第34話 ゴーストライター

 出版業界には『ゴーストライター』と呼ばれる人たちが一定数存在する。ドラマや映画を思い浮かべる読者も多いだろうが、ベストセラー作品の中にもゴーストライターが執筆した作品は少なからず存在する。

 ゴーストライターに求人票はなく、資格もいらないが、その一回の契約料は最低でも五十万円とかなり高額だ。その依頼相手が著名人である場合、二百万円を超えることもある。新倉井蒼氏のように高齢の書き手が年少の書き手の作品として発表した事例は多く、タレント本の大半は聞き語りのたぐいだと言われる。



※聞き語りとは



 聞き語りとは依頼主が語った内容をゴーストライター自身が筆記し、その書いた内容をゴーストライター自身がその依頼主の個性に合わせ、帳尻合わせにするものである。著作権上は微妙なラインのため、有耶無耶にされることも多い。




 ――ゴーストライターの募集の広告もネットで検索したら腐るほどあった。ちょっとショックだった。村上春樹の『1Q84』の中で展開されるような、最年少詐欺が実際にあるとは! 私は自慢じゃないけど、ゴーストライターを使用したことはない。当たり前じゃないか、と忠告する皆さん、意外にもゴーストライターは普通に寄生しているようで、私も風のうわさでゴーストライターの存在を聴いたことはある。

 隣に付き添いのミツル。ミツルは激怒こそはしなかったものの、静かな怒りに駆られていた。

「何のために書いているのか、誰のために書いているのか、その原点を忘れてはいけない」

「人工知能が小説を書ける時代になったらもっと、有能なゴーストライターが増えるかもね」

 私が言ったらミツルは悲しそうに口角を下した。

「今や、チャットGPTなどの人工知能が詩や小説を書ける時代に突入している。2023年に入ってから文学とは何か、今更ながら考えざる得ない時代になっている」

 人工知能。悪魔の登場か、それとも救世主か。

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