~おっぱいが恐れられる世界で~ 少年はおっぱい集めて旅します

ゴリ夢中

第1話 その1 目覚め

 ここはとある国のとある広場、

まばらにいる人たちが思い思いに過ごしている。


 そんな中、二人の男女が和気あいあいとじゃれあっていた。



「ほ~らレニーくん、こちょこちょ~♪」


「もう、シルヴィお姉ちゃんやめてよ~♪」



 性格には一人の少女と一人の少年である。


 レニーと呼ばれた少年、レナードは

黒く短い髪に袖や足を出した簡素な出で立ちで、

背は低く年齢は7歳。


 そしてシルヴィと呼ばれる少女、シルヴィアの歳はおよそ15、

彼と同じく黒い髪が肩にかかるまで伸ばされている。


 服装はシャツのような服にスカートと、

周囲の人たちと同じような服装をしていた。


 身長はレナードと比べてかなり高く、

年齢を鑑みてもかなりある。


 しかし、それ以外の身体付きはむしろ年齢に不釣り合いであり、

特に胸部はほとんどふくらみが見えなかった。


 もっとも、この世界ではそれが当たり前である。

女性の胸はほとんどの場合大きくなることはない。



「もうダメ、降参するから許して~」


「へっへ~、お姉ちゃんの勝ち~♪」



 じゃれ合いも終わったのか、

二人は草地の上に向かい合う形で寝転ぶ。


 一見すると年の離れた姉弟に見える彼らは

いわゆる幼馴染という関係である。


 家が近く、ときどきレナードが遊んでもらっている、

そんなどこにでもいる普通の関係。


 いずれ年月を重ねれば自然と疎遠になるか、

あるいは多少なりとも良好な関係を築いているか、

いずれにせよよくある関係が続くはずだったが・・・。



「シルヴィお姉ちゃん、少しくらい手加減してくれてもいいのに・・・」


「ふっふっふ~、勝負の世界は厳しいのだ~。

キミも独り立ちしたら冒険者になって世界を巡りたいんでしょ~?

だったら今のうちに・・・」


「・・・? ねえシルヴィお姉ちゃん、これなに?

包帯みたいなのが服から出てるけど・・・、

もしかして怪我してるの?」


「え・・・? あっ! ま、待って!

触っちゃダメ・・・!」



 服の裾から出ている布切れに気が付き、

そっと手に取ってみるレナード。


 シルヴィアの制止も間に合わず、

元々緩んでいた「さらし」は容易くほどけてしまった。


 途端に抑えられていた彼女本来の肉体、

豊満な胸が服の下で存在を大きく主張する。



「えっ・・・? シルヴィお姉ちゃん・・・?

それ、なに・・・?」


「あっ・・・、だ、ダメ、見ちゃダメーっ!」


「わっ・・・、むぐっ・・・!」



 ほんの一瞬、時間が止まったようになったシルヴィアは

なんのつもりか慌ててレナードの顔を胸に抱く。


 服を着ていてもはっきり分かるほど巨大な、

持ち主の頭部と比較しても大きい胸に

彼の頭は完全に閉じ込められてしまった。



(なに・・・、これ・・・? おっきい・・・、苦しい・・・、

でも、すごくやわらかい・・・)


「・・・っ! あ、ご、ごめんなさいレニーくん!」


「ぷはぁっ」



 ようやく自分のしていることに気付いたシルヴィアが

慌てて彼を抱擁から解放する。


 レナードは何度か呼吸を繰り返し、

そして当然の疑問を彼女に投げかけた。



「く・・・、苦しかった・・・、

ね、ねえ、シルヴィお姉ちゃん、その胸に付いてるのはなあに?」


「こ・・・、これは、その・・・、

なんでもないの、なんでも・・・!」


「なんでもない・・・?」


「あ、あのねレニーくん、レニーくんはまだ知らないだろうけど・・・、

とにかく、今日のことは誰にも言わないで?

二人だけの秘密にして! お願い!」


「えっ・・・、う、うん、分かった・・・」


「ありがとう・・・、あの、私、今日はもう帰るから、

レニーくんも気を付けて帰るんだよ、じゃあね!」


「あ、シルヴィお姉ちゃん!」



 シルヴィアは自分の胸を必死に押さえながら、

周囲を気にしつつ足早に公園を出ていく。


 その背にかけた声が届くこともなく、

レナードはただ茫然としていた。



「どうしたんだろう・・・、いつもなら

一緒に帰ってくれるのに・・・」


「それに、お姉ちゃんの胸についてたあれは一体・・・、

おっきくて、やわらかくて・・・」



 自分の知らなかったものについて考えを巡らせるが、

とうぜん何かを思いつくはずもない。


 それどころか、その見た目や感触を思い出し、

なぜか頬が染まっていた。



「・・・なんだかほっぺが熱いや、

病気になったみたいに・・・」


「今日はもう帰ろっと、それでお母さんに・・・、

あ、秘密って言われたから聞いちゃダメだよね」



 余計に分からないことが増えてしまったが、

レナードは思考を切り上げて家路につく。


 いつも二人で帰る道を一人で歩いていると、

言い表しがたいもの寂しさを覚えてしまう。


 少年は知らなかった、シルヴィアの胸に付いていたのは

とても大きな『おっぱい』であることを。


 少年はまだ知らなかった、この世界において

巨大な『おっぱい』は人々から恐れられていることを。


 少年はまだ分かっていなかった、

今日の体験が大きな目覚めになっていることを。


 そして少年はまだ気付いていなかった、

これが大好きなお姉ちゃんとの別れであったことを・・・。


 この物語は、一人の少年と

大きな『おっぱい』を持つたくさんの女性たちが織りなす

ある意味では大きな物語・・・。

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