第27話 死霊女王
僕達の活躍にライブ配信はバズったようだ。
フォロワーが270000人に達し、僕はレベル27に上がった。
全能力値:1350となり、明らかに
しかし今回のレベリングはガチでヤバいな……。
特にヤンが加入してからか、視聴者さんのウケがいいのもある。
あの裏表のない純粋な性格に、健康的な褐色肌とビキニっぽい露出度の衣装に加えてのナイスバディぶりが票を分けたと言ったとこか。
それにレベルアップしたのは僕だけじゃない。
ネムも強敵を沢山斃すことで大幅な強化が図れている。
今じゃレベル20か。《使い魔》の恩恵があるだけに成長が早い。
月渚も頑張っているだけあり、レベル25になった。
まぁ妹の場合、魔獣化して《捕食》スキルでモンスター食らった時の方が爆上がりするんだけどね。
ヤンもスパルトイとの戦闘でレベル27と急成長を見せている。
《眷属》契約により全能力値が+80ほど上乗せされていた。
この調子ならどんな敵だろうと怖くない。
そう思いながら、僕達は最終地点である部屋の扉を開けた。
まるで古代遺跡のような石造りであり、謎のモニュメントらしき物が幾つも並べられた広々とした部屋だ。
魔力石で作られているのだろうか、室内はほんのりと明るい。
奥側の中央には、長方形の棺桶みたいなモノが高台に乗せられ祀られている。
「あれが祭壇か?」
「そうっす! ご主人様、どうか気をつけるっす! ある意味、敵のアジトみたいな部屋っす!」
一度訪室したことのあるヤンの話によると、石床や壁から大量のモンスターが湧き出る部屋でもあるとか。
ならば、真っ先にあの祭壇らしき物体を破壊すれば事は収まるかもしれない。
すると突如、祭壇の石蓋が噴射するかのように飛び出し開けられた。
ズドンと石蓋が床に落下したと同時に、祭壇の中から何かが浮上していく。
それはボロボロの魔道服を纏う骸骨だ。
「こいつが『
《鑑定》スキルで骸骨を調べている。
思いの外、あっさりと表示された。
【鑑定結果】
名前:イリス
レベル:70
職業:
体力:1050
魔力:9300
攻撃:450
防御:400
命中:500
魔攻:9000
魔防:9100
敏捷:450
固有スキル:《百鬼》《白夜》《蘇生》〈自己再生》《不死》《不老》《魔力増強》《速唱》《闇波動》《MP吸収》《HP吸収》
魔法:死霊魔法、闇系魔法、黒系魔法、炎系魔法、土系魔法、水系魔法、雷系魔法
状態:
つ、強ぇぇぇぇぇっ!
レ、レベル70だとぉ!? ひょっとして魔王級なのか!?
イリスってのは生前の本名なのだろう。
にしても
固有スキルもそれっぽいのばかりでヤバそうだ。
……ん? 『
どういう意味だ?
何かに呪われているという意味か?
はっきり言って、こりゃ無理だわ。
レベルが違いすぎる。まるで勝てる気がしない。
冒頭であんなにイキってたのに、格の違いを見せつけられた心境だ。
今なら戦闘を回避して逃げられるだろうか?
しかし必ず一人はダンジョンに残らされるというルールがあるらしい。
俺達が立ち竦む中、上空に浮かぶ
途端、石床から何かが湧き上がり浮き出てくる。
つい先程、斃したばかりの骸骨戦士のスパルトイ軍団と首無し騎士のスリーピーホロウが50体ずつ、合計で100体ほど出現した。
「こ、こいつらは!?」
ヤンから話を聞いていたとはいえ、やたらと数が多くないか?
どういう現象なのか《鑑定》で調べたら、イリスが持つ固有スキル《百鬼》の能力であると判明した。
なんでも
それでもまだ、奴の
まさしく
などと褒めている場合じゃない。
僕達は完全に囲まれてしまったじゃないか。
「クソッ、これじゃ逃げることもできない! 戦うしかないのか!」
「お、お兄ちゃん……」
「どうした月渚? 怖いか? 大丈夫、必ず兄ちゃんが守ってやるから離れるなよ!」
「違うの……お腹空いた」
「え?」
僕が多めに渡していた干し肉をいつの間にか全て平らげてしまったようだ。
早く予備の食料を渡さないと、また月渚が魔獣化して――。
いや待てよ。
僕の頭にある思惑が過る。
月渚ならこの窮地を打開できる筈だ。
兄として頼ってはいけないところだけど……今はそれに賭けるしか術はない。
僕は罪悪感に苛まれながらも、連続で《誘導》スキルを発動した。
周りを囲む、スパルトイとスリーピーホロウに向けてだ。
月渚の体が豹変する。
肥大化され歪で隆々とした漆黒の装甲を持つ、禍々しい巨大な一角の魔獣へと
『おニィちゃ~~~ん! あれタべていいんだね~~~ん!!!』
月渚は歓喜の咆哮を上げ、《誘導》スキルに則って突進しモンスター達を鷲掴みにして大口を開ける。
スパルトイとスリーピーホロウは抵抗し斬りつけるも、月渚の装甲のような皮膚に剣が通ることはない。
仮に運良く傷を負わせても、《自己再生》で瞬く間に修復されてしまう。
また《拘束》で周辺にいるモンスターの動きを封じ、次々と《捕食》スキルで食らい吸収していく。
果たして怨霊の塊である敵を体内に入れて空腹感が満たせるのか謎だけど。
「なんっすかぁ!? あれなんっすかぁぁぁ!!!? ルナ殿がとんでもないバケモノになったっすぅぅぅ!!!」
初めて見るヤンは戦慄し酷く狼狽している。
そういや伝えてなかったな。ここまで来たら全てを話すしかない。
「あれが月渚の職業が『???』である理由だよ。まだ断言できないけど、《捕食》スキルを得たせいで『魔王候補』の可能性がある……だから僕達は旅を続けなければならない。真実を知るため、そして月渚を普通の妹に戻すためにだ。」
「……なるほど、そういうことだったすね。であれば魔王軍もルナ殿を放って置かないっと思うっす。いずれ向こうから接触する可能性がある……案外そいつらから兄貴の所在が聞けるかもしれないっす。わかったっす、ウチはご主人様とルナ殿を信じるっす!」
互いの利害が一致したこともあるのか、ヤンは理解を示してくれる。
僕はペスト仮面越しで瞳を潤ませ頷く。
ヤンに向けて「ありがとう!」と礼を伝えた。
「よし! ネムとヤンは月渚を援護する形でモンスターを狩ってくれ! 僕はあの
「ご主人様、わかったミャア!」
「了解っす! やってやるっす!」
僕の指示で、ネムとヤンは行動を起こし離れていった。
これで思惑通り、奴と一対一で戦うことができる。
上空に浮く
「それじゃ始めるとしょう――ライブ配信のクライマックスだ!」
:最高に盛り上がってきた!
:にしても黒兄の策士ぶりよw
:死霊女王とタイマンするため、黒兄は禁じ手を使ったてこと?
:そうそう。ルナたんの魔獣化を利用した上でね
:普通なら爆弾投下だけど、黒兄は《誘導》もっとるから《捕食》対象を絞ることができるんやで
:丁寧な説明、乙
:ヤンたんの物分かりの良さにも乙
:マジ純粋な子で好感度爆上がり中
:けど相手はレベル70のボス。絶望的じゃね?
:そこは黒兄、きっとなんとかしてくれる筈
:頑張れぇぇぇ、黒兄ぃぃぃぃ!!!
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