第2話

「まず一つ目、私がそちらのお嬢さんのことを、身分が低いからと言って差別したと言うのは事実無根です。私はただ『婚約者の居る男性にばかり媚を売るのはお止めなさい』と注意しただけですわ」


「注意だと!?」


「えぇ、そうです。そちらのお嬢さんはどうも婚約者の居る殿方にしか興味が湧かないようで。例えれば人のオモチャを欲しがる幼児のような感覚とでも言えばいいんでしょうか。手に入れた途端、興味を失うようですけどね」


「う、ウソです! わ、私そんなことしていません!」


 ケイトが目をウルウルさせながらそう訴えた。


「ウソではありませんよ? あなたに婚約者を篭絡させられた女性陣から相談されたんですから間違いありません。そうよね?」


 そう言ってカエラが周りに目を向けると、何人かの令嬢が頷きながら手を挙げた。


「そ、そんな...だ、だがなぜ彼女達がお前に相談するんだ!?」


 エルムは信じられないとばかりにカエラを見やる。


「それは殿下、あなたのせいですわよ?」


「お、俺の!? な、なんで!?」


 エルムは訳が分からなかった。


「殿下がそのお嬢さんとずっと一緒に居るから、本人に直接抗議したくても出来なかったんです。だから婚約者である私に相談して来たんですよ。あの女を何とかしてくれって」


「......」


 心当たりが有りまくりのエルムは黙り込んでしまった。


「殿下の婚約者ということは、現時点で未来の国母に一番近いのはこの私ですから、相談されたら動かない訳にはいきません。だから注意したんです。それだけですよ?」


「そ、そうだったのか...」


「まぁその結果、面白いことが分かったんですけどね?」


「面白いこと!?」


「えぇ、相談を受けたんでちょっと調べてみて分かったんですが」


 そこでいったんカエラは周りを見渡した。そして主に男性陣に向かって声を張り上げた。


「ケイト嬢と付き合ったことがあるという者は手を挙げなさい!」


 そう叫んでも、男性陣の中から手を挙げる者は誰もいなかった。


「どうしました! 女性陣が勇気を出して手を挙げたっていうのに! あなた方、それでも男ですか!」


 カエラは更に厳しくそう言い放った。その様は未来の国母に相応しい堂々とした姿だった。


 するとおずおずと言った感じで、ようやく数人の男子生徒が手を挙げた。


「よろしい! この中でケイト嬢と肉体関係を持った者はそのまま手を挙げていなさい!」


 手を下げる者は誰も居なかった。


「ウソウソウソよ~! 私そんなことしてない~!」


 ケイトが喚き立てるが、その叫びは空しく響くだけだった。

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