episode5 彼女の魔法と俺の魔法

前回はアラッサスを倒したところと、ブロッケンによって蒼穹の国の水不足が解決した所まで読んだね。今日は彼女の魔法がたくさん出てくるかも。


蒼穹の国を出て2日がたった。その頃にはやはりお金であったり、食料であったりばらつきはあるが旅に必要なものが少なくなってくる。そういう時は大抵、小さな村や町でクエストを受ける。今回受けたクエストは

「ユリア、今日は魔法耐性の低い魔物を相手にする。だからお前が頼りだ。」

そう今日は魔法耐性が低く、攻撃耐性の高い魔物を相手にすること。そうなると俺の出番は殆どない。

だが逆にユリアの出番はいつもの2倍になってしまう。こういったことは、クエスト前などにしっかり確認するのが大事だ。しないと大体、


「おいっお前ら今日は何もしていないのに取り分が一緒ってどういうことだ!!」

「確認していないお前が悪いんだろ〜」

というふうになる…。それによってチームの崩壊というのも困るので俺達はしっかり確認を取る。


「じゃあ今日は私の出番が多いってことだね!よ〜し頑張るぞ〜」

だけど…ユリアの様子を見る限り俺が戦えても戦えなくても頑張っていただろうということが分かる。

さて、考え事をしていたらいつの間にか、目的地についてたみたいだ。

ここは、ユリアスラ湿地。ここに出現する、デミアリザードが討伐対象だ。


「イーゼル。デミアリザードがいたよ!」

早速現れた、あいつらは硬い鱗を持っており、剣やハンマー等の武器が効かない。けれど、魔法耐性が全魔物の中で最も低い。なので、


「光焔はここ、落陽はなく、太陽は落ちずとも雷の炎は落とされた!至れ紅蓮の誓い

ヘル・フレアっ」

下級魔法でもかなりのダメージを与えられる。

実際に、やってみたが…酷いなこれは手加減してこれか。

「え、ま、待って!私が手加減すら出来ない女みたいに言わないで…」

きっと炎属性が駄目だったんだそうだろう?

「うん…多分属性相性が良すぎたんだと思う…」

よし、じゃあ次だ。もう来てるよ?

「え、あぁ、う、唸れ大神、大渦を生み出し海龍。呑み込まれしものに希望なく、救いなく、ただ絶望のみが待っている…

シー・リヴァイアっ」 

「え、嘘っ。これでも駄目っ?!」

よし、もう一回。

「う〜。世界樹は加護を与え、妖精は巡り、精霊は微笑む。自然とは世界と一つ。破壊と再生は表裏一体。願え、

ノア・バースっ」

あ、上手くいった。

「え、ほんとっ?良かった〜。」

ユリアは疲れたのかヘナヘナとしゃがみこんだ。ここでは言っていないだけで多分143回位は頑張っていたはずだ。

そんなとき、遠くから何処かで聞いたことのある咆哮が上がった。

「イーゼル。これ、龍だよね?」

ユリアの質問に答える暇は無かった。あのときとは違い、原初の恐怖を呼び起こされるようだった。

「ユリア、逃げ…

そう言いそうになったとき彼女の顔を見てしまった…覚悟を決めた顔だった。誰よりも生き抜く覚悟を決めた目だった。なら俺がやるべきは彼女が唄うまでの時間を稼ぐこと。

「ユリア。思い切り唄え。」

そういうも彼女は俺を囮にするのさえ嫌がった…彼女は覚悟を決めた。なら俺も覚悟を決めねばならない。そう思い…あの力を使うことに決めた。


「墜ちた世界。穢れし妖精。我が身はとうに滅びている。楽園はなく、落園はある。矛盾をここに。




トラジェディック」

この魔法の効果それは…自身への不壊属性の付与。そして攻撃した相手への不治属性の付与。自分は絶対に壊れず、逆に相手は決して治らない。これは精霊だった母を殺した罪。だからこそ、妖精達は受け入れない。半妖精であってもだ、使いたくはなかった。けど、あいつとまだ旅をするために…妹を見つけ出すために。初めて醜い妖精は、自分の為にこの魔法を使う。


「   」

ふと、あいつの声が聴こえた気がした。


だけど今は気にしない。ただ、龍を倒す。倒せなくても傷つける。最初は避ける。傷ついたら死ぬとでも言うように、何度か繰り返した。頃合いを見て、龍に攻撃をした。

龍の傷は治らない…龍の目には戸惑いの表情が。


…治るわけがないだろう」途中から声に出ていたのか龍は怒り狂ったように吠えてきた。けど効かない。壊れない。痛みはある、けれど戦える。

「イーゼルは本気を出した。なら私も、できる範囲で頑張らないと…」

そう言うとユリアはより濃密な魔力を練り始めた。

強大で神々しい光の渦。いま、俺は神話の物語でも見ているようだった。


「神々よ。我らは今、神話の時代を駆け上がる。英雄となりし者。剣を取るは勇者。祈りを捧げるは、かの姫である。精霊は人々へと力を貸す。あぁ、至れ架光の渦。


ソバルーディエ・クロシア!」


全力だった。私が唄える魔法の中で、最も強い魔法だった。けれど、あの龍には敵わなかった…

もうだめだと私も、彼も、思ってしまった…。そんなとき、助けてくれたのがヘルメシアという女性だった。


「イーゼル!大丈夫か?あぁ、大丈夫そうだな!!そんな目ができるんだ。」

え、そんな目?ってあぁ、コラ、イーゼルそんな風に睨んじゃだめでしょっ!

悔しいものは悔しい?だからって駄目なものは駄目ーっ!


あらあら、今回2人はとっても強い龍に負けてしまったみたい…。それにヘルメシアという女性。ここからどうなるのかしら?

今日はこれでおしまい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る