邂逅 その弐 そして当主として父としての思い

凄惨 頭のなくなった竜だったモノは

今や動かず紅を広めるのみだった



心の臓が 魂が 鳴り止まぬ

冷や汗すらある

いつも冷静なバードロットですら例外でなかった。


我が子も従者も私達も無事だ

傷ひとつない。


馬達を落ち着かせ走り出した


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


少し異様なところに来てしまった

森が異様に静かなのだ。


何というか、生気を感じない。

虫、植物、動物、妖精

そういったものがいるから森は静かであり

それでいて夜も賑やかなのだ

だから怖がるな


これが父の言葉の一つだった。野営をするとその息吹を感じる時がある


しかし今回はそれが静まっていた

そしてその元を探すよう、まるで

誘われ引かれるかの如く馬車をとめ、

森の奥の方へ進んでしまった。


周りの光景は異様だった

とある一本の木を起点として

他の木々がまるで跪き敬い、恐るかのように

木々いやこの森そのものが歪んでいるようだった。


歪んだ木々だけでなく

一部が綺麗に抉られたもの

そして頭部やら体の抉られた魔物の死体も

ありその木以外は赤く染まっていた


そしてその木の下にいたのだ


そこにいたのは、天使

いや厳密に言えば天使のように可愛い

黒髪の少女、しかもエルフだった。体の大きさからして8歳〜10歳ほどだろうか


しかしエルフだが髪の毛がとても黒い

夜を描いたかのようだ。


しかし、すぐに我に帰った。この子から溢れるこの異様な魔力、あの時よりは大分マシだが


ここで切るべきか


いやそうすべきなのだろう


私には多くの領民が待っているのだ。危険をそのままにしてはおけない



▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 


なぜだろうか、放っておけなかった。

なぜ私は屋敷へとつれてしまったのだろうか


貴族同士の社交界でも言われたことがある

「辺境の出立で仲間や家族思いなお前の気持ちはとても素晴らしい。しかし、うまくやりこなし、時にはそういった判断をしなければ滅びるぞ」

そう言われた。


しかし、どうして、どうやってこの安らかな寝顔を見て切ることができようか


しかしそれでも完全に信用したわけではない

が...とりあえず飯を食わせバードロットに

監視をさせつつ私も慎重に審査をするとしよう


そして足元にあったこの紙を

この子には悪いが見せてもらおう



私の可愛い子へ。森が続き

お月様とあなたの好きな花の香りが

孤独を包み隠すでしょう

風のゆくままどうか どうか私のことなど忘れて進み続けなさい

あぁどうか妖精様 ◼️◼️◼️ ◼️◼️◼️様

我が子をお願いします

私の可愛い

ユリア フロワーヌへ




▲▲▲▲▲▲▲▲▲


この家に来てから数日は従者、我が子

そしてユリア本人ともに怖がりあう

という事態になってしまっていた。

しかしある日を境にあかるくなっていった

そんな気がする


体も顔色も良くなり、言葉や食事の作法

カトラリーの使い方をすぐに覚え、

本を読み耽るようになって行った。


そこでエルフや妖精、森に関する本をいくつかやったり、遠方からエルフの森に自生するという花、民族衣装の上着をあげてみたが

今ひとつだった。


もしやトラウマや記憶障害の類だろうか。


体も、言葉や作法、識字もよくできている

しかし一番心配なことは精神面だ


来た時からそうだ。この子はどこか

異様だ、妙に大人びている。私がこの子ほどの年齢の時、よく悪戯をし、怒られ、畑仕事をする時怪我をして、また悪戯をして

マナーすらまともに覚えもしなかった。


しかし父は怒りながらも優しかった。


当然我が子の男児達もそうだった今も稀に良くする。悪戯と食べ方は健康の兆が出る。


しかしこの子はそれを守っている。

食べる量が少ないわけではない、ただ

何か子供とは思えない所があるのだ。


バードロットやメイド達に聞けば杞憂できちんと子供らしい面もあるというが、私の前ではどうも固い。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


ある日の朝、ユリアの魔力が

あの時程ではないが揺らめいた時があった。


駆け込んだのは私ではなく

最近仲の睦まじい姿をよく見る我が娘達であった。そして私は部屋の近くに行きはしたが

中に入れてもらえなかった。娘達曰く、

「「ここからは私達の仕事ですお父様」」

とのことだった



どうやらユリアは女の子から

レディへとなったらしい。


エルフとは言えども成長はする。


同世代の子供や同じ種族との関わりも必要

だと思い付いた。


稀にやっていた社交界や

農業や仕事をする民達のための食事会や

舞踏会をしていたが増やそうと思った。


そして近いうちにあの事を伝えなければ

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