その⑦

日はもう既に陰り

あたりにはすっかりと帳が降りていた。


窓から外を見た。

近隣の家屋から漏れ出る光の粒達は

冷えきったアスファルトの上に踊っていた。


少女は窓辺で手紙を、

月明かりに透かしていた。


考える内容といっても

依然、変わることは無い。

今日、受け取ったこれは

今後の私をどのように動かして

行くのだろうか。


そんなことは全く予想もできず、

ただ、時間は過ぎた。


翌朝、窓辺から迎えに来る

眩い光がまつ毛に刺さる。

いつも通りの朝。

小鳥の囀り、

慌ただしい雰囲気、

漂う朝ごはんの優しい香り。


ただ、違う事と言えば、

少女の部屋には、

それまで、存在もしなかった、

言わば、異物があった。


少女は枕元に置かれた異物を手に取り

大事そうに机の引き出しにしまった。


昨晩、準備を済ませた鞄。

綺麗にシワの伸ばされた制服を身につける。

慣れた手つきでスカートの

横のジッパーを閉じる。


寝起きにも関わらず

既に櫛で解かれたように

真っ直ぐに伸びる髪。


彼女は足早に1階へと駆け下りた。


洗面台の鏡の自分と向き合う。

蛇口を捻り、冷たい水で顔を洗う。

これがまた、眠気を飛ばすには最適だった。

正に一石二鳥である。

櫛で撫でるように髪を解いた。


リビングの机の上には

白い気を上げるトーストと目玉焼き。

毎朝の食事はこれと決まっていた。


時刻は7:30。

リビングの壁に掛けられた

白い時計は静かに時を刻む。


母親との会話を楽しみ、

朝食を取り終えた彼女は

学校へ向かった。


時刻は7:50。

学校のホームルームは8:30から始まる。


彼女の家から学校へは

徒歩7分程で着くのだが、

彼女はいつもこの時刻に家を出ている。


朝の雰囲気が好きなのだ。

慌ただしく家を出る会社員。

はしゃぎながら登校する小学生の群れ。


車の走行音や、鳥の囀りも、

空を流れる白い綿雲も、

全てが新鮮に感じられる。


この雰囲気を好んだ。

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