陰キャの俺が世界的有名な俳優の娘に惚れられている件について

Edy

とても凄い美少女を助けてしまった

 俺は大のアクション映画好きだ。トム・○ルーズ様、クリス・プラ○ト様、合っただけで興奮して気絶してしまう自信がある。

 そして今日、日曜日。【ワールドロード】がついに日本で撮影される。主演は伝説の俳優、クリス・ミラーだ! オタクな僕はあらゆるネットの情報や今までのパターンから推測しついに撮影場所を割り出した。だから見学しに行く。


 とは言っても撮影見学というわけでもない為目立たない服装で行こう。双眼鏡で離れたところから迷惑にならないように。


 電車で片道2時間………痛い出費だけどこの目であの伝説の俳優を生で見ることができるんだ!


「うわぁ! 本物のクリス・ミラーだ!」

「すげぇ、マジでかっけぇ」

 

 マンションの屋上(許可を取った)に行くと邪魔にならずよく見える場所には既に俺と同じ考えの人がいた。 

「はぁ……! 生の撮影だ」


 やばいやばいやばいやばい! 生クリス! ってあの娘はたしか? 

 

 撮影現場の端っこにいたのはアリシア・スター、クリス・ミラーの一人娘。五歳の頃から既に絶世の美女と約束されたほどの容姿、送風機が彼女の明るい金髪を靡かせる。………かわいい 

 

「おい、あれやべーんじゃねえか?」

「確かに、事故かよ」


 直後に大きな音がする。撮影場所であるである工事現場のセット、その骨組みが外れて崩れ始めていた。


 眼の前の光景にショックだったがクリスはその持ち前の運動神経ですぐに抜け出した。他のスタッフも同様、崩れ行く足場から避難していた。良かった……怪我人はいなさ


『キャーーーー!!!』


 気づいたら体が勝手に動いていた。

 屋上のフェンスを乗り越えて近くの建物の屋根に飛び降りた。屋根の上を走り電柱の上を跳び、別のマンションのベランダを登る。


『アリシア! 直ぐ助けるから頑張れ!』


 アリシアはネジが外れて今にも落ちそうな傾いた足場に両腕で必死にしがみついている。クリスは他スタッフの静止を踏み切って娘を助けに行こうとするも足場が不安定で大人が乗ったら壊れそうだ。直ぐに撮影用のロープを手に取る。


 ネジが完全に外れてアリシアのいる足場は落下する。幸いにも他の骨組みに引っ掛かるがその衝撃でアリシアは左手を離してしまった。片手では耐えられずに直ぐに落ちてしまう。


「間に合え!」


 あと少しでつく! だけど途中に足場がない。どうすれば………


「えらいこっちゃ~」

「それ借ります!」


 屋上で水やりしていたおじいちゃんのホースを奪い取る。先端を投げてまだ安定している骨組みに引っ掛けて飛び降りる。骨組みにのり崩れ行く中を駆け巡る。


 しかし無情にもアリシアは手を離してしまった。今の俺なら手が届く。でも届くだけ。俺も落ちる。


「クリーース!!!」


 大声で叫んだ。唯一助けられる方法。確率はゼロに近い。それでもやるしかない。


 俺も跳ぶ。アリシアを抱き締める。首かけ双眼鏡の紐をパイプに引っ掛ける。しかし貧弱な為直ぐに千切れた。それでも良かった。ほんの僅かな時間が欲しかったから。手を伸ばす。


『アリシア!』


 憧れの人が手を取った。


 ロープを自身に結んで飛び降りたクリスが俺たちを抱き締める。スタッフの皆がロープを引っ張っていた。そのまま俺達は飛び降りるシーンの為の安全マットの上に着地する。


『アリシア! 無事かアリシア!』 


『……パパ……うん、大丈夫』


『良かった!………良かった……本当に』


 泣きながら娘を抱き締める。娘も抱き締め返す。

 

『娘を……アリシアを助けてくれてありがとう』


 泣きながら笑顔でクリスは言ってくる。ごめんなさい。英語わかりません。


「あ、えーと」


「ありがとう。貴方は私の命の恩人です」


「いえいえ、たいした事は」


 たいした事、その言葉をいった瞬間、自身の行いを思い出す。おじちゃんのホースを多分だめにしたし不法侵入、撮影現場を土足で踏み荒らした。


「あ、あ、あ、あ、あ」


 頭が真っ白になった。怖くなってその場から全力で逃走した。


 気づいたら家に居た。


「はあ、疲れた………っ!」


 腕を見ると血が出ていた。怪我していたのか、いつ……いいや。何も考えたくない。手当して風呂に入ってご飯食べて寝よう。


 俺は倒れるようにベッドに眠る。スマホに通知がはいる。クリス・ミラーがツブヤイターを更新した内容だった。


 それは全世界で何千万も拡散されていった。




 




 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る