おっさん幼児爆誕

 泣いてすべてを吐き出したせいか心がすっきりとした。若干左目に居る存在に羞恥心を覚えながらも今後について考える。いつまでも嘆いていても仕方がない。此処で生きて行く術を探して行かなければならないからだ。


 あの糞女神は、『生きてるかどうかわからないけどねぇ☆』とか言ってやがった。確実に封印したとか言っていた左目の奴もろともこの世界に来た瞬間に殺すつもりだったに違いない。   

 なんか癪だし、俺はこの世界の人類最高年齢なご長寿さんになってギ〇スの認定を受けて死んでやる。この世界に〇ネスがあるかどうかは知らんけどな。


(っと、そう言えば、あの糞女神が言っていたはいすぺっくな体ってなんだ?シ〇ッカーみたいに改造されたって事か?)

 

 漫画だと改造されて命を落とすケースもある。しかし0〇9やラ〇ダーになるケースもあるはずだ。


『…何か改造?人間についての熱い思い入れがあるみたいですが、残念ながら改造ではありません』


(そうか…)


 ちょっと期待してしまった。断じて残念がってはいない。


『…ですが少し近いかもしれません。いくら*^.?#•*でも肉体をこの世界に合わせて送り込む事は無理だった様で、共同体様の魂魄だけ送り込んだ様です』


(お?)


『魔力によって強化された身体に共同体様の魂が入り込んだのです』


(?!え?魔力?魔法とか使えるの?いやそれ以前にこの体の元の持ち主はどうなったんだ??あんたは俺の体についてきたんじゃないのか??)


 びっくりして体を見下ろすと月明かりに照らされた枯れ枝の様に細く小さな手足が見えた。


(…嘘だろ…?!) 


 何故今まで気がつかなかったのか。自分の体だと言う疑いの無い思い込みと、見知らぬ所へ突然来たショックで体が変わってるなど思いもよらなかった。


『この身体の持ち主は元々居なかったのです』


(は?)


『この身体の記憶を読むと…そうですね…ここから真っ直ぐ、あの山脈を超えた北の方にある国の皇子で…軍馬で…』


(ちょ!ちょっと待って?皇子も気になるけど…元々居ないとはどう言うことだ?)


『そこが*^.?#•*が言っていた、はいすぺっくと言う理由で…この身体は随分と魔力血統が濃い血筋です。そしてあまりにも魔力血統が濃いと偶に中身のない子供が生まれるのです』


(中身がない…植物人間って事か?)


『共同体様の国の言い回しは面白いですね。

 しかし植物よりも自由はありません。ただただ生きているだけ。飲まず食わずでも周囲の魔力を取り込みある程度身体を維持できますが、動きもなにもない、生ける屍の様な者です。そんな風に生まれた子供達は総じて、精霊に魂を奪われた「精霊の子」と言われております』


 植物は花を咲かせたり実を実らせたり子孫も増やせるし、植物人間状態から復帰した人は寝てる間みんなの声が聞こえたとか体験談がある。「精霊の子」はそうはいかないのか…


『そして「精霊の子」は居るだけでも恐れられ大抵捨てられて魔獣に食われるか、親の手で殺されるか…何方にせよ似たような末路をたどります』


(じゃあ…「この子」も捨てられたのか?)


 ボロ布を被って、貧相な服を纏った枯れ枝の様な身体を見る。


『そうですね…捨てられ…3人の騎士に殺されそうになって…』


(は?その騎士達は??起きた時は誰も居なかったような?)


 『はい。丁度共同体様がこの身体に入った時…*^.?#•*の力に接触し、消滅しました』


 (?!)


『強すぎる神の力は人にとっては脅威ですから。しかも異世界から私が入った魂魄を送り込むほどの力です。唯人にとってはひとたまりもなかったでしょう』


 俺達が来たことによって、 3人もの命を奪ったってことに驚いた。本当にあの糞女神碌なことをしない。この身体を殺そうとした騎士達よ…安らかに眠ってくれ…


(あ…でも俺がいた周囲に木々は生えていたけど…)


『それはこの森の「記憶する森」の効果です』


(記憶する森…)


『人間には「真宵の森」「帰らずの森」「精霊の森」などと言われています。この森自体がマスターもいるダンジョンの様なものになっていて、急激な変化に反応して状態を元に戻すのです。特にこの場所は、最深部に近く効果も高めですね』


(…ダンジョン…)


 ゲーム好きな奴らが血を吐くほど喜ぶワードが出てきた。と言う事は…


(もしかして…剣と魔法が使えちゃったり…)


『はい。その通りです。共同体様の世界では科学が発達している様ですが、この世界では星を守る為に自然を壊す様な兵器などの技術を排除してきました。この森もその一環です』


 確かに俺のいた地球は、地球の生きた時間から比べて、ほんの瞬きの間に科学が発展し環境が破壊されていった。それを思うと排除は致し方ないのかなとは思う。


 剣と魔法の世界。俺はゲームをすると酔ってしまって出来なかったが、超能力には憧れた。

 子供の頃テレビの前で、スプーンを持って超能力者の番組を見ていたのが懐かしい。


 三半規管弱者の俺が、ゲームをやる前にリアルに剣と魔法を体験する事になってしまったが、先行き不安である物の少し楽しくなってきた。

 でもこの世界の社会がよくわからないが、この年齢で働き口はあるのだろうか…とりあえず過ぎた事は仕方がない。


 生きる術見つけて前に向かっていっちょ異世界楽しんでみますか!


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る