スイート・ハッピーライフ

小鳥遊 マロ

第1話 

「ふーっ♡」

「ひゃっ!」

沙苗さなえってココが弱いんだ〜」

 高校に入ってからできた友達のしずくは私の耳に息を吹きかけ、耳元でそんなことをささいてきた。

「もうっ! 勉強中だよ?」

 私は頬を膨らませながらプンスカと怒る。

「ごめん、ごめん」

 雫は私に謝るが悪びれる様子もなくニコニコ笑っていた。

「はぁ、一旦休憩しよう」

 私は手に持っていたシャーペンを置いて立ち上がる。

「おやつ取ってくるけど、雫は飲み物何がいい?」

「私は麦茶でいいよ」

「オッケー」

 雫の要望を聞いて私は階段を下りた。


「よいしょ、よいしょ」

 私は台所からおやつと飲み物をお盆にのせて階段を上がっていた。

「きゃあっ!」

 私は足を滑らせて階段で転ぶ。

「大丈夫、沙苗?!」

 大きな音を聞きつけて、私の部屋から雫が走ってきた。

「うん、大丈夫何だけど……」

「あちゃ〜、制服がビシャビシャだね〜」

「あははー、着替えないと。あと、汚れちゃったからここも片付けないと──」

 私が立ち上がろうとすると──

「沙苗って意外に可愛い下着着けてるんだぁ〜?」

 雫は顔をニヤニヤさせながら手を口に当てる。

「えっ?」

 雫にそう言われた私は自分の服を見る。

「────ッッ!!!!」

 足を滑らせて溢した麦茶で制服から透けて自分の黒い大人の下着があらわになっていた。

「ど、どどど、どこを見てるのっ!?!?

変態ッ!!」

 私は瞬時に胸を両腕で隠した。

「いや、私は女だけど──」

「そ、そそそ、そんなの──か、かかか、関係ニャイッ!」

 あまりの恥ずかしさに噛んでしまった。

「まあ別に隠さなくても、私の脳内にはしっかりと記憶されちゃったよ〜? 沙苗の大人な黒のし・た・ぎ♡」

「今すぐ、それを記憶から消してぇーっ!」

「まぁまぁ、取り敢えずシャワーでも浴びて来なよ」

「…………うん」

 私は渋々納得してシャワーを浴びに行くことにした。

 何かはぐらかされた気がするけど、まぁいっか。


「うー、気持ち悪い。早く脱ご」

 私はカーテンを閉めて麦茶で濡れた制服を洗濯機の中に放り込む。

「少し、太ったかな〜」

 私はお腹を触りながら呟く。

「沙苗〜、階段雑巾で拭き終わったよ〜」

「ありがとう、雫」

 私は背中にあるブラジャーのホックを外して肩紐かたひもを取り、それを洗濯機に投げ込もうとした。

「沙苗ぇーっ!!」

 すると同時に雫はカーテンを「バッ!」っと開けてきた。

「えっ?」

 何が起きたか分からず、私は固まってしまい無意識にブラジャーから手を離してしまった。そして、ブラジャーは自由落下によって床に落ちて私の胸があらわになる。

「あっ……えーっと──」

「──ッ!!」

 私は顔を赤面させ、何も言わずにカーテンを勢い良く閉め直してシャワーを浴びた。


「しーずーくー?」

「ご、ごごご、ごめんなさーいっ!!!!」

 私はシャワーを浴び終わり、身体にバスタオルを巻き付けて、雫を目の前で正座させていた。

「カーテン閉めてたよね? 何で開けたの?」

 私は満面の笑みで雫に聞いた。もちろん、もの凄く怒ってる。

「あ、あれは雑巾を洗おうと思って──」

「はぁ、まぁ雫は麦茶程度だったらシャワーを浴びないから仕方ないよね」

「それ、私が汚れてもシャワーを浴びない人みたいじゃん」

「でもあながち間違ってないでしょ?」

「それは、そうだけど……」

「まぁ、シャワーを浴びるって言わなかった私も悪いから──許してあげる」

「沙苗っ……ありが──」

 雫は私に抱き着こうとして立ち上がるも、足が絡まり転びそうになる。雫は何かに掴まろうとして手を伸ばすも、虚しくコケてしまった。

「痛った〜、うん? これは……」

 雫は起き上がると、自分の手の中にバスタオルが握られていることに気付いた。

「えー……っとー……」

 雫は顔を青ざめながら私を見上げる。

「ん?」

 私は何だか体がスースーする感じがしたので、バスタオルを引き上げようとする。

 しかし、肝心のバスタオルは雫の手に握られていた。

「なっ、なっ──!!」

 何が起こったのか瞬時に理解した私は羞恥さのあまり頬を真っ赤に染める。

「し、し──雫のバカァァァアアアッッ!!」

 私の羞恥の叫び声は家中に響き渡るのだった。

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