれくらいでいいだろう)


 湊月は頭の中で少し考えると、もう少し集中して会話を聞いた。


『なぁ、陛下は何を考えてるんだ?』


『こんな配置じゃ警備がガバガバじゃないか?』


『さぁ、陛下のお考えは崇高なものだ。我々には到底理解出来ない』


 そんな会話が聞こえる。どうやら3人いたらしい。まぁ、そんなことはどうでもいいが、今の会話でだいたい理解出来た。おそらく相手側は湊月達を誘っている。この感じだとトラップがあるだろう。


「どうする?作戦を変える?」


「……いや、ここは相手の誘いに乗ってやろうではないか」


「やっぱり、そう来ると思ったよ。ほら、動き始めたよ」


「フッ、分かっている」


『相手が動き始めた。ω隊はビルから出ることができたか?』


『あぁ、出来た』


『良し、なら玲香はそのビルのてっぺんを撃ち抜いてくれ。そしたらα隊は目の前にいる兵を殺せ』


『『『了解!』』』


 その声が通信機から聞こえた瞬間、巨大な銃声と共にビルが大爆発して倒壊した。

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