第7話 リルアとアメ

 あー、なんなんだよ、リルアのやつ。何言われるのかと焦ったじゃねーか。いや、俺も俺だよ。何焦ってんだよ。


 あー、なんだよこの気持ち。恥ずかし……


※クウガに抱き着くリルアの背中をトントンと叩く音


「リルア。腹減ったの分かったから、ちょっとどいてくれ。重い」


※バサッという感じのリルアが顔を上げた音


「えっごはんっごはんくれんの? やったあ!!」


「あーはいはい。で? お前、地球のもんとか、食べれんの?」


「んー、わかんない。けど、お腹すいた」


「いつも何食ってんの?」


「んー、ケピパルテとか、パルマルルとか、あ! アメダーマル、大好きっ!」


「はぁ? 意味わかんねーし。けど最後のはアメ玉っぽいな。アメ玉なわけねーけど。試しに食ってみるか? ちょうど持ってるから。ほれ」


※ポケットから取り出すガサガサと言う音


「んー? なにー? これ、食べてみよーっと。あーん」


「あー! ちょっと待てっ! 袋ごと食うなっ。ちょ、貸してみろっ。こうやって、(飴を袋から出すガサガサという音)袋から出して食べるんだ。ほら、食ってみろ」


「わっ、なにこれ。裸にしたら可愛いっ。食べさせてー。あーん」


「え? あぁ。ほら」


※口の中に飴を入れるコトンという音


 小さく開けられたリルアの口の中に、アメ玉を入れる。コトンとリルアの口の中に入って行くアメ玉。なんだよ、この感覚。なんとなく……くすぐったい気分だ。


「んー?」

↑飴を口に頬張ったままのリルアの不思議そうな声


 アメ玉を口に含んだリルアは、なんとも不思議そうに首を傾げている。


「あぁ、口の中で転がしながら舐めるんだよ。リルアの星には、こーゆーのないのか?」


「…………」


「うまいか?」


「………………」


 唇を閉じたまま、やっぱり無言のリルア。けれどほっぺたを時々、アメ玉でポコンと丸くさせたりなくなったりさせながら、なんとも嬉しそうに微笑んだ。どうやら気に入ったらしい。


————

——————


 リルアの口の中のアメ玉がほとんどなくなった頃、だんだんリルアのまぶたが重たくなってきて、うつろうつろと舟こぎをしはじめた。


「え? おい? リルア、どーした? 眠いのか?」


「んにゃー、なんか、たべたらねむたくなってきたぁ〜」


「え、ちょっと待て、アメ玉一個くらいじゃ腹の足しにもならんだろう?」


「ん〜? なぁに? リルア、ねむい。……ねるっ……」


 ※パタッ…… スースースー

↑リルアが倒れる音と、寝息


 リルアはそのままパタンと真横に倒れ、スーッと眠ってしまった。



 え、ウソだろぉ?? おい、待てよ、寝るかぁ? どんだけ自由なんだよ、リルアのやつ……


 戸惑う俺にはお構いなしに、リルアはスヤスヤと眠りこけている。起きてる時より一層あどけない無垢な顔。


……眠ってたら、物静かな可憐な少女に見えるのにな。



 宇宙人てのは始めて見たが、やっぱり独特の服装だなぁと思う。

 肌の色はピストルで大きくなった時に人間ぽくなったが、服の色は相変わらずメタリックなピカピカした色で、肌にピタッとした生地の、ノースリーブとショートパンツ。

 

 腰についているベルトには小物入れみたいなカバンがつけられていて、太ももに巻かれたベルトには、さっきのピストルが刺さったケースがついている。

 

 左手首には時計のような物。すべて身につけて身軽に動けるようにしているのだろうか。


「あーあーもう、こんなところで寝て……宇宙人て風邪ひいたりしないのかな」


「スースースー」


「リルア? もう、仕方ない。布団でも敷いてやるか。まあ……宇宙船で長旅した後にあんなに足バタバタさせてたんだから、疲れたんだろうな」


※クウガの足音、押し入れを開けて布団を取り出す物音、布団をばさっと敷く音


「よし。リルアー、布団敷いたから、運ぶぞ?」


「スースースー」


「まったく。ガチ寝かよ……。抱き上げるぞ? (※抱き上げる音)よいしょっ……と……」


「スースースー」

↑抱き上げたのでリルアの寝息少し大きくして距離感近くする


「軽……リルアのやつ、見た目よりだいぶ軽いな……」


「スースースー」


「……黙ってたら普通に可愛いんだよな。なんか……甘くていい匂いするし……」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る